金融・お金の情報
2022.07.01更新
 

勘よりデータ。「気象情報」が読む、新たな消費行動。
 

 “気温が●●度を超えると冷菓がよく売れる”など、天候と商品の売り上げとの相関性や、天候が人々の消費行動に一定の変化をもたらすことはよく知られています。このことに着目して、天候の変化を先取りすることで消費者の行動を予測し、さらに商品・サービスの需要予測を立ててビジネスに有効活用しようというのが「ウェザーマーケティング」で、小売業などでは以前から注目されており、それ自体は決して新しい概念ではありません。しかし近年、コンピューター性能の進化やAIの発達などにより、気象に関する予測精度が著しく向上。ピンポイント情報など予測エリアの細分化が実現し、分析がより精緻に、かつスピーディーになったことで、改めて熱い視線が注がれるようになってきています。
 パリパリとしたモナカの香ばしさが売りの[森永製菓]のアイス「チョコモナカジャンボ」にも、気象データを活用した“鮮度マーケティング”が導入されています。パリッとした状態を長時間維持するという難題を解決するために[日本気象協会]の「商品需要予測サービス」を採用。気象予測に基づいた需要を“読んで”製造量を決め、全国の各エリアへの出荷配分を決定します。また、気温や天候に応じてテレビCMの出稿量の調整を実施。売り上げアップが見込まれる気温上昇時にCM本数を増やして、さらなる需要喚起を狙います。
 フードロス削減にも気象データが一役買っています。
 愛知県のスーパー[義津屋]では、商品需要予測サービスの一つ、「売りドキ!予報」を活用し、天候に応じて総菜の店内調理の量を決めています。全国の小売店の数年分のPOSデータとひも付けた情報に、約1600万件のツイッターのつぶやきによる“体感指数”も加味。客観的データに基づいた数字で示してもらうことで廃棄量が激減したとのこと。
 世界最大の民間気象情報会社[ウェザーニューズ](千葉)は、気象データ提供サービス「ウェザーテック(W×Tech)」を展開。全国に約1万3000地点に及ぶ日本最大の気象観測網と、ユーザーから一日約18万件寄せられる地元情報を生かしたピンポイントな情報提供が最大の強み。
 [パナソニック]は、昨春発売した戸建住宅用燃料電池「エネファーム」にウェザーテックの“停電リスク予測データ”を導入。停電の可能性がある場合、自家発電モードへの切り替えのタイミングをバックアップしてくれます。
防虫剤メーカーの [エステー]では、需要がピークを迎える衣替えの時期を予測するのにウェザーテックを活用。販売店にPOPや特設売り場を作るタイミングを伝えます。
天候状況によって生じる“欠品による機会ロス”や“作り過ぎ・過剰仕入れによる廃棄ロス ”といった課題の解決に大きく貢献し、今後ますます企業のマーケティングには欠かせぬ要素になってきそうな気象予測。どうやら、消費者のマインドだけでなく、天候も先読みすることが、新たな商機を引き寄せることにつながりそうです。


※参考:

森永製菓           https://www.morinaga.co.jp/
(一社)日本気象協会      https://www.jwa.or.jp/
義津屋            https://www.yoshizuya.com/
ウェザーニューズ       https://jp.weathernews.com/
パナソニック         https://panasonic.co.jp/
エステー           https://www.st-c.co.jp/
日経МJ(2022年2月4日付)


薄れる海外生産のメリット。「アパレル生産」、再び国内へ。
 

 アパレルの生産拠点が、中国や東南アジアから再び日本に戻りつつあります。長らく日本の経済成長を支えてきた繊維産業が、円高の進行などにより低価格品を中心にアジア各国への生産移管が始まったのが1980年代ごろ。やがて2000年代に入るとその動きはさらに加速し、数量ベースで98%、金額ベースでは79%の衣料品が海外製に(経産省)。  では、なぜいま、国内生産回帰なのか。三つの要因が挙げられます。
 一つは、発注・生産・納品までの時間の短縮化。海外生産の場合、販売まで2カ月程度を要します。これまでは、低い生産コストということで目をつぶってきたこの方式も、近年は、ユーザーの価値観の多様化やSNSの影響による売れ方のスピードに対応できなくなってきていました。
 3〜5年で商品の大半を国内生産でまかなう方針の[ワールド]は、ジャケットやワンピースなどを中心に中国やベトナムから順次、移行。国内8カ所の自社工場を中心に、輸送短縮などで海外生産の半分の納期の実現に自信をのぞかせます。
 [東京スタイル]と[サンエー・インターナショナル]の統合で誕生した[TSI]も、現在1割程度の国内生産比率を、将来的には3〜5割に引き上げる方針。スピードが求められる売れ筋追加商品は国内で生産すべく、米沢や宮崎の自社工場で生産拡大を検討。短期少量生産の実証実験に取り組んでいます。
 二つ目は、海外との賃金(人件費)の差が縮んだこと。衣料品コストの大部分を占める人件費を抑えるために海外へ生産拠点を移したはずでしたが、現地の賃金は、この10年の間に2倍近くに上昇してしまいました。
 三つ目は、コロナ禍による海外生産のリスク増大。例えば、ベトナムのロックダウンで生産工場の稼働率が低下、中国での電力供給不安、さらに海上輸送のコンテナ不足と運賃の高止まり、物流の混乱など、調達網の脆さが浮き彫りとなりました。
 たしかに、生産コストだけに着目すれば国内のほうが依然として高いかもしれません。しかし、納品までの時間や輸送費用に加え、廃棄ロスや機会ロスを大幅に削減できるなら、コストの差は相殺できるというのが各社の思惑。
 今年に入って、国内の縫製工場ではフル稼働状態が続いているといわれます。一方で、工場の数は減り続けており、慢性的な人手不足で生産能力が低下傾向に。大手アパレルをはじめ、こぞって海外へと生産拠点を移したことによって、長きにわたり苦戦を強いられてきた国内の工場からは、またいつか海外に戻るのではという懐疑的な思いが入り混じった冷ややかな声も聞かれるといいます。
 賃金が上がり続ける海外、低成長で横ばいが続く日本-----近い将来、生産コストが日本のほうが安くなり、東南アジアや中国の企業が低賃金を求めて日本に工場を持つ時代が訪れるかもしれません。

※参考:

経済産業省          https://www.meti.go.jp/
ワールド           https://corp.world.co.jp/
TSIホールディングス      https://www.tsi-holdings.com/
日経МJ(2022年3月18日付)


もっと若者需要を。花開くか、「生花」業界のあの手この手。
 

 日本の「花卉(かき)(草花)業界」は、いわゆる“物日(ものび)”(公私のイベント)で成り立っていると言っても過言ではありません。中でも、7割がブライダルやパーティー、お葬式などでの需要です(日本フローラルマーケティング協会)。しかし、1995年ごろをピークにこの10年余り、花の購入率は減少の一途を辿っています。
 そんな状況のところに襲ってきたコロナ禍。卒業式、入学式をはじめ、歓送迎会や結婚式などのイベントが軒並み自粛。花が重要な脇役を演じる機会が大量に奪われることに。しかし一方で、ステイホームの影響により、業界の長年の目標でもあった個人ユースが活発化。コロナ禍による危機をチャンスと捉え、業界をあげて若者を意識した店づくりやサービスで攻勢をかけています。
 [青山フラワーマーケット](東京/運営:パーク・コーポレーション)は、新スタイルの生花店「ピンク・バイ・アオヤマフラワーマーケット」を昨秋、阪神梅田本店内にオープン。店内は、フューシャピンク、コーラルピンク、モーヴピンクなど、明度や彩度が微妙に異なる色合いのピンクの花だけで構成されています。
 “進化系フラワーショップ”をうたう[Karendo(カレンド)](奈良/運営:花恋人)では、あえて奇抜な色でキラキラにと、ブルーやピンクで染めたかすみ草にラメを振りかけた「キラキラかすみ草bouquet」(3300円)が売れ筋。
 [日比谷花壇](東京)では、花のサブスクリプションサービス「ハナノヒ」が若い世代を中心に人気となっています。アプリ上でプランを購入し、店頭でQRコードを読み込むだけで、毎月、決まった回数、花を受け取れる仕組み。月6回、対象商品から1本の花を受け取れる“ココハナプラン”(月額1085円)。月6回、1回990円まで選び放題の“ツムハナプラン”(月額2955円)など、全6プランを設定。
 [第一園芸](東京)は、“東京ミッドタウン日比谷”内に新コンセプトのフラワーショップ「ビアンカバーネット バイ オアシーズ」をオープン。花や植物を販売するだけでなく、“装飾緑化”の一環として2m×7mの大型壁面を設置。渓流の風景やせせらぎなど、リアルな自然の中にいるような空間を演出。
 [hanane(ハナネ)](東京)の店先には、茎が曲がっているなどの理由で通常なら廃棄される規格外の花々が並びます。価格は1本、オール100円。
[ユニクロ]では、店舗前のワゴンで“ユニクロフラワー”を展開。1束390円、3束990円で切り花を販売しています。
 22〜35歳の男女、約4300人を対象にした「生花店利用状況調査」(花の国日本協議会)によると、約7割が日常的に花屋を利用していなかったという結果が。花卉業界の最大かつ喫緊の課題は、いかに日常的に花を飾る習慣を定着させられるかに絞られそうです。SNSなどの活用で若者と花との距離を縮め、彼らのニーズにフィットする店づくりやサービスの広がりが一層求められます。

※参考:

日本フローラルマーケティング協会
   http://www.jfma.net/
青山フラワーマーケット       
https://www.aoyamaflowermarket.com/
Karendo              
https://karendo.com/
日比谷花壇             
https://www.hibiya.co.jp/
第一園芸              
https://www.daiichi-engei.jp/
hanane         
https://hanane.co.jp/               
ユニクロ               
https://www.uniqlo.com/
花の国日本協議会          
https://hananokuni.jp/
日経МJ(2022年3月13日付)


 
 
 
 
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