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2023.05.01更新
 

耳よりな情報を。タイパの申し子、「ながら聴き」ビジネス、広がる。
 

動画配信が全盛の一方で、ネット上で配信される音声コンテンツをPCやスマホアプリなどで聴けるサービスが注目され、急成長しています。これほどまでにユーザー数が増え、市場規模の拡大につながった背景には、大きく二つの理由があります。 
一つは、使うのが“耳”だけということ。動画コンテンツと異なり、通勤・通学の移動中や家事、運動をしながらなど、何かほかの作業を行いながらの“ながら聴き”が可能なことです。時間効率を重視する今どきの“タイパ”志向にもフィット。
もう一つは、気軽に音声を聴くためのハードウェア(デジタルデバイス)の進化と普及です。音声のネット配信を聴取するための新たな端末として定着しつつあるのが「AIスピーカー(スマートスピーカー)」。さらに、“ながら聴きイヤホン”といわれるほど音声配信ビジネスへの貢献度が高いのが「ワイヤレスイヤホン」。中でも、耳を完全に塞がず周囲の音も聞こえるように設計された“外音取り込み”機能付きイヤホンも出現。これらを併用すれば、ハンズフリーで、より快適に“ながら聴き”が実現できます。

音声メディア(音声コンテンツ)には、主に次のような種類があります。 【音声配信サービス】文字通り、音声によるコンテンツを配信・聴取できるサービスで、専門の企業だけでなく、個人で配信までできるのが特徴。「Voicy」「ZATSUDAN」など。
【インターネットラジオ(WEBラジオ)】放送局が、電波ではなくネットを通して配信するラジオ番組のこと。「radiko」「ラジオクラウド」が知られています。
【オーディオブック】小説からビジネス書まで、本を耳で読む“ながら読書”が楽しめるサービス。この分野のパイオニア的存在「audiobook.jp」(オトバンク)は、ここ5年で会員数は13倍となり、250万人を突破。
【ポッドキャスト】Appleの“iPod”と“放送=broadcast”を組み合わせた造語。ネット上に公開されたさまざまな音声ファイルを、端末にダウンロードして聴取する保存型の音声コンテンツで、音声版のYouTubeとして世界中で利用者が増加。「Apple Podcasts」「Spotify」など。
【音声SNS】音声のみでリスナー同士が配信に参加して交流できるなど、アプリで音声チャットができる、音声配信の新しいサービス。日本でも話題になっていた「Clubhouse」は、完全招待制。“ルーム”と呼ばれるグループ内で会話をしますが、クローズのルームだけでなく、オープンなルームもあります。

音声配信は、ネット環境とスマホさえあれば誰でも発信者になることのできるメディアです。なにしろ、“話すだけ”でコンテンツが成立するため、低コストで制作可能。マーケティングに活用したい企業にとっては、リスナー(ユーザー)の耳に直接声を届けることで、ファンの獲得と絆の育成に効果を発揮する格好の媒体といえます。
内(自宅)ではスマートスピーカーで、外(外出時)ではワイヤレスイヤホンで、聴取の機会が広がる“ながら聴き”需要。その巨大な市場には、まだまだ計り知れぬほどのポテンシャルが眠っていそうです。

参考:
オトバンク          https://www.otobank.co.jp/
Clubhouse         https://www.clubhouse.com/
日経МJ(2022年11月21日付/同12月14日付)


眠りの質に目覚めた人たちへ。「睡眠改善食品」、コロナ下に続々登場。
 

世界で最も睡眠をとっていない国民といわれる日本人を、コロナ禍のストレスや運動不足、リモートワークなどによる生活リズムの乱れが直撃。睡眠不足に拍車をかけ、睡眠の質の低下を招く人が激増しています。

睡眠に関する何らかの悩みを抱えている人が約48%(森永製菓調べ)という数字が物語るように、今、良質な睡眠を求めるニーズが世代を超えて高まっています。そこで、食品業界を中心に“眠り”に注目。“機能性表示食品”として睡眠の質の向上をうたった食品の開発・販売が活発となり、2022年の市場は2019年比で2倍近くに拡大。その右肩上がりの市場を引っ張るのが、2019年に[ヤクルト]から発売され空前の大ヒット商品となった「Yakult1000」(宅配用/店頭販売用は「Y1000」)です。生きて腸内まで到達する乳酸菌“シロタ株”(ヤクルトの創始者、代田氏から命名)が100mlに1000億個という、ヤクルト史上最高密度で含まれており、ストレス緩和や睡眠の質向上が期待できます。ユーザーからのSNSレビューや、芸能人がテレビで紹介したことなどをきっかけにブームに火が付き、その人気は社会現象に。2022年の「流行語大賞」でのトップ10入りや、『日経トレンディ』誌が選ぶ2022年ヒット商品ランキングでは1位に選ばれるほど。 この人気に続けとばかり、他社も“睡眠サポート商品”を相次いで投入。
2022年9月に[日清ヨーク]から発売された乳酸菌飲料「ピルクル ミラクルケア」は、乳酸菌“NY130株”が1本(65ml)に600億個含まれ(従来の同製品の1.5倍)、睡眠改善効果などをうたった同社初の機能性飲料として注目されました。
起床時の疲労感軽減をアピールした、その名もズバリの商品「睡眠改善」を昨秋、発売したのが[森永製菓]。緑茶に多く含まれる“L-テアニン”(アミノ酸の一種)を200mg配合した機能性表示食品です。[カネカ]は“還元型コエンザイムQ10”を配合した「わたしのチカラ Q10ヨーグルト」を昨秋から全国販売へ。 これらの“睡眠サポート商品”開発のベースには、腸内環境がさまざまな健康の維持・増進に関与していること。特に、腸内環境を改善する機能が、睡眠の質改善や疲労感の軽減につながるということなど、腸内細菌が脳に働きかける“脳腸相関”のメカニズムが明らかになってきたことがあります。

国民的課題ともいえる日本人の睡眠の質の低さ。まずは、働き盛りの30〜50代のビジネスパーソンたちの眠りを少しでもサポートしようと開発された機能性飲料の数々。睡眠の悩みに食品で対処するという認知が広がったことで、市場はさらなる拡大が見込まれます。

参考:
森永製菓         https://www.morinaga.co.jp/
ヤクルト本社       https://www.yakult.co.jp/
日清ヨーク(ピルクル)   https://www.pilkul.jp/
カネカ          https://www.kaneka.co.jp/
日経МJ(2022年9月10日付/同12月7日付/同12月23日付/同12月28日付/2023年1月30日付)


政府が後押し。「オーラルケア市場」のシェア争い、ますます激化。
 

2022年6月、政府の「経済財政運営と改革の基本方針」、いわゆる“骨太の方針”の中で、「国民皆歯科健診制度」が明記されました。この、国民に毎年の歯科健診を義務付けるという報道に、私たちは少なからず驚かされました。
背景には、“歯周病”の存在が----この病が、糖尿病や心筋梗塞、脳梗塞をはじめ、誤嚥性肺炎、肥満、胃炎、大腸がん、骨粗しょう症、アルツハイマー型認知症などのリスクを高め、これらの疾患との関連性が高いことが明らかになってきたことにあります。30代以上の約7割が歯周病にかかっているにもかかわらず(厚労省)、自覚がある人は約3割にとどまっているという現状(花王調べ)。実態と自覚の間に大きな乖離がみられることから、定期健診で歯周病などを悪化する前に見つけて国民の健康寿命を延ばし、一人当たりの生涯医療費を抑える狙いがあります。同時に、歯ブラシメーカー各社が、歯周病によるオーラルリスクの警鐘を打ち出したことで、消費者の間でも歯周病予防の意識が高まり、オーラルケア市場の動きが一気に活気づきました。

[ライオン]は、オーラルケアをテーマにした法人向け健康経営支援サービス「おくちプラスユー」を昨年夏に立ち上げ、企業の従業員の健康習慣づくりのサポートに乗り出しました。
“健康は健口から! プロから伝えるオーラルケア”をスローガンに、歯科医院向けの販売ルートの開拓を本格化させたのが、洗口液「モンダミン」でおなじみの[アース製薬]。“プロデンタルリレーション事業部”を立ち上げ、専門商品のセミナー・説明会を年間1000回以上、実施しています。「G・U・M(ガム)」を手掛ける[サンスター]は昨年夏、歯周病予防情報を発信する専用サイト「歯みがき道〜歯みがき道が人生を決める〜」を新設。また同社の専用アプリ「オーラルケア スマートコンシェルジュ」では、口腔画像データから解析を行い、その人の状態にふさわしい商品を提示するという、AI技術を活用したサービスを展開。[P&G]のAI搭載電動歯ブラシは、アプリと連動して磨き残しをリアルタイムでガイドしてくれる仕組み。[花王]は、昨秋、オーラルケアの主力ブランド「ピュオーラ」の全面刷新に着手、高価格帯へのシフトに踏み切りました。

人口減で縮小傾向にある日用品業界にあって、“オーラルケア用品”は拡大が見込まれる数少ない有望株。関連商品の単価は上昇しており、例えば“歯磨き粉”の場合、低価格帯の商品が減少する一方で、中価格帯(200〜499円)や高価格帯(500〜999円)、1000円以上の超高価格帯の商品が増えています。購買層も、これまでは口腔トラブルが出始める60代以上が中心だったのが、30〜40代へと主要顧客がシフト。
2025年をめどに導入が検討されている「国民皆歯科健診制度」-----はたして、痛くなってから病院を訪れるというパターンが圧倒的な日本人が、痛くなくても歯医者に行かねばならなくなる“義務化”にどう対応するか----。成功のカギは、口腔の健康が、全身の健康にもつながるということの周知につきるのではないでしょうか。

参考:
健康保険組合連合会      https://www.kenporen.com/
厚生労働省          https://www.mhlw.go.jp/
花王             https://www.kao.com/
ライオン            https://www.lion.co.jp/
アース製薬          https://www.earth.jp/
サンスター          https://jp.sunstar.com/
P&Gジャパン         https://jp.pg.com/
日経МJ(2023年1月20日付)


 
 
 
 
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