金融・お金の情報
2024.09.01更新
 

「回転ずし」は、もう回らない!?
 

最近、「回転ずし」の店で、おすしが回っているのを見かけなくなりました。どうやら、コロナ禍で加速した衛生意識の高まりに加え、食品ロス削減への対応が背景にあるようです。客に選ばれぬまま回り続け鮮度を失って廃棄されれば、店側の負担増につながってしまう、というのが回転ずし業界が抱える積年の課題の一つだったからです。そこで、業界をあげて、回る仕組み自体を見直す動きが本格化しようとしていましたが、その矢先に想定外のトラブルに見舞われます。相次いで発生した客の“迷惑行為”でした。ただ、関係者は、この騒動が、すしを回らなくした直接の理由ではないと言います。もともと、ここ数年は、回転レーンからすしを選び取るという客が減少していたところに、コロナ禍が追い打ちをかけた形になったということのようです。

最近は、卓上のタッチパネルを使用して注文する“フルオーダー制”が主流です。
最大手[スシロー]のテーブル席には、幅150cm×高さ50cmの回転レーンを模した大型タッチパネル“デジロー”が設置。モニター上をメニュー画像が流れ、そこから注文する新システムで、回転レーンには注文した品だけが流れます。大阪、東京、名古屋の店舗で実施中。
[はま寿司]や[かっぱ寿司]でも回転レーンでの商品陳列を取りやめ、タッチパネルで注文した品がレーンで“ビューン”と運ばれてくる“ストレートレーン”を採用。
回転ずしチェーン大手5社(規模順に、スシロー、くら寿司、はま寿司、かっぱ寿司、魚べい)の中で、注文品以外のすしを回し続けているのは[くら寿司]のみ。回すことが、回転ずしの“存在理由”と、同社開発の透明カバー“抗菌寿司カバー 鮮度くん”をかぶせてホコリや飛沫から防御。さらに客の迷惑行為に対しては、一度取った皿を再びレーンに戻すなどの不審な動きを感知する“AIカメラシステム”を全店舗に導入。同社はまた、今年4月、「回転寿司のリニューアル」を宣言。映像ではなくリアルなすしを回すのは必須と、回転ずしという業態をより進化させることを掲げました。『関西万博』でも“回るすし”を主軸とした店舗を出展し、日本のエンタメの一つとして世界に発信する予定。

約5000店ある全国の回転ずし店のうち、85%は回さなくなっています。
やむなく回すことをやめる決断をした“回さない派”。でき得る限りの対策を駆使してあくまで“回転”させることにこだわる“回す派”。どちらが正解と一概には断言できるものではありません。客がどちらの形態を選ぶか----ここ1、2年は、そのテスト期間なのかもしれません。

参考:
あきんどスシロー       https://www.akindo-sushiro.co.jp/
くら寿司           https://www.kurasushi.co.jp/
朝日新聞(2024年2月17日付)


「オタク」から「推し活」へ。さまざまな分野を巻き込んで巨大市場に。
 

自分がお気に入りの“人・モノ・コト”、ジャンルを問わず応援している対象を“推し”と呼び、その“推し”をさまざまな形で応援し、かつ周囲に広める活動(消費を含む)が“推し活”。今年行われたある調査によると、“推し”がいる・あると回答した人は、Z世代の74%をトップに、40代、50代、60代でそれぞれ25%前後と、ほぼ4人に1人が何らかの“推し”がいるということに。

“推し活グッズ”の販売や関連イベントの開催など、“推し活”がもたらす経済効果は大きく、さまざまなフィールドで盛り上がりを見せています。その市場規模は(大きい順に)、アニメ、アイドル、同人誌、プラモデル、フィギュア、コスプレ衣装、鉄道模型、プロレスの順で、その他を合わせると約6700億円規模(2022年)。
一つの“推し”から発生したものが、他の市場へと分野横断的に波及していく消費行動が特徴です。例えば、“推し”のアイドルのコンサートに行く場合、入場チケット代に“推し活グッズ”や洋服の購入、髪色やネイルなどの美容費、会場への交通費、宿泊費。時には、エステに通ったり、ダイエットを始めたり、海外アーティストが“推し”の場合は語学の勉強を始めることも。さらに現地で会う“推し友”のためのプレゼントの購入…と、一見、直接“推し活”に関係なさそうなジャンルにもビジネスチャンスが潜んでいるのです。

[JR東海]が展開するのは、「推し旅」という旅行商品。真夜中の京都駅のバックヤードを見学できるツアーでは、20人の募集に200人の応募があったとか。
“推し活”を文化として取り入れ、独自のマーケティング施策で売上高を伸ばしているのが[オリックス・バファローズ]。“推し”の選手を応援するメッセージ入りタオルの販売や「Bsオリ姫デー」という女性ファン向けイベントが好評。[エスビー食品]では、「キミの推しスパは?キャンペーン」に人気ボーイズグループを起用。ソースシリーズの中から各メンバーが“推しスパ”を紹介するCMが話題に。[タワーレコード]では、毎月4日を「タワレコ推しの日」とし、推し活グッズの割引などを実施。
ほかにも、駅や?華街を“推し”の広告で埋め尽くす“エリアジャック”やバス・電車のラッピングの“推し広告”など。

また、“推し活”は日本の経済を活気づけるだけでなく、人々のメンタルにも効能を発揮するようです。うつ病など、メンタルヘルスが低下すると、人は自分に関心を向けすぎる“自己注目”に陥り、“なぜ自分はこんなにダメなんだろう”とネガティブな思考に襲われがちになります。しかし“推し活”を始めると、関心が自分の外側の“推し”に向き、自己注目が軽減されていきます。“推し”がモチベーションになってつらい気持ちを楽にしていく効果があり、うつの改善にもつながるきっかけとなります。

“推し活”をしている女性の92.2%が、“人生が変わった”と回答(2022年調べ)。年齢を問わず、“推し活”をすることが日々の生活の彩り・活力の基となり、自らの人生が豊かになっていることを実感できるということです。これからも“推し活”が、消費行動の動機として大きな影響を持ち続けていくのは間違いなさそうです。

参考:
JR東海           https://jr-central.co.jp/
オリックス・バファローズ  https://www.buffaloes.co.jp/
エスビー食品        https://www.sbfoods.co.jp/
タワーレコード       https://tower.jp/
日経МJ(2024年4月26日付/同5月27日付/同6月28日付)


“客単価上昇作戦”が奏功。過去最高の売り上げ、「テーマパーク市場」。
 

「テーマパーク市場(遊園地を含む)」が、コロナ禍前の活況を取り戻しつつあります。
2023年、入場者数が約7200万人(前年比25.5%増)と、過去最多の2015年を1割ほど下回ったものの、売上高が約8400億円(前年比41%増)とコロナ前を17%上回って過去最高を記録しました(経産省『特定サービス産業動態統計調査』)。ここで興味深いのは、入場者数がピーク時に及ばないのに、売上高の伸びが著しい点です。それは、テーマパーク各社が入場料の値上げや“変動価格制(ダイナミックプライシング)”の導入など、客単価の上昇に向けた取り組みを積極的に推し進めてきた成果といえます。
[東京ディズニーリゾート](運営/オリエンタルランド)は、40周年イベントやインバウンドの回復で入園者数が増加(2751万人/前期比24.5%増)したのに加え、昨秋、変動価格制を導入。“1dayパスポート”で最も混雑する時期の料金を従来の9400円から1500円高い1万900円へと引き上げました。これにより、客単価が896円増の1万6644円となり、2019年と比べるとほぼ4割近くのアップにつながりました。
[サンリオピューロランド](運営/サンリオエンターテイメント)では、インバウンドの増加が、物販事業やテーマパーク事業の売り上げを押し上げ、客単価も7178円と1000円近くの上昇に寄与。[ユニバーサルスタジオジャパン(USJ)]では、最も来園者の多い8月中旬の1日券の大人料金を600円引き上げ、1万400円に。
これら、入場料金の値上げに踏み切らざるを得ない要因の一つには、人件費や電気代など運営コストの上昇があります。大型遊具を稼働させるための電気代の高騰は、直接運営コストに響くため、テーマパーク業界にとっては死活問題といえます。 そんな状況のなか、新しい施設の開業や規模拡張の動きが全国で相次ぎます。
今年3月、東京・お台場に、来場者が登場人物となり物語の世界への没入体験をうたった屋内型テーマパーク[イマーシブ・フォート東京]が開業。
[ジブリパーク](愛知県)では新エリア「魔女の谷」が開園。[USJ]は、今年後半、任天堂の人気ゲーム「ドンキーコング」をテーマとした「ドンキーコング・カントリー」を開業。イマーシブ・フォート東京を手掛けた[刀]は、沖縄県で「JUNGLIA(ジャングリア)」を2025年に開業予定、等々。

コロナ禍にあえぎ、やっと長いトンネルを抜けた感のテーマパーク各社ですが、その一方で、運営コストの上昇を入場料金に乗せることが難しい中小のテーマパークや遊園地が少なくありません。大手が積極的にアトラクション新設に動くなか、地域  の人口減少や少子高齢化で負のスパイラルに陥り、集客力に限界を抱える地方のテーマパーク。その二極化は、予想を上回る速度でひたひたと進んでいます。

参考:
経済産業省          https://www.meti.go.jp/
東京ディズニーリゾート    https://www.tokyodisneyresort.jp/
サンリオピューロランド    https://www.puroland.jp/
ユニバーサルスタジオジャパン https://www.usj.co.jp/
イマーシブ・フォート東京   https://immersivefort.com/
ジブリパーク         https://ghibli-park.jp/
刀              https://katana-marketing.co.jp/
日経МJ(2024年5月15日付)


 
 
 
 
キーストーンコンサルティング株式会社 〒802-0001 福岡県北九州市小倉北区浅野1-2-39 4F TEL 093-551-6325 FAX 093-551-6326保険相談・教育費積立相談・経営コンサルティング対応エリアは全国です 東京、大阪、名古屋、をはじめ 北海道、青森県、岩手県、宮城県、秋田県、山形県、福島県、茨城県、栃木県、群馬県、埼玉県、千葉県神奈川県、新潟県、富山県、石川県、福井県、長野県、山梨県、岐阜県、静岡県、愛知県、三重県 滋賀県、京都府、兵庫県、奈良県、和歌山県、鳥取県、島根県、岡山県、広島県、山口県、徳島県 香川県、愛媛県、高知県、福岡県、佐賀県、長崎県、熊本県、大分県、宮崎県、鹿児島県、沖縄県