主に10〜20代の間で、ドラマや映画などの動画を通常の1.5倍とか2倍の早回しで見る「倍速視聴」が常識となりつつあります。録りためたドラマやアニメを週末に一気に倍速消化するパターンや、本当に見たいものを探しだすための作業として、コレ!というものに出会った時には普通の速度でじっくり鑑賞するという活用術としても浸透しているようです。
倍速視聴のニーズの高まりと並走するかのように、効率よく録画番組を楽しめる機能を搭載したハード(レコーダー)がめざましい進化を遂げています。背景には、倍速再生時の映像や音声の不自然さを解消した技術が大きく貢献しています。
昨年発売された[シャープ]のブルーレイディスクレコーダー「AQUOSブルーレイ」は、1.1倍速〜2.0倍速まで、0.1倍刻みの10段階で、音声付き“早見・早聞き機能”を実現。2倍速なら、60分番組を30分で視聴できる計算になります。
[東芝]の「レグザブルーレイ」は、リモコンの“時短ボタン”を押すだけで、60分番組の場合、“らく見”なら約45分、“らく早見”なら約34分、“飛ばし見”なら約5分の倍速視聴が可能です。
また、[YouTube]公式アプリでも倍速再生機能が追加。0.25倍、0.5倍、0.75倍(以上がスロー)、標準、1.25倍、1.5倍、2.0倍の全7パターンから選択可能となりました。
[NTTドコモ]の動画配信サービス「dTV」も、2016年から倍速再生に対応。1.5〜2.0倍速に切り替えて視聴できる機能が追加されています。
倍速視聴は、エンタメ系コンテンツに限りません。
学習塾の[東進ハイスクール]の映像授業では、音声が音飛びしない状態で1.5倍のスピード再生を実施。90分の授業が60分で終了し、残りの30分を有効に使うことができます。
資格系予備校の[TAC(タック)]でも、高速再生機能を導入。講義動画の再生速度を0.8倍〜2.0倍までの7段階から選択できます。
“テレビ離れ”といわれて久しいですが、実は、放映時刻に合わせてテレビの前に座る“リアルタイム視聴”が減っただけで、テレビ番組(コンテンツ)自体から離れていったわけではないのかもしれません。つまり、テレビを見る時間を自分の都合に引き寄せてカスタマイズしたいというニーズが、倍速視聴のすそ野を急速に広げていると思われます。
倍速視聴を“せっかち”と嘆くにはおよびません。時間をムダにしたくないという前向きな価値観が、“じっくり”より“ざっくり”という視聴スタイルを選んでいるのです。
※参考:
シャープ http://www.sharp.co.jp/
東芝 http://www.toshiba.co.jp/
You Tube https://www.youtube.com/
dTV https://www.nttdocomo.co.jp/
東進ハイスクール http://www.toshin.com/
タック http://www.tac-school.co.jp/
日経MJ(2017年6月16日付)
衣類をハンガーに掛けたままで高温の水蒸気(スチーム)がサッとシワを伸ばしてくれる手軽さがうけ、急速に市場が拡大している「衣類スチーマー」。2016年の販売台数は、12年の11倍にも跳ね上がっています。(Gfkジャパン)
アイロンとの最も大きな違いは、アイロン台が要らないという点です。いちいち出して、しまってという作業が、アイロンがけ自体を面倒にしている要因でした。
軽さも大切です。アイロンは約1kg前後が主流ですが、衣類スチーマーはだいたい700〜800gと軽量。
また、アイロンではプレスしにくかった、カシミア、ウール、ファー、ニットといった痛みやすく繊細な生地やフリル、プリーツなどにも対応している点が、アイロンではなく衣類スチーマーが選ばれる要因の一つとなっています。
さらには、脱臭、除菌、花粉・ダニ対策などの効果もあり、世の中の“消臭ニーズ”も衣類スチーマーの需要を後押ししているようです。
市場的には、2013年に再参入して以来トップシェアを保っているのが、[パナソニック]。昨春発売された「NI-FS530」は、電源を入れてからスチーム噴射まで24秒と立ち上がりの早さが売り。約4分間の連続スチーム、本体700g、価格は1万円前後(税抜)。
[日立コンシューマ・マーケティング]から昨春発売の「CSI-RX1」は、本体690gと軽いのが特徴。温度は、100℃〜170℃の間で3段階に調節可能。付属のブラシアタッチメントを使えば、スチームをあてながら、衣類に付いているホコリや毛クズなどを取り除きます。連続スチーム約6分、価格は1万2000円前後(税抜)。
[アイリスオーヤマ]の「KIRS-01」には、折り目を付けたい時のために、衣類を押さえながらプレスできる専用布(ぶ厚いミトン)が付いています。自分の手がアイロン台になるという、他社にはない個性。連続スチーム約5分半、本体790g、価格は9000円前後(税抜)。
[東芝]は昨秋、スチームの量を2段階に切り替え可能な「TAS-X3」を発売。連続スチーム約5分、本体690g、価格は1万円前後(税込)。
これらの機種はすべて、通常のアイロン使いもできる1台2役タイプです。
近ごろは、形態安定加工シャツの普及で、念入りなアイロンがけニーズが減少。加えて、ファストファッションの浸透で、ちょっとしたシワ伸ばしで十分と、スチーマーへの需要移行に拍車がかかっています。アイロンほどスキルを要せず、老若男女が使いやすいことから、今後ますます需要の拡大が見込まれます。
※参考:
Gfkジャパン http://www.gfk.com/jp/
パナソニック http://panasonic.co.jp/
日立コンシューマ・マーケティング http://www.hitachi.co.jp/
アイリスオーヤマ https://www.irisohyama.co.jp/
東芝 http://www.toshiba.co.jp/
日経MJ(2017年6月14日付)
日経産業新聞(2017年8月28日付)
日刊工業新聞(2017年10月23日付)
車を保有しない高齢者や単身世帯の増加。そこに、地元商店街の衰退や総合スーパーの撤退などの要素が加わって浮き彫りになったのは、“近くに生鮮食品や日用品を買う店がない”と嘆く“買い物難民”問題。便利なはずの都心部に“フードデザト(砂漠)”が発生したのです。
そんな状況の中、日常的な買い物の空白地帯を埋める狙いで10年ほど前から登場したのが「小型スーパー」でした。サイズ的にはコンビニの1.5〜2倍程度で、コンビニ同様のサービス(ATM、公共料金支払いなど)に生鮮食料品などスーパーの品揃えがプラスされた業態。性格的には、“ミニスーパー”であり“ビッグコンビニ”といえます。出店のための土地取得がしやすく、運営コスト的にリスクが少なく、小回りの利く出店戦略が可能。基本的には徒歩や自転車で来店してくれる層がターゲットです。
東京の一大繁華街、渋谷。その駅周辺は、ほぼ2年間にわたってスーパーの不毛地帯でした。2015年に、駅そばにあった食品マーケットが閉店したからです。以降、近隣住民は一気に買い物難民となってしまいました。そこに2017年、“難民救済”のごとく出現したのが、「東急ストア フードステーション」という小型スーパーでした。半径500m内には、約3300世帯の住民が暮らしています。品揃えは、野菜、水産物、精肉、惣菜、パン、ワインなどのほか、場所柄、観光客用に食べ歩きできる“カップデリ”や“フルーツバー”も好評です。
小型スーパーの代表格が、イオングループが2005年から展開する「まいばすけっと」。“コンビニ風スーパー”“生鮮コンビニ”と呼ばれる売場構成で、コンビニが取りこぼしていた生鮮食品へのニーズに対応。価格はコンビニより低めのスーパー(イオン)プライス。
[マルエツ]は、コンビニを意識した都市型小型スーパー「マルエツプチ」を2009年から展開。さらに、同店のアップグレード版として、「リンコス」を運営。徹底した“鮮度とできたて”を売りに、スーパーの強みをアピールする戦略です。
新しいレイアウトで、スーパー目線のコンビニを打ち出すのは[セブン-イレブン]。これまで、入口のすぐ横にあったレジカウンターをフロア奧に移動。全長9.9mと、従来より3mほど延びました。冷凍食品スペースが2倍となるほか、女性やシニア層を意識して日用品の大容量タイプも充実。2021年までに、国内店舗の約半分(1万店以上)を“新レイアウト”店舗にしていく計画です。
スーパーとコンビニ、それぞれの弱点をそれぞれの強みで補いながら、狭い商圏の顧客獲得を巡って、双方のせめぎ合いはいっそう激化していきそうです。
※参考:
東急ストア フードステーション渋谷キャスト店 http://www.tokyu-store.co.jp/
まいばすけっと(イオンリテール) http://www.aeonretail.jp/
マルエツ https://www.maruetsu.co.jp/
セブン-イレブン・ジャパン http://www.sej.co.jp/
日経産業新聞(2017年2月9日付)