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2022.11.02更新
 

減少する「ハチ」、需要拡大する「ハチミツ」。
 

「ハチミツ」は近年、単なる甘味料としての需要だけではなく、健康食品や医療品への活用が広まっていることなどで需要が拡大。さらに、コロナ禍による健康への関心の高まりから、米国、欧州などを中心に需要が急増しており、市場価格も上昇傾向に。今年1〜5月の輸入価格は、1kgあたり433円と、すでに昨年通年の価格より1割ほど高く、コロナ禍前の2019年比では2割の値上がり率に達しています(財務省)。
世界のハチミツ生産国ベスト5は(年により順位に若干の変動はありますが)、中国、トルコ、イラン、アルゼンチン、ウクライナの順(2020年調べ)。世界最大のハチミツ生産国である中国は、世界全体の約25%を占めています。ちなみに、日本の年間生産量は世界66位です。
日本で消費されるハチミツの9割が輸入品で、中国やアルゼンチン、カナダなどから輸入しています。そのため、輸入先の天候不順や異常気象がもたらす不作の影響をダイレクトに被り、市場の動向が大きく左右されます。開花期の天候次第でハチが飛ばなかったり、花が蜜を出さなかったりすると、自ずと採取できるハチミツの量が減少。特に、ここ数年、価格の手頃さで人気となっていたウクライナ産は、戦時下の影響で輸入が大幅に減少してしまいました。こうした、地球規模での気象変動や国際情勢に起因した採蜜量の減少は、価格にも跳ね返り、養蜂大手の[山田養蜂場](岡山)は今春、カナダ産やルーマニア産などの値上げに踏み切りました。
花から花へと飛び回るミツバチは、1回の飛行で平均300の花を訪れるといいます。その飛行範囲は、往復で4km。この作業を、1日に10回行うので、1日に3000もの花に立ち寄り、飛行距離は40kmにもなります。集めてくる花蜜の量は1飛行で0.04g。10飛行で0.4gとなります。ハチが蜜を集める日数は10日間とされ、0.4g×10日=4gに。つまり、1匹のハチが命をすり減らすように飛び回って集めたハチミツは、生涯でわずか小さじ1杯分ほどということになります。改めて、ミツバチへの感謝と、ハチミツの貴重さに気付かされます。
国内の主なハチミツ生産量のランクは、北海道、長野、秋田、熊本、青森の順。養蜂家の高齢化に加え、気候変動でハチの活動が鈍って採蜜量に影響が出ているのは、国産のハチミツも例外ではありません。生産量の減少を理由に値上げが相次ぐ一方、交配の役割を担うハチの数が減ることで、農産物の生産にも大きく影響。人工授粉は手間も時間もかかるため、今後、ハチの数が減り続ければ、さらなるコストの上昇を招きかねない状況に。
小さなハチがつなぐ実りの輪は、ハチミツだけでなく、多くの作物にも大きな意味を持っているのです。

※参考:

財務省            https://www.mof.go.jp/
(一社)日本養蜂協会      https://www.beekeeping.or.jp/
山田養蜂場          https://www.3838.com/
食品新聞WEB版(2022年3月14日付)
日経МJ(2022年7月13日付)


電気料金の値上げと豪雨から守ります。高価でも、高性能な「窓」に。
 

住宅の中で、最も熱が出入りする場所が「窓」。夏涼しく、冬暖かい----そんな室内を快適な温度に保つために欠かせないのが“断熱性能”で、それを大きく左右するのが「窓」です。近頃では、環境性能の高いスマートハウスの普及もあり、価格が2〜3倍でも、断熱性や強度に優れた省エネ・高性能の製品に人気が集まっています。
窓は、“ガラス”と“窓枠(サッシ)”部分で構成されており、これらの材質が価格を左右します。
2000年代に主流だったのが、ガラスが二重(複層)構造になった“ペアガラス”で、“単板(1枚)ガラス”の3倍ほどの断熱効果を実現しました。続いて、2010年頃に登場して急速に普及したのが、“Low-e複層ガラス”。Low-e=低放射の意味で、放射による熱伝導を抑える特殊な金属膜を表面にコーティングを施したガラスです。2枚のガラスの間に、乾燥した空気が封入されており、従来よりも高い断熱性を発揮して冷暖房効率を高めます。現在、戸建て新築住宅の8割以上に採用されているのが、このタイプです。そして、さらにその上をいく高性能ガラスが登場。“Low-eトリプルガラス”で、三層のガラスの間に特殊なガス(アルゴンガス、クリプトンガス)を封入して断熱性をさらに向上させました。
なお『板硝子協会』では、メーカーを問わず、“Low-eガラス”の共通呼称を「エコガラス」と定めており、該当製品はマーク(刻印かシール)で確認できます。
ガラスを強固なものにしても、窓枠の断熱性をおろそかにしては熱の出入りは改善されず、結露や室温のムラといった不快要素を除去することはできません。そこで今、脚光を浴びているサッシ素材が、“樹脂”。アルミの約1000分の1の熱伝導率を誇り、高い機密性で結露が生じにくく、カビ、ダニの発生を抑える効果も。
[YKK AP]の「樹脂窓Low-eトリプルガラス」の場合、アルミサッシ+ペアガラスに 比べ、費用は倍以上ながら、熱伝導量は4分の1に抑えられます。価格は、19万9400円(参考価格/税別)。
[LIXIL]は今年1月、リフォーム用の取り替え窓「リプラス」シリーズに、Low-eトリプルガラスを投入。価格は、25万2900円(参考価格/税別)。
金属や燃料の高騰で製品の価格が上がっているにもかかわらず、両社とも好調な売れ行きを見せています。
日用品をはじめとした値上げラッシュの中、少しでも安い物を、と願うのが消費者心理。実際に、カーテンや壁紙などは、より安い商品を選ぶ傾向が見られる一方で、窓については必ずしも安値志向だけではないようです。少々、費用がかかっても、災害に強く、省エネで冷暖房費を節約しようと考えるのも消費者心理。断熱性能の差は、はっきりと電気料金の差となって、家計に跳ね返ってくるのですから。

※参考:

(一社)日本建材・住宅設備産業協会  https://www.kensankyo.org/
板硝子協会             http://www.itakyo.or.jp/
YKK AP               https://www.ykkap.co.jp/
LIXIL                https://www.lixil.co.jp/
日本サッシ協会           https://www.jsma.or.jp/
日経МJ(2022年7月4日付)


広まる、「書店」の複合化。新しいエンタメ空間として、再生。
 

出版不況に連動する形で「書店」の減少が止まりません。2001年には全国に2万店以上あった書店が、2020年には1万1000店台まで落ち込み、今年は(正確な数字は分からないものの)1万店を割るのでは、と見られています。
書店の数が減ったのには、様々な要因が複雑に絡み合っています。
まず、インターネットの普及。情報の入手経路が紙媒体からネットに置き換わったことで、若者の活字離れを招き、さらにAmazonをはじめとした、売り場を持たないオンライン書店での購入が定着するとリアル書店の需要が激減。加えて、電子書籍が紙媒体の市場を侵食し、さらには[ブックオフ]などの中古書籍販売サービスが普及するなど、書店以外での本の購入手段が多様化していったことが、書店の衰退につながったといえます。
しかし、なんといっても最大の要因は、雑誌が売れなくなったことにあります。日本の出版業界を支えてきたのは、書籍より、雑誌。その売上高が、ピーク時の3分の1まで落ち込みました。雑誌の中心的購入層だった若者は、これまで雑誌から得ていた情報を、スマホから簡単に、しかもスピーディーにゲットできるようになったことで、雑誌の需要はどんどん先細りとなり、市場は急激に縮小。併せて、2000年代に入ると、コンビニという強力な販路に、ドル箱だった雑誌の売り上げを持っていかれてしまいます。この現象は、特に雑誌の売り上げで成り立っていた“街の小さな本屋さん”を直撃しました。
生き残りをかけ、全国の書店では、“本を売るだけ”からの脱却を図り、新たなモデル像を模索しています。
“書店ゼロの街をなくす”という理念のもと、全国約800の書店を展開する[CCC=カルチュア・コンビニエンス・クラブ]は、ライフスタイルやサービスを提案できる書店の未来像を探ります。その一例が、東京・代官山の蔦屋書店内にオープンした“シェアラウンジ”。ラウンジとシェアオフィス機能を併せ持った空間で(60分1650円)、フリードリンク&スナック、本は読み放題。都内、100拠点の開設を目指しています。
入場料が必要な書店として話題になった、東京・六本木の[文喫]。平日1650円、土日祝日は2530円(9月に1980円から改定)を払うと、午前9時から午後8時までの間、店内の書籍を自由に閲覧可能。コーヒーとお茶が飲み放題で、食事(有料)もとれます。“本と出会う本屋”をコンセプトとしており、そのしかけの一つとして好評なのが、書店員による“選書”(入場料込みで5500円)。事前に年齢や職業などのほかに、予算や希望ジャンル、最近良かったと感じた映画などをウェブのシートに入力すると、3〜4冊がおすすめ本として選ばれます。同店では、入場料を払っているんだから、という気持ちがはたらくのか、来店客の4割は、実際に本を購入するとのこと。これは、通常の書店の約3倍の客単価となります。
ここ数年の間に、カフェを併設した“ブックカフェ”は定着化し、雑貨やギャラリー、家電、ドラッグストア、コンビニなどとの一体型複合書店をはじめ、“泊まれる本屋”(ブックアンドベッド)まで出現。人と本との出会いはもとより、人と人との出会いの場としての書店。新しい知のエンタメ空間としての書店へと、今は進化の途上といえそうです。

※参考:

出版科学研究所        https://shuppankagaku.com/
CCC             https://www.ccc.co.jp/
文喫             https://bunkitsu.jp/
日経МJ(2022年7月6日付)


 
 
 
 
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