コロナ禍による巣ごもり生活で、ネット通販などによる宅配荷物量が激増。[ヤマト運輸]の「ネコポス」、[日本郵便]の「ゆうパケット」など、軒並み宅配の小口貨物が大幅増となりました。
それに伴い、ただでさえ人手不足だったドライバー(配達員)の負荷も増大することに。いくら“ニューノーマル”が浸透して生活の場がオンラインにシフトしても、物流の担い手が“人”であることに変わりはなく、彼らがいなければウィズコロナの生活は維持できないのです。
荷物を受け取る側も届ける側も、感染リスクに怯えながらの対応を余儀なくされているいま。濃厚接触を避けようとする消費者ニーズの受け皿として、非対面(非接触)での受け取り方がクローズアップされています。そこで生まれたのが、利用者があらかじめ指定する場所(玄関前、宅配BOX、ガレージ、物置など)に荷物を置くことで配達が完了する「置き配」という、手渡し不要の受け取りサービスです。[ヤマト運輸]は、自宅のインターホン越しに配達員に置き場所を伝えるだけでサイン不要のサービスを2月から実施。[アマゾン]では、利用者からの特別な要望がなければ、在宅・不在にかかわらず置き配を実施。[日本郵便]も、インターホンで届け先を確認した上で玄関先に置くサービスを4月から始めています。
もともとは、コロナ前から、再配達にかかるコストの削減や配達員の負担軽減を目的に進められてきた置き配。コロナ禍を機に、利用者のニーズをつかんで需要は一気に拡大しました。
置き配は、飲食宅配にも広がりを見せています。[出前館]では、キャッシュレス決済で置き配を選択する「非接触デリバリー」を利用者に推奨。[ピザハット]は、対面受け取りを希望しない客のために「ピザ置き渡しサービス」を開始。
コロナ禍がもたらした非接触のシステムが、期せずしてデリバリー需要を高め、外食業界にとっては新しいビジネスモデルの到来といえます。
米国や中国では、すでに配送ロボットが実用化。日本は、仕組みづくりなどで出遅れ感は否めません。今年5月、安倍前首相は政府の『未来投資会議』で、「宅配需要の急増に対し、人手を介さない配送ニーズが高まるなか、自動配送ロボットについて、公道走行実証を年内に実行します」と述べており、実際に[ヤマト]や[日本郵便]など、今秋から首都圏各地でロボットが公道を走って配送する実証実験が行われる見通し。
需要増と感染リスク。このはざまで客と従業員をどのように守りながら事業を継続していくか-----闘いはまだまだ始まったばかりのようです。
※参考:
ヤマト運輸 http://www.kuronekoyamato.co.jp/
日本郵便 https://www.post.japanpost.jp/
アマゾンジャパン https://www.amazon.co.jp/
出前館 https://demae-can.com/
ピザハット https://pizzahut.jp/
国土交通省 https://www.mlit.go.jp/
日本経済新聞 電子版(2020年1月6日付/同8月18日付)
朝日新聞(2020年4月7日付)
西日本新聞 電子版(2020年5月4日付)
日経MJ(2020年6月26日付/同6月29日付/同7月3日付)
「雨の日にはこめかみが締め付けられるように痛む」「台風が近づいてくると耳鳴りがひどい」「梅雨時には古傷がズキズキ痛む」……天気の気象要素(気圧、温度、湿度、日照時間、降水量、雷、風など)によって引き起こされる体調不良や古傷の悪化などは、医療現場では昔から「気象病」といわれ、中でも気圧の変化に伴って慢性の症状が増強するものは「天気痛」(または「低気圧不調」)と呼ばれています。
症状としては、頭痛が圧倒的に多く、ほかには、肩こり・首こり、だるさ、めまい、耳鳴り、気管支ぜんそく、関節痛、神経痛、古傷の痛み、うつなど、人によってさまざま。一つだけでなく、複数の症状を同時に併発するのがこの病の特徴です。
主な原因は、気圧の変化。特に、気圧が低下すると人間の体はストレスを感じるため、それに抵抗しようと自律神経が過剰に活性化され、交感神経と副交感神経のバランスが崩れます。交感神経が活発になり過ぎると、脳内の血管拡張による神経圧迫で頭痛などの痛みを感じ、副交感神経が活発になると組織にむくみが生じ、だるさや眠気を催したりすると考えられています。
民間の天気予報サービス[ウェザーニュース]では、3月から「天気痛予報」をスタート。気圧などの気象情報を市町村単位で分析し、“安心”“注意”“警戒”といった天気痛発症リスクをスマホアプリやウェブサイト上で展開しています。
症状改善をうたう医薬品も登場しています。
[ロート]から4月に発売されたのは、主に天気痛による頭痛を抑える「キアガード」(24錠/税別1300円)。血行促進や鎮痛作用のある5種類の生薬をブレンドした漢方“五苓散(ごれいさん)”を有効成分として使用。
[小林製薬]も4月、同じく五苓散を主成分とした「テイラック」(24錠/税別1000円)を発売。頭痛に限らず、だるさやめまいなど、複数の症状への効果を訴求しています。
また、気象予報士が考案したという天気痛対策アプリ「頭痛―る」(配信元/ポッケ)も話題となっています。気圧の変化を予測し、症状が出そうなタイミングの通知や変化時の注意点が表示されるほか、症状や薬を服用した時間などを記録することができます。
現在、天気痛で悩む人は、日本で約1200万人にも上ると推定されており、うち8割が女性です。患者数は、年々増加傾向にありますが、“病”としての研究が始まったのは最近のこと。おかげで、これまでなんとなく感じていた、天気によって出現するあの不調が、決して“気のせい”ではないことが明らかになり、晴れて「天気痛」という正体が認知されるまでになりました。
※参考:
ウェザーニュース https://weathernews.jp/
ロート製薬 https://www.rohto.co.jp/
小林製薬 https://www.kobayashi.co.jp/
ポッケ https://www.pocke.co.jp/
日経MJ(2020年5月20日付)
欧米や中国などに大きく水をあけられた感のある日本のキャッシュレス決済(2019年時点で26.8%/経産省)。政府は、“キャッシュレス後進国”の汚名を返上せんと、2025年までにキャッシュレス決済比率を40%に、将来的には世界最高レベルである80%まで高めるという目標を掲げています。
まさに“国策”ともいえるキャッシュレス化推進と、消費増税後の個人消費腰折れ防止を目的に実施されたのが、2019年10月に始まった「キャッシュレス・ポイント還元事業」でした。決済サービス各社が大規模なキャッシュバックやポイント還元策を連発し、熾烈な利用者獲得競争でしのぎを削った“キャッシュレス決済劇場”の第一幕も、今年6月末で終了。この施策は、政府の想定を超える成果を挙げ、キャッシュレス決済利用拡大に大きく寄与したといえます。そこに、さらに、“現金に触れたくない”というコロナ禍による非接触ニーズが追い風となり、いっそうキャッシュレス決済の広がりに拍車をかけることとなりました。
キャッシュレス決済手段の中でも、ポイント還元期間中に利用が急伸し、7月以降の“覇権争い第二幕”へと突入しているのが、「QRコード」決済です。LINEペイ(LINE)、PayPay(Zホールディングス)、楽天ペイ(楽天)、d払い(NTTドコモ)、auペイ(KDDI)、メルペイ(メルカリ)など、20社以上がひしめく激戦区。
この成長市場をけん引するのは、[ソフトバンク]と[ヤフー]が共同出資する「PayPay」。大規模な還元策と全国に整えたネットワークを武器に伸長。この1年間で決済回数は17倍に、登録者数も約3000万人に達しました。次なる戦略として、7月から、地方自治体と組んで「あなたのまちを応援プロジェクト」という独自の還元策を開始。対象店舗でPayPayを使うと決済額の20〜30%が利用者に還元されるという仕組み。
PayPayの背中を追う「楽天ペイ」も、7月から最大1.5%のポイント還元をスタートしています。
しかし、順風満帆に見えるQR決済市場も、最近では互いに巨額の先行投資による消耗戦の様相を呈しています。PayPayとて、派手なキャンペーンの実施やサービス利用店舗拡大などの投資がかさみ、営業赤字が820億円超(2020年3月期)と拡大の一途。激しい淘汰が進み、各社は生き残りをかけて“競争”から“連携”へと舵を切りはじめています。
「d払い」は「メルペイ」と手を組み、QRコードの共通化とポイントの統合へ。「auペイ」は自社ポイントを「ポンタ」に統合。「LINEペイ」は「PayPay」の[Zホールディングス]と経営統合など。そこへ、9月から始まった総務省主導の還元制度「マイナポイント」が微妙にからんできて、ますます混迷の色を濃くしているというのが実情のようです。
※参考:
経済産業省 http://www.meti.go.jp/
Zホールディングス https://www.z-holdings.co.jp/
楽天 https://pay.rakuten.co.jp/
NTTドコモ https://www.nttdocomo.co.jp/
メルカリ https://www.mercari.com/jp/
KDDI https://www.kddi.com/
LINE https://linecorp.com/ja/
総務省 http://www.soumu.go.jp/
朝日新聞(2020年4月22日付)
日経MJ(2020年7月1日付)
日本食糧新聞(2020年7月30日付)