「電動アシスト自転車(以下、電動自転車)」といえば、買い物や子どもの送迎など、女性や高齢者の利用が多いイメージでしたが、昨年あたりから「eバイク」と呼ばれるスポーツタイプの電動自転車が相次ぎ登場して“ママ・チャリ”イメージが一新。欧米ではすでに、アウトドアスポーツとして急速に普及しており、その波が日本のマーケットにも押し寄せてきたというわけです。
eバイクには、スポーツ走行を想定して設計されたドライブユニット(モーター、バッテリー、操作スイッチなど)が搭載されています。この点が、従来の電動自転車と大きく違うところです。
電動自転車のパイオニアである[ヤマハ]は、他社に先駆けて2015年からeバイク市場に参入。昨年は、マウンテンバイク(MTB)、ロードバイク、クロスバイク、トレッキングバイクと、タイプ別に4モデルを新たに投入しました。販売価格は、約19万円〜32万円(税別)。
受けて立つのが、日本の電動自転車出荷台数の4割を占め、シェアトップの[パナソニック]。2017年に、国内メーカーで初となるMTBタイプのeバイクで参入(税別33万円)。初年度の販売目標200台を1カ月で達成するほどの人気となりました。同社では、体験イベントや観光地でのeバイク貸し出しなどのサイクリングツアー事業にも積極的。2021年度までに、eバイクの販売額を現在の2倍に増やす計画です。
ほかにも、ドイツの大手自動車部品メーカー[ボッシュ]や、長い歴史を持つ国産自転車メーカー[ミヤタ]、米国の総合自転車メーカー[トレック]、台湾のeバイク専門ブランド[BESV(ベスビー)]なども日本のeバイク市場に参入。
購買層の中心は40〜60代の男性。当初は、“自力でこいでこそ達成感や爽快感が味わえるもの。電動なんて邪道だ!”といった声が、メーカー内でもあったといいます。しかし、体力の衰えを実感する中高年のスポーツサイクリストにとって、電動化の恩恵は計り知れないほど大きかったようで、販売を始めると、想定を上回る売れ行きとなりました。
“こぐことを楽にする”電動自転車から、“こぐことを楽しむ”eバイクへ-----普及への最大のハードルといえば“価格”で、通常の電動自転車が8〜15万円なのに対し、eバイクは倍以上に跳ね上がります。国土の大部分が山地であることが逆にeバイクにはもってこいの環境であるとはいえ、まずその前に価格の坂道を上らなければいけないという課題が待ち受けているようです。
※参考:
ヤマハ発動機 https://www.yamaha-motor.co.jp/
パナソニックサイクルテック http://cycle.panasonic.jp/
ボッシュ http://www.bosch-ebike.jp/
ミヤタサイクル http://www.miyatabike.com/
トレック・ジャパン https://www.trekbikes.com/jp/ja_JP/
BESV JAPAN http://besv.jp/
経済産業省 http://www.meti.go.jp/
日経産業新聞(2018年8月17日付)
日経MJ(2018年8月31日付/同10月22日付)
デジタル化の波にあらがうかのように、というか、デジタル全盛のいまだからこそ、あえて「手書き」の良さ、味わい、おもしろさに目覚め、楽しむ人が増えています。特に、若い女性の間で注目され、“手書き女子”が増殖。インスタグラムなどのSNSで“♯手書きツイート”といったハッシュタグが流行し、万年筆のカラフルなインクで書いたメッセージを撮影して投稿するのがひそかなブームに。
実は、文具業界全体では縮小の一途をたどっているなか、なぜか筆記具の売り上げは急増しています。なかでも、国内の万年筆市場はここ数年、需要増が続き、右肩上がりの傾向。もちろん、けん引役は手書き女子たちです。かつては、中高年男性のステータス的高級文具のイメージが強かった万年筆も、最近は1000円〜3000円台のコスパに優れた製品が各社から登場。
[パイロット]の1000円万年筆「kakuno(カクノ)」は、日本初の本格的子ども向け万年筆として2013年に登場するや、驚異的な数を売り上げ、これまでに200万本以上のヒット商品となりました。低価格なのに本格的な書き味で大人のユーザーもキャッチ。普段使いとして一人で数本買い求める人も少なくありません。
万年筆と並走するように、インクもこの10年で大きく変わりました。特に、カラーバリエーションの充実が、万年筆ブームに大きく貢献しています。
[セーラー]は昨春、全100色の「万年筆用ボトルインク インク工房 染料20ml」を発売(各税別1200円)。また、[プラチナ]は、複数の色を混ぜ合わせて自分オリジナルのインクが作れる「ミキサブルインク」を展開しています。
ほかに、“竹炭”“朝顔”といった日本的な色をそろえた[パイロット]の「色彩雫(いろしずく)」(全24色/各税別1500円)や、“時雨(しぐれ)”“土用”など日本の四季をイメージしたインク名がついた[セーラー]の「四季織(しきおり)」(全16色/各税別1000円)など。
文具店も、この流れを捉え、さまざまな仕掛け作りに力を入れています。
東京銀座の文具専門店[伊東屋]では昨年9月、1週間にわたって「INK.Ink.ink〜インク沼へようこそ〜」と題した万年筆用インクの試し書きイベントが催され、予想を上回る来場者で大盛況でした。
また、創業137年を迎えた神戸の老舗文具店[ナガサワ文具センター]では、[セーラー]のインクブレンダー(石丸氏)によるオリジナルインク作りの体験イベントを定期的に開催しています。
それにしても、アナログの象徴である万年筆が、デジタルの象徴であるSNSで“映える”という新たな価値を身に付けたことは、なんとも興味深いことです。
※参考:
パイロットコーポレーション http://www.pilot.co.jp/
セーラー万年筆 http://www.sailor.co.jp/
プラチナ万年筆 http://www.platinum-pen.co.jp/
伊東屋 https://www.ito-ya.co.jp/
ナガサワ文具センター https://kobe-nagasawa.co.jp/
日経MJ(2018年6月25日付/同11月2日付)
言うまでもなく、「粉ミルク」は乳幼児のための育児用食品です。が、最近、シニアの間で、“総合的に栄養がとれて体に良さそう”という理由で、自分用に愛用する人が増えているといいます。
しかし、新生児のための粉ミルクは、母乳同様、それだけで成長に必要な栄養のすべてを摂取できるように成分配合されているため、脂質が多くカロリーも高め。成人の大人にとって最適とはいえず、取り過ぎると栄養過多になり、体重や体脂肪が増えてしまう恐れがあります。
そんな実態を背景に、乳業・食品メーカー各社は、中高年が手軽に栄養補給できる大人用粉ミルクのニーズがあると確信。栄養素を成人向けに調整した「大人向け粉ミルク」が相次いで開発、商品化されることになりました。
先駆けとなったのは、[救心製薬]から2014年に発売された「大人の粉ミルク」(7袋入/税別1600円)。ヨーグルト味で、牛乳の約2倍のたんぱく質やカルシウムなどに加え、骨粗しょう症予防になる“プロテタイト”を配合。昨年度は発売当初の4倍近くの出荷数で、製造が追いつかないほどの売れ行きを見せました。
続いて2016年には、[森永乳業]から「ミルク生活」(1缶300g/税別1950円)が発売されました。感染症を防ぐ“ラクトフェリン”、免疫力を高める森永オリジナルの“シールド乳酸菌”、老化の進行を抑制する“中鎖脂肪酸”などをバランスよく配合。通販限定商品としてスタートしましたが、昨年4月から販路を拡大。ドラッグストアなどでの店頭販売に踏み切り、売り上げは発売当初の5倍以上と好調に推移しています。
[雪印ビーンスターク]も2017年、「プラチナミルク」シリーズを発売(各税別2400円)。“大人のための美味しい粉ミルク型サプリメント”というコンセプトで、「forバランス」「forパワー」「forビューティ」の3アイテムを販売しています。
このほか、健康食品販売[ユニマットリケン]から「大人の賢い粉ミルク」、[伊藤忠食品]から「おとなのミルク習慣プレミアム」、化粧品・健康関連商品を手掛ける[エルベ・プランズ]から「まいにち粉ミルク」が発売されるなど、昨年は大人向け粉ミルク市場の参入ラッシュとなりました。
“粉ミルク”と、名前こそ同じですが、乳児用のものとは、成分も効果も、そして使用目的もまったくといっていいほど違うのが「大人向け粉ミルク」です。
主な購入者の8割は50〜70代の女性たち。かつて、自分の子どもに飲ませていた世代が、今度は自身の健康寿命のために飲んでいる、ということになります。
※参考:
救心製薬 http://www.kyushin.co.jp/
森永乳業 http://www.morinagamilk.co.jp/
雪印ビーンスターク https://www.beanstalksnow.co.jp/
ユニマットリケン http://www.riken-health.co.jp/
伊藤忠食品 https://www.itochu-shokuhin.com/
エルベ・プランズ http://www.elveplans.jp/
厚生労働省 http://www.mhlw.go.jp/
日経MJ(2018年2月2日付/同11月7日付)