若い世代の間で“美容男子”という言葉がもてはやされていた頃、中高年男性の大半は、自分たちとは関係のない世界の話と一線を引いて遠くから眺めるにとどまっていたものです。ところが最近、コロナ禍以降のオンライン会議の定着で画面に映し出される自分の顔をまじまじと見る機会が増加。“たるみがひどい”“こんなに疲れた顔をしていたのか”と客観的に見た自分の老け顔に衝撃を受ける中高年男性が続出。ことに、モニター上に若い社員たちと自分の顔が並ぶと歴然。老化がより際立ってしまいがち。
妻や家族からの遠慮のない指摘や、同窓会でみんなに比べて老けて見える我が顔にショックを受けるなど…。そもそも男性の肌は、皮脂分泌量が女性の2〜3倍も多く、かつ水分保有量が女性の半分程度と、実は女性の肌よりもデリケートなのです。さらに、加齢とともに、女性と比べて老化も早まるといわれています。その原因は男性ホルモン(テストステロン)の減少による“肌サイクル”(新しい皮膚が生まれるごとに古い皮膚が剥がれ落ちること)の変化にあります。加齢とともに、このサイクルの間隔が長くなり、コラーゲンの生成が抑制されて肌のハリや弾力の低下を招き、シミ・シワ・くすみなどの肌老化を引き起こす要因に。また、毎日のシェービングや紫外線、乾燥など、外的刺激による肌へのダメージが蓄積し、キズや赤み、かさつきなどが起こり、結果的に皮膚の表面が悪化してしまいます。
そんな、見た目の老化に対する悩みを抱えながら解決策がわからないというミドル・シニア世代の男性のために、彼らのチャレンジをサポートする様々な商品やサービスが登場しています。
[マンダム]から昨年発売された新ブランド、「ZFACE(ゼットフェイス)」(参考価格3300円)は、55〜74歳の男性を対象にしたスキンケア化粧品。単に顔につけるだけではなく、“表情を鍛える”をコンセプトに表情筋マッサージをすることで美容効果を高めようというクリーム。
[サントリーウエルネス]から2022年、40代以上の男性向けスキンケアの草分けとして発売された「VARON(ヴァロン)」(3300円/約20日分)は、2024年に売上高45億円の大ヒット商品へと成長。ビギナーの多い中高年男性でも無理なく続けられるよう、オールインワンで“化粧水・美容液・クリーム”の役割順に肌に届ける“3層時間差浸透テクノロジー”を採用したスキンケア商品です。
東京・銀座[ヤーマン]の美顔器ショップの2Fに、顔専門のトレーニングジム「FACE LIFT GYM」が昨年オープンしました。同社の「表情筋研究所」から生まれたメソッドをもとに、専門のトレーナーによる最新の美容機器を使ってトレーニング(40分3850円など)。来店客の4割が40代以上の男性で、70代の利用客も。
肌にトラブルを起こしやすい50代男性にこそ日常的なスキンケアが必要なのに、残念ながら、若い男性よりもケアを怠っているというのが現状です。しかし、何も大上段にかまえることはありません。いつもやっている身だしなみの延長として、肌ケアを、毎日のルーティンに取り入れるだけでいいのです。いずれにしても、美容は女性のものという固定概念にとらわれない考え方は、徐々に中高年男性の間にも浸透しつつあることは間違いなさそうです。その証拠に、メンズスキンケア製品の2024年国内市場規模は、2019年の1.5倍に伸びています。
※参考:
マンダム https://www.mandom.co.jp/
サントリーウエルネス https://www.suntory-kenko.com/
ヤーマン https://www.ya-man.co.jp/
日経МJ(2024年11月10日付)
ソファといえば、家族や友人たち3〜4人が利用する複数人掛けの大き目のタイプが一般的でした。しかし、コロナ禍によって在宅時間が増えた昨今は、“パーソナルチェア”という位置付けで、“1人掛けソファ”への関心が高まっています。
隣の人との距離を気にすることなく、1人でスマホを見たり、映画を見たり、音楽を聴いたり、本を読んだり……そこに座れば特別な自分だけの時間を持つことができる小さな空間が“1人掛けソファ”。囲われるような安心感があって“おこもり感”を提供してくれます。一般的なソファに比べ、個性的なデザインやカラーのものが多いため、インテリアとして部屋のアクセントになってくれるというメリットが。さらに、コンパクトなのでレイアウトの自由度が高く、用途に合わせて気軽に移動できるのも魅力。
例えば---。1LDKマンションで10カ月の子供との3人暮らし。リフォームを機に、大型のソファから1人掛けソファ2台に切り替えました。それまで使っていた大型ソファは、大きすぎて、模様替えも大変でした。1人掛けソファは、夫婦それぞれが、座面の硬軟や肘掛けの有無など、好みに合わせてソファのタイプを選びました。
また、中学2年の娘と小学5年の息子との4人暮らしの家族は、思春期の姉弟が隣り合って座ることへの配慮から、1人掛けソファ3台並べての暮らしを始めました。横になってほしくなかったからと、肘掛けがあるタイプをチョイス。ゲームをする人は真ん中のソファが定位置で、30分交代で順番に座ります。
また、ある夫婦は、2人掛けと1人掛けのソファを併用。2人掛けは横になってテレビを見るときなどに使い、背もたれの高い1人掛けは、埋もれるような感覚で過ごしたいときに。夫婦それぞれが使い分けながら、自然とお気に入りの居場所を確保。
家族全員が同じ方向を向いてテレビを見ていた時代から、スマホやタブレットでそれぞれが楽しむ形へと、家族の“くつろぎ方”も変化。その象徴的アイテムの一つが1人掛けソファといえます。
最後に、購入時の注意点を。選ぶ際に、できるだけ場所をとらないものをと、つい横幅のサイズを優先しがちですが、実は置いた時の空間の圧迫感は、奥行サイズが大きく影響してくるのです。横幅70cm・奥行80cmのソファより、横幅80cm・奥行70cmの方が、よりコンパクトに感じるはず。奥行のある方が、実際の生活での有効空間が狭くなるためです。
※参考:
日経МJ(2024年11月20日付)
蒸した大豆に納豆菌を加えて発酵させた「納豆」。日本の誇る伝統的な発酵食品にも、値上げの波が押し寄せています。業界に長年あった“100円以上だと売れない”という、いわゆる“100円の壁”も今や崩壊寸前の危機に。
納豆市場そのものが縮小傾向にあるなか、値上げによる納豆離れを防ぐべく、各社、付加価値をつけた商品開発でしのぎを削る一方、新たな市場として海外へと活路を見いだし積極的に乗り出し始めています。
とは言え、あの独特のにおいにネバネバと糸を引く食感。日本人でも苦手な人が少なくない納豆が、海外の人に受け入れられるのでしょうか?
しかし、その心配は杞憂に過ぎなかったようです。
納豆の持っている様々な栄養素や健康効果が、海外のメディアによって徐々に認知されていったのです。タンパク質をはじめ、動脈硬化や心筋梗塞の予防につながる“ナットウキナーゼ”、骨粗しょう症予防に効果的な“ビタミンK”、脂肪の代謝を促しダイエット効果をサポートする“イソフラボン”や“レシチン”“ミネラル”などを含む日本発の健康食品として。きっかけは英国や米国のメディアで、特に米国の健康専門誌『ヘルス』によって納豆が「世界5大健康食品」に選出(2006年)されたことは、海外での知名度向上に大きく貢献。加えて、海外での日本食ブームや世界的な健康志向の高まり、さらに、増加したインバウンドの人たちが、納豆巻きなど、日本での納豆体験の好印象から、帰国後も日常的に食べるようになったことなども背景として挙げられます。
2023年の納豆の輸出額は19億円と、2017年比で2倍の急増ぶりで、過去最高を記録(財務省)。主な輸出先は、米国、中国、香港、台湾、韓国、豪州、カナダの順。
2022年頃から欧米を中心に、ヴィーガンに象徴されるようなスタイリッシュな食スタイルに注目が集まり、その流れで納豆を日常に取り入れる人が増加。
日本人にとっての納豆は、炊き立てのご飯に乗せて食べる、文字通り“NKG”(納豆かけご飯)が定番ですが、世界に目を向けると実に汎用性に富み、可能性を秘めた食品であることに気付かされます。
米国では発酵食品が美容にも良いというイメージが定着。オリーブオイルをかけたり、ピザに乗せたり、スムージーやサラダに入れて食べることが多い一方で、どうしてもネバネバが苦手で、納豆を洗ってから食べるという人も。中国では血管疾患を抱える人が多く、血液をサラサラにする“ナットウキナーゼ”を含む納豆に注目。納豆風味のチップスや納豆炒飯、スープなどの具材として活躍。フランスでは、欧州の健康ブームにも乗って人気が上昇。バゲットに乗せたり、納豆を使ったクレープやタルトなどが話題に。
ほかにも、ポテトチップスに納豆をかける“納豆ポテチ”やバニラアイスに納豆をまぜる“バニラ納豆”。納豆を生地に練り込んだ“納豆ドーナツ”、醤油タレの代わりにメープルシロップをかけるなど、納豆アレンジはお国柄で多種多様。案外、私たち日本人がデメリットと思っていた、このネバネバ食感や独特なにおいが、外国人にとっては斬新で個性的に映るのかもしれません。
今後の海外展開に求められるのは、各国の食文化に合わせた納豆料理のレシピや健康食品としての効用を伝えるさらなるプロモーション活動。いつの日か、大谷選手がひと言、「納豆が好き!」と言ってくれることを期待して-----。
※参考:
全国納豆協同組合連合会 https://www.natto.or.jp/
財務省 https://www.mof.go.jp/
タカノフーズ https://www.takanofoods.co.jp/
日経МJ(2024年10月4日付)
日本経済新聞電子版(2024年10月30日付)