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2023.09.01更新
 

品薄続出の「自転車用ヘルメット」----いかにヘルメットらしくないかがポイント。
 

『道路交通法』の改正によって、今年の4月1日から、年齢に関係なく自転車乗車時のヘルメット着用が“努力義務化”されましたが、着用率は4%と低いレベルにとどまっています(警視庁調べ/4月時点)。
これまでヘルメットをかぶる習慣がなく、さらに“強制”ではないとなると、わざわざヘルメットを買いに行くのも……と、ママチャリ利用者の間に流れていた冷ややかな反応とは相反して、メーカーや販売の現場では劇的な変化が起こり、対応に追われています。法改正が告知されるや、自転車用ヘルメットが品薄状態に陥り、各社は増産体制で臨むも、需要の急増に生産が追いついていない状況が続いています。
国内大手の[オージーケーカブト](大阪)では、法改正の方針が示された昨年から生産・物流拠点の強化に取り組んできたにもかかわらず、生産能力を大幅に上回る注文が殺到し、「お届けまでに数カ月お時間をいたたかざるを得ない商品も発生しております。申し訳ございませんが、今後もこのような状況が続くと予想されます」と、3月14日付で異例の“お詫び”がリリースされました。
そんな、入手困難なほど人気の商品とは?
購入者の中心が年配女性ということで、流線型でスポーティー(競技用)なデザインに抵抗があるのか、普段着に合わせても一体化していて違和感のない、カジュアルでカラーバリエーションも豊富な“帽子タイプ”のヘルメットに人気が集まっています。
[オージーケーカブト]の売れ筋も、帽子の内側にヘルメットが組み込まれたハット型の「シクレ」(9240円)やキャップタイプの「リベロ」(9680円)が人気。
自転車用ヘルメットを手掛ける[日本パレード](東京)の帽子型ヘルメット「カポル」シリーズは、ヘルメット部分の外側に布の帽子部分をカバーのように付けられるタイプ。季節や服に合わせて帽子部分を“着せ替え”できるのが特徴で、ヘルメットらしくないヘルメットとして人気上昇。ヘルメットと帽子部分のセット販売で、ハット型の「カメリア」(9240円)、ハンチング風の「ウォルナット」(9020円)などへの注文が多く、4月の生産数量は前年同月比で約8倍となり、こちらもホームページ上でお詫びの告知が。品薄は秋ごろまで続きそうな見込み。
ヘルメット購入金額の一部を補助する自治体も出てきています。例えば、埼玉県内の市町では、上限1000〜3000円を補助。東京都内の一部でも、2000円の補助金で着用促進を支援しています。
近所を走るだけだから、スピードは出さないから、という理由でヘルメットは要らないという考えは誤りで、むしろそういった場所は市街地が多く、さまざまな交通手段が交錯し、ぶつかる先も硬いものが多い環境でもあります。もちろん、自分が実際にヘルメットの効果が発揮される場面に遭遇しないにこしたことがないのは、言うまでもありません。

参考:
(一財)全日本交通安全協会      https://www.jtsa.or.jp/
オージーケーカブト         https://www.ogkkabuto.co.jp/
日本パレード            https://www.nippare.com/
日経МJ(2023年5月10日付)


EV普及に拍車。集合住宅にこそ「EV充電器」を。
 

国は「2035年までに、乗用車の新車販売でEV(電気自動車)100%を実現する」という目標を高らかに表明しました。これは、近い将来、実質上のガソリン車販売禁止を意味します。政府や自治体、メーカーなど各方面から急ピッチでEVの普及拡大へと舵が切られており、数年後には、あえて“EV”と呼ばずとも、クルマといえばEVが常識とされる社会が訪れると思われます。ただ、足元を見ると日本の新車販売台数におけるEV比率は3%台。20%を超える国のある欧州や10%超の中国、6%台の米国などに比べるとまだまだ低いのが現状です。
日本でEVの普及を妨げている要因の一つとして、充電インフラの遅れが挙げられています。自分はEVを持ってないし、持つ予定もないから関係ないという気持ちなのか、ドライバーたちの気運もいまいち、冷ややか。EVが普及して全体の保有台数が増えれば充電器の整備が進むのか、充電器整備が進めばEVがもっと普及するのか、まるでニワトリと卵の関係のようです。
EV充電器は全国に2万基超が設置されていますが(2023年3月時点)、これらは、高速道路のSA/PAや道の駅、ショッピングモール、コンビニ、ホテルといった“外出先充電”のもの。今、喫緊の課題として急がれているのは、“自宅充電”の整備です。特に、全国の約4割、東京都民の約7割を占めるといわれる集合住宅世帯のための設置が切望されています。しかし、越えるべきハードルがいくつも立ちはだかります。
EV充電器は住民共有の設備となるため、管理組合の総会で住民の合意を取り付ける必要があります。また、工事費込みで1基約50〜150万円といわれる充電設備導入の費用面に関しても、管理組合を通じ住民全体で負担することになるため、EVを利用していない居住者にも納得してもらう必要があります。そこで、国や自治体では、EV普及に弾みをつけようと助成拡充に動き出しています。経産省は、充電器本体の補助率で50%(上限35万円)、工事費は100%(同135万円)とする補助金を設定。全国で初となる、新築マンションへの充電設備の義務付けを表明した東京都は、工事費の補助金を上限81万円から171万円に引き上げました。これで、国の補助金と合わせると、設置費用の8〜9割をまかなえることに。
そのほか、充電設備をマンション共有部分のどこに設置するか? 使用料の徴収方法は? 等々、さまざまな面から越えるべき壁が現れますが、最近では導入に付随する諸々の懸案事項を一気に解決してくれるサービス業者も登場。管理組合とタッグを組んで課題解決にあたっています。
EVの充電設備があるということが、建物の資産価値の向上にもつながる時代です。
ちなみに、東京都は2030年までに、都内の集合住宅に設置される充電器を6万基まで増やす計画です。ただし、現状はわずか393基(2021年末時点)。あと7年ほどで152倍近くの数の充電器を設置できるのか----この高い目標の実現を、期待を込めて注視していきましょう。

参考:
(一社)日本自動車販売協会連合会   https://www.jada.or.jp/
経済産業省             https://www.meti.go.jp/
東京都               https://www.metro.tokyo.lg.jp/
EV充電エネチェンジ          https://ev-charge.enechange.jp/
日経МJ(2023年4月14日付)


棚借り「シェア型書店」。わたしだけの小さな本屋さんの開業です。
 

個人や少人数で運営する個性あふれる“独立系書店”が日本全国に広がり、存在感を増しています。旧来の流通システムに頼らない、まったく新しい形態の本屋、その名は「シェア型書店」。「棚借り(棚貸し)書店」「共同型書店」「シェア本棚」などとも呼ばれる小規模の書店で、本を売りたい利用者が書棚の一画を“間借り”して店主となり書籍を販売するシステムです。
2022年、東京・神田の古本屋街の一画にオープンしたシェア型書店「パサージュ」。幅41cm、高さ27cmの棚を月5500円から貸し出しており、壁一面に広がる360段分の棚は常に“満室”。空きが出るのは月に2〜3棚ほどで、借り手抽選は、毎回20倍を超える狭き門。棚主には、作家や書評家、編集者など本に関わる人が多く、自分の“推しの1冊”で埋められています。入会費1万3200円、販売手数料として価格の10%を徴収。
同じく昨年、大阪・堺にオープンしたのは「HONBAKO」というシェア型書店。壁一面に30cm四方(奥行23cm)の本箱がズラリ。箱数は全部で144。それを、月額1500〜3500円の4種類の陳列プランごとに割り振っています。お気に入りの本や、読まなくなった本、自著などを並べ、箱主の望む値段(100円単位)で販売します。本が売れたら、1冊につき100円の手数料を店側が預かり、うち50円は環境保護を目的とする基金に募金。箱主たちは持ち回りで店番を担当。店の運営に関しては、毎月定例で開かれる“箱主総会”で話し合い、決められます。
東京・渋谷駅のランドマークである「渋谷ヒカリエ」8階に、2021年オープンしたシェア型書店が「渋谷〇〇(まるまる)書店」。37cm×37cm×32cmの棚が約130。棚主は、主婦から会社員、ヨガ講師などさまざまで、最年少は5歳の女の子。哲学書の隣の棚に絵本が並ぶラインナップは、シェア型書店ならではの光景。入会費及び毎月の利用料は、共に4950円。販売手数料は1冊につき100円。
さいたま市の「ハムハウス」はシェア型書店&図書館。月額3300円で誰でも棚(幅90cm)を借りてオーナーになれます。以前は公立の図書館だった場所のため、漢字の“公”をばらして「ハム」と命名。本は購入も閲覧も可能で、会員になると(月額500円)、本を借りることができるという図書館の名残りの機能も。棚数は最大で97。
通常の書店にはない、シェア型書店の大きな特徴は、棚主同士が交流を深めたり、書店そのものが、本を通した地域の交流の場として機能している点です。
若干の初期費用はかかりますが、棚主が交代で店番するので人件費は要らない上に、取次を通さないので在庫を抱えることもない。もうけることを目的にしなければ、棚だけでなく、運営に要する金銭・時間・労力などのコストもシェアできる、サステナブルな形態といえそうです。

参考:
パサージュ         https://passage.allreviews.jp/
HONBAKO         https://honbako-cafe.com/
渋谷〇〇書店        https://www.hikarie8.com/books/
ハムハウス         https://libris.ne.jp/
日経МJ(2023年3月24日付)


 
 
 
 
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