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2018.10.01更新
 

希少価値の味わい。日本育ちのコーヒー豆。
 

現在、日本では、コーヒー生豆をほぼ輸入に頼っている状況ですが、国内でも“国産コーヒー”として栽培されていることはあまり知られていません。

沖縄で本格的なコーヒー栽培を始めたのは、40年ほど前。ブラジルから持ち込まれた「ムンド・ノーボ」(沖縄での名は「ニューワールド」)という品種で栽培がスタートしました。現在は、本島の国頭(くにがみ)郡エリアを中心に、いくつかの農園で商業生産が行われています。
奄美群島の徳之島(鹿児島県)では、生産を後押しする取り組みが進んでいます。昨年、[味の素AGF]や[丸紅]などが中心となって「徳之島コーヒー生産支援プロジェクト」を発足。2012年から本格的な栽培が始まった徳之島では、16年には約600本の木から70kgほどの収穫がありました。これを、20年までに、栽培本数1万本、収穫量10tに増やすことが目標です。沖縄産に比べると生産量がまだまだ少ないですが、[味の素AGF]では、20年以降、徳之島産コーヒー豆を使った「JapaNeeds Coffee®(ジャパニーズコーヒー)」を高級ギフトとして商品化する戦略を描いています。

東京でもコーヒー豆を栽培しています。と言っても、都心から南へ1000km離れた、東京都小笠原村。明治時代からコーヒーの栽培が行われ、日本のコーヒー発祥の地といわれています。父島と母島には、栽培農家が数軒。いずれも規模が小さく、年間の収穫量は200kg程度。その超レアな“東京コーヒー”を、東京・丸の内の「カフェ アパショナート」で飲むことができます。一日5杯限定で、1杯930円。酸味の少ないほのかな苦みの貴重な味わいが人気となっています。

今回、取り上げた国産コーヒーの産地には、共通する“3つの試練”が横たわります。一つは、台風。コーヒーの木はたいへん風に弱く、万全の防風対策が必須となります。二つ目が、夏の直射日光。元来、日陰を好むコーヒーの木は、強い可視光と強風による塩害で“葉焼け”を起こすことがあります。三つ目が冬の寒波。コーヒーの木の耐寒温度はだいたい10℃ですから、北風に当てないなどの防寒対策が必要となります。こういった、日本ならではの天候リスクやその対策に要する手間とコストなどが、国産コーヒーの大規模栽培を阻んでいる要因ともいえます。

世界的にみても珍しい、最北限地でのコーヒー栽培。たしかに、生産量が少ない分、高価ですが、今後は、希少な日本育ちのコーヒー豆として、一日も早いブランド化の確立が待たれます。                          


※参考:
一般社団法人 全日本コーヒー協会     http://coffee.ajca.or.jp/
味の素 AGF              http://www.agf.co.jp/
カフェ アパショナート          http://www.caffeappassionato.jp/
日経MJ(2018年2月12日付)



捨てられるはずの野菜に、新たな命を。育ってほしい、「野菜再生市場」。
 

形や大きさが規格外という理由で出荷されなかったり、台風や洪水といった自然災害でやむなく廃棄せざるを得なくなった野菜は、膨大な量に上っています。いま、その廃棄野菜を活用したまったく新しい再生アプローチが、各方面で注目され始めています。

規格外の野菜と寒天をペースト状に圧縮して余分な水分を取り除き、乾燥させて厚さ0.1mmのシート状に成型した、「VEGHEET(ベジート)」という“野菜海苔(のり)”が話題となっています(開発・製造・販売/アイル<長崎県>)。開発に20年を費やし、昨秋、商品化に成功。原料は、野菜と寒天のみ。賞味期限は常温で2年と長く、災害時の備蓄食材としてのニーズも。いまのところ、「ニンジンシート」と「ダイコンシート」の2種類で、今年6月から[イトーヨーカドー]で本格販売がスタート(5枚入、税別350円)。海外でも反響を呼んでおり、フランスやイタリアの星付きレストランでの使用も始まっています。

捨てられる運命の野菜や果物から、世界に類を見ない「クレヨン」を開発したのは、青森県のベンチャー[mizuiro]。その名も、「おやさいクレヨン Vegetabo(ベジタボー)」(10本セット 税別2000円)。地元産の野菜をパウダー加工し、主成分のワックスにライスワックス(お米の油)を使用。すべて、“食品”が原料のため、子供が舐めても大丈夫。クレヨンのラベルには色の名前ではなく、“きゃべつ”“りんご”などと素材の名前が付けられていて、塗ってみると、ほのかに、その香りまで漂ってきます。2014年に発売して以来、ギフト需要などをつかみ、3年間で約10万セットを売り上げるヒット商品に。中国や韓国、欧州でも販売されています。

廃棄野菜を使って染めるプロジェクト「フードテキスタイル」を展開する繊維商社の[豊島](名古屋)が、昨年、農水省が推進する「農業女子プロジェクト」とコラボして誕生したのが「着る野菜Tシャツ」。今回は、ニンジン、トマト、ネギ、ナス、カボチャからの染料で染められた5種類のTシャツを、クラウドファンディングで販売されました(3900円からの支援)。

ここで紹介した事例で使われている野菜は、廃棄される野菜のほんの一部、微々たるものです。しかし、エコをベースにしたその小さな試みが、地元農家の新たな収入源となるほか、新たな産業を生み出すことによる雇用の創出、地域農産品のブランド力向上、地産地消の推進など、その貢献度は決して小さくありません。地域活性化の動きと連携しながら、さらなる大きなうねりへと発展しそうです。


※参考:
アイル(ベジート)        http://vegheet.com/
mizuiro          http://mizuiroinc.com/
豊島               https://www.toyoshima.co.jp/
農林水産省            http://www.maff.go.jp/
日経ビジネス(2018年1月8日号/同2月26日号)
日刊工業新聞(2018年8月16日付)



歓迎! 英語入試改革。“話す”“書く”に、商機あり。
 

昨年7月、文科省は、大学入試の「センター試験」に代わって、2020年度から「共通テスト」を導入するという改革案を発表。中でも、大きく変わるのが「英語」入試。現行は、“読む”と“聞く”の2技能ですが、改定後の共通テストには、これに“書く”と“話す”が加わり4技能での評価となります。その場合、50万人もの受験生が一斉にスピーキングの試験を受けることは不可能となるため、大学入試センターが認めた民間の検定試験(GTEC、TOEIC、TEAP、英検など)を活用することとなります。(実施内容の詳細は省略)

今回の大学入試改革を新たな商機ととらえ、にわかに活気づいたのが、英語教育関連業界。4技能習得に向け、各社、新機軸を打ち出して、学生と保護者にアピール。すでに熾烈な生徒争奪戦の火ぶたが切られています。
[駿台予備学校]では、駿台生を対象に、スマホなどで自由に繰り返し学習できる「eラーニングシステム PLATON(プラトン)」を、今春からスタート。
[ベネッセコーポレーション]の通信添削講座「進研ゼミ」は、“共通テスト一期生”となる現在の高1生を対象に、月1回15分のオンライン会話の無料サービスを導入。スマホやタブレットを使って、外国人講師とリアルタイムの個別指導が受けられます。
[東進ハイスクール]も高1生向けに「英語4技能講座」を今春、開講。AIを搭載した教材アプリ「Speaking Partner東進くん」を使って、“R”と“L”、“B”と“V”といった間違いやすい発音を自動認識してくれます。

また、英会話の授業のための十分な教材や先生を用意できない----そんな資金力にゆとりのない中小の学習塾や学校へ、オンライン英会話システムそのものを売り込むビジネスも登場。[スタディラボ]の「OLECO(オレコ)」というサービスで、毎回、外国人講師による完全マンツーマン指導が売り。加盟料は一校25万円、利用料金は生徒一人につき月4回の授業で月額4980円を学校から徴収する仕組み。導入先は600校を超え、利用生徒の数は5500人と予想を上回る規模に拡大。特に、入試改革発表後には、新規導入の問い合わせが急増しているとのこと。

20年度からは、小学5・6年生の英語が正式教科に。中学でも英語の授業は英語で行うことが基本となります。保育所や幼稚園などでの、子供向け早期英語教育のニーズはいっそう高まり、英会話市場はさらに拡大。今回の大学入試改革の英語検定試験導入によって新たに生まれるマーケットの規模は、数百億円と予測されています。
この少子化の中、縮小一途だった教育業界の眼前に、“魅力的”な市場が待ちうけているのです。


※参考:
文部科学省         http://www.mext.go.jp/
駿台予備学校        http://www2.sundai.ac.jp/
ベネッセコーポレーション  https://kou.benesse.co.jp/
東進ハイスクール      https://www.toshin.com/
スタディラボ        https://studylab.co.jp/
朝日新聞(2018年3月20日付)
日経MJ(2018年4月4日付/同6月20日付)



 
 
 
 
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