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2025.02.01更新
 

海洋環境に左右されない「陸上養殖」、年々拡大。
 

魚介類の養殖には、海で飼育する“海面養殖”と、海や川から飼育用水を汲み上げて、陸(おか)に設置した巨大な水槽で育てる“陸上養殖”があります。乱獲による漁獲量の減少、異常気象の常態化に伴う水産資源の枯渇や供給の不安定、さらには世界的な水産物需要の増加による争奪もあり、安定供給を可能とする陸上養殖の生産形態にスポットが当たっています。
システムとしては、使用した水をそのまま排水する“かけ流し式”と、使用した水を浄化(ろ過・殺菌)して飼育水として循環利用する“循環式”に大きく分かれます。水族館と同様の仕組みの“循環式”は、育てる魚の種類や土地の制約を受けにくい上に、環境負荷が少なくサステナブルなシステムとして注目度がアップ。

海面養殖と異なり、陸上養殖には“漁業権”が要りません。その代わりというわけではありませんが、水産庁は2023年より陸上養殖を行うにあたって“届出制”を採用しました。2024年時点の届出件数は全国で662件。沖縄168件、大分55件、鹿児島35件の順。
この参入へのハードルの低さが、異業種の参入や海外からの進出を促し、市場拡大へとつながっています。ホームセンターの[コーナン商事]は、2023年、駐車場の一画を活用してバナメイエビの陸上養殖に着手。[三菱商事]と[マルハニチロ]は2022年、サーモンの陸上養殖事業を行う合弁会社を設立。[三井物産]は陸上養殖ベンチャーの[FRDジャパン]に出資し、サーモントラウト「おかそだち」を生産。[ゼネラル・オイスター]は、沖縄県久米島でノロウイルスに感染しない“あたらないカキ”の完全陸上養殖に世界で初めて成功。他にも、参入事例は枚挙にいとまがありません。
漁業はもはや“捕る”から“育てる”へとシフト。巨大な水槽で温度・水質管理がIT技術によって徹底制御。文字どおり、そこは漁場ではなく“工場”なのです。
ただ、陸上養殖普及への課題として、コストの高さが立ちはだかります。規模により異なるものの、初期費用が1000万円〜数十億円に及ぶことに加え、設備維持などのランニングコストに海面養殖以上の負担が強いられる現状をクリアしなければいけません。

日本での養殖全体に占める陸上養殖の割合は、未だ1%を満たしていません。政府は、魚介類の自給率を2032年には94%とする高い目標を掲げています(2021年の自給率は59%)。そのためには、海面養殖だけではまかないきれず、陸上養殖の育成が、いわば“国策”として求められているのです。

※参考:
水産庁           https://www.jfa.maff.go.jp/
国連食糧農業機関(FAO)    https://www.fao.org/
農林水産省         https://www.maff.go.jp/
コーナン商事        https://www.hc-kohnan.com/
三菱商事          https://www.mitsubishicorp.com/jp/ja/
マルハニチロ        https://www.maruha-nichiro.co.jp/
三井物産          https://www.mitsui.com/jp/ja/
FRDジャパン        https://frd-j.com/
ゼネラル・オイスター    https://www.oysterbar.co.jp/
日経МJ(2024年10月16日付)


“カジュアル”と“高級”、2極化進む「マッサージチェア」市場。
 

自宅に居ながらにしてマッサージ療法の効果を得られるように設計された「マッサージチェア」。基本的には、筋肉の緊張を和らげて血行を改善し、ストレスを軽減するために、もみほぐし・ローリング・タッピング(たたき)・指圧など、プロのマッサージ師が施すテクニックを模倣する機構を備えた椅子です。

市場的には、2つの新モデルの登場が2極化を鮮明にしました。
1つは、2024年12月、[パナソニック]から発売の「リアルプロ EP-MA121」。同社の最上位モデルで、70万円近い高額ながら売れ行き好調。高精度センサーで肩の位置を把握し、もみ玉にかかる圧力を1秒間に100回の精度で感知・調整するAI制御。一人ひとりの体型に合わせた的確なマッサージを施します。腰の疲れに着目して開発された“腰・おしり重点コース”と、温感もみ玉で温めながら上半身をゆっくりとさする“ゆったりほっとコース”を新たに搭載。全身を包み込むような“シェルフォルム”が上質なプライベート空間を提供してくれる高級感あふれる仕上がり。
もう一つの注目チェアは、パナソニックと並ぶ2強、[フジ医療器]が2024年春に発売した「SYNCA(シンカ)L24 MR380」です。4個のもみ玉が“リズムもみ”“さざなみ”など、お好みで8タイプのもみ技が選択可能。その人の体型に合わせて肩位置を自動検知し、特に疲れが溜まりやすい肩まわりとふくらはぎは、8個のエアーバッグによる圧迫と解放でほぐします。また、“アンビエントLED”の柔らかな青い光が癒し空間を演出。搭載するBluetoothスピーカーで音楽を聴きながらマッサージできるなど、若い層にもアピールする機能を備え、サイズもコンパクトでデザインもスタイリッシュ。そして何より、このモデルの最大の特徴は、15万円前後という破格の安さを実現したところにあります。

“高機能&高価格”と“カジュアル&低価格”の対照的な2つの路線が、賑わいを増長することとなったマッサージチェア市場。しかし、必ずしも価格と気持ちよさが直結するとは限りません。数あるブランドの中から、まず自分の体型に合ったサイズと形状、そして自分の求める効果と機能がほどよく折り合っていることが商品選びの大切なポイントとなります。
蛇足ですが、日本人の国民病といわれる“肩こり”は、肩まわりの筋肉の量が欧米人より少ないことに起因する症状で、特にパソコンの黎明期に激増したといいます。しかし、スマホ時代になるとこれが一変。肩こり知らずだったはずの欧米の人たちも、下を向いてスマホ画面を覗き込むため、首を長時間支えることが苦痛となり、近年、肩こりが世界的に広まっているといわれています。

※参考:
パナソニック         https://panasonic.jp/
フジ医療器          https://www.fujiiryoki.co.jp/
日経МJ(2024年11月1日付)


日本上陸60年。カルチャーとして定着した「カプセルトイ」。
 

通称“ガチャ”とか“ガチャガチャ”と呼ばれる「カプセルトイ」市場が、今、盛り上がりを見せています。その規模は、2024年3月期で800億円(前年比23%増)と拡大著しく、この10年で倍増(日本玩具協会)。メーカーの勢力図は、[バンダイ]と[タカラトミー]の2強を筆頭に数十社で構成され、バンダイが「ガシャポン」、タカラが「ガチャ」のブランド名で展開しています。

“第4次ブーム”といわれる最近の隆盛のきっかけは、2020年のコロナ禍の拡大といわれています。ショッピングモールなどでテナントが相次ぎ撤退するなか、モール側から半ば苦肉の策で、出店コストが低く、無人で営業できるカプセルトイ自販機に白羽の矢が。それを契機に、有利な条件での好立地出店が可能となり、やがてコロナが回復すると、インバウンドを含めた利用者が増大。
さらに、2020年頃から相次いだ“専門店”の誕生がブームに拍車。従来のカプセルトイ販売といえば、施設内の共用通路や商業施設内の一画での運営が一般的でしたが、続々と大型の専門店が目立つようになり、2023年には200店舗以上の専門店がオープン。専門店の特徴は、これまでマニアの男性や子どもに合わせたイメージだった店内を刷新。通路を広くしてベビーカーでも入りやすくするなど、明るく、20〜30代の女性が入りやすくしたことが奏功。昨年6月、東京・池袋駅近くの一等地に開業した路面店「gashacoco(ガシャココ)池袋」は、自販機の数が1500台を上回る大型店です。

カプセルトイの業界は、“メーカー”“オペレーター(代理店)”“販売店”の3つのプレーヤーで成り立っています。メーカーは、文字どおり商品(玩具)の企画や製造を行う企業で、現在日本には約50社が存在。毎月200種類以上の新作が投入されます。最近では設置場所も、駅、映画館、美術館、書店、空港などに拡大。なお、同じ商品が販売店によって販売価格が異なるということはありません。また、販売店で商品が売れ残った場合は、オペレーターが在庫のリスクを負うことになります。

タカラトミーでは2013年に[佐川急便]とコラボした「佐川男子」シリーズがヒット。2019年には[NTT東日本]とコラボした「公衆電話」シリーズなどの企業コラボものが話題に。さらに魔法瓶メーカーの[サーモス]とは、ブランド誕生120周年を記念して同社の水筒やフライパンのカプセルトイを用意して大好評。このように、カプセルトイを販促に活用する企業も増え、今では全体の1割程度を企業がらみの商品が占めています。
1965年に米国からガムの自販機としてやって来たカプセルトイ。かつては、頼み込んでおもちゃ屋や駄菓子屋の店先に置いてもらっていたカプセルトイの自販機も、今では“向こう”から誘致の声がかかります。当初10円だった価格も現在は、平均300〜400円。2500円までの高額商品に対応するものや、キャッシュレス支払いの自販機も登場。今後は、カプセルトイの仕組みを使って地域とコラボし、祭りや郷土料理、特産品など地元のオリジナリティあふれる物品の“ご当地ガチャ”化へと期待がふくらみます。 今年は、日本上陸60年の節目の年。大きく成長した“ガチャガチャ”の可能性は、どんどん広がっています。

※参考:
(一社)日本玩具協会        https://www.toys.or.jp/
(一社)日本カプセルトイ協会    https://www.japan-cta.org/
日本ガチャガチャ協会       https://jgg.or.jp/
バンダイナムコホールディングス  https://www.bandainamco.co.jp/
タカラトミーアーツ        https://www.takaratomy-arts.co.jp/
日経МJ(2024年10月28日付)


 
 
 
 
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