それだけで食事にもなろうかという主役級のサラダ、それがNY生まれの「パワーサラダ」です。従来のサイドメニューのサラダのように、単に野菜を補うといった“消極的なサラダ”ではありません。野菜、果物、たんぱく質の具材を基本として、ダイナミックに大皿やボウルに盛り、ヨーグルトなどの乳製品やクルミ、アーモンドといったナッツ類、さらに果物系チップス、シリアル類、クルトンなどをお好みでトッピング。味付けは、オリーブオイルやビネガーなどをドレッシングに。一皿で、一日に必要な栄養素とエネルギーをバランス良く摂ることができる、とても“積極的なサラダ”といえます。
厚労省が推奨する一日の野菜摂取量は350gですが、目標値に達しているのは3人に1人程度。年代別では20代が最も野菜不足の人が多いという結果が出ています(国民健康・栄養調査)。最近では、カロリーはしっかり足りているのに、摂るべき栄養素が不足して身体に不調をきたす“新型栄養失調”になる人が増加しています。これは、たんぱく質、ビタミン、ミネラルの不足が原因です。
栄養のバランスを考えて食事を作るとなると何品も作らなくてはいけなくて大変ですが、パワーサラダなら、作るのも食べるのも、たった一皿で十分。普通のサラダではカバーできなかった栄養素を、ローカロリーでしっかり補うことができるのが、このサラダの強みです。
パワーサラダ関連の需要は、働く女性を中心に高まっています。
レストランやカフェにパワーサラダメニューを提案している[キューピー]は、専用ドレッシングとして「フルーツビネガー」(アップルとグレープフルーツの2種)を販売。今後は、家庭向け専用ドレッシングの投入も計画中。
パワーサラダ専門店の出店も目立ちます。
今春オープンした[TRIPLE R(トリプルアール)](東京)は、運動した後の心と体をメンテナンスする場所として話題に。例えば、ズッキーニ、カブ、トマトなどをその場で細かく刻み、雑穀と混ぜ合わせたベースサラダに、チキンや卵などを加えてオリジナルのカスタムサラダを作ることができます。
2014年に開業した[クリスプ・サラダワークス](東京)では、客がチョイスした具材を“メッザルーナ”と呼ばれる半月状の包丁で細かく切り刻むチョップドサラダスタイルが人気。
[フジオフードシステム](大阪)は今秋、シンガポールのサラダ専門店「サラダストップ」の1号店を東京にオープンしました。
※参考:
厚生労働省 http://www.mhlw.go.jp/
キューピー https://www.kewpie.co.jp/
TRIPLE R http://afd3r.com/
クリスプ・サラダワークス http://www.crisp.co.jp/
フジオフードシステム http://www.fujiofood.com/
日経MJ(2016年9月9日付)
ミキサーでもない、ブレンダーでもない、「スロージューサー」が最近にわかに話題となり、家庭用ジューサーの主流になろうとしています。
一般的なジューサーは、1分間に約1万〜2万回という高速で刃を回転させて食材を砕いて汁を搾る“遠心分離式”の高速型。遠心分離によって繊維(搾りカス)と水分(果汁)に分けるため、回転時に発生する摩擦熱と空気混入による酸化を招いてビタミンやミネラルなどの栄養素が損失しやすいという弱点が。
これに対しスロージューサーは、1分間に数十回転という低速型の“石臼式圧縮搾り式”。石臼で押しつぶすようにじっくり搾るため、熱の発生や空気の混入も少なく、食材の栄養素が壊れにくいというメリットがあります。
火付け役は、[シャープ]でした。2012年の初代から数えて3代目、最新機器の「ヘルシオ ジュースプレッソ(EJ-GP1)」は、1分間に32回転。今まで搾りにくかった“葉もの”も、細かく刻まずに搾って純度100%の青汁が作れる改良型。
[パナソニック]も2015年、初のスロージューサー「ビタミンサーバー(MJ-L500)」で参入。毎分45回転。スクリュー底部をステンレスにして、硬い食材に対応します。
世界累計販売台数が770万台を突破した韓国のスロージューサーメーカー[ヒューロム]は、「ヒューロムスロージューサー(H-AA)」を今春、発売。ダブルスクリューの採用で、食材を両手で搾りきるような仕組みのため、搾りカスが少なく、かつ作動音が小さいのが特長。日本市場テコ入れのため、2017年に都市圏でジュースカフェを展開する計画。
スロージューサーの国内市場は、2012年の約6万5,000台から15年には20万台と、これまで主流だった“高速タイプ”を逆転、今年16年は23万台が見込まれています。ジューサー全体の市場は年々減少傾向にあるものの、平均単価(2万円〜4万円前後)が高めのスロージューサーの普及によって、販売額規模では2倍以上に伸びています。ちなみに、米国、韓国、中国の各年間出荷台数は100万台というケタ違いの規模。そのスケールと比べると、国内市場はまだたっぷり伸びしろがあるといえます。なにしろ、高齢化社会に対応した商品コンセプトを持つスロージューサーには、健康志向がとりわけ強い、シニア層という巨大マーケットが待ち受けているのですから。
※参考:
シャープ http://www.sharp.co.jp/
パナソニック http://panasonic.co.jp/
ヒューロム http://huromjapan.com/
日本経済新聞(2016年8月27日付)
日経産業新聞(2016年8月29日付)
普段の生活にスポーツが溶け込んだ、「アスレジャー」と呼ばれる新たなライフスタイルの輪が広がっています。「アスレチック=運動」と「レジャー=余暇」を組み合わせた造語で、まずはスポーツウエアやトレーニングウエアを普段着として街なかや職場でも着る、女性のファッショントレンドとして浸透しました。発端は、米国のヨガブランドが2000年初めに発表したトレーニングウエアで、それが徐々に健康や運動に関心の高い女性の間で評判となり、さらに有名歌手や女優といったセレブがオシャレ着として取り入れたことがSNSで拡散するや、ファッション感度の高い人々からも注目され、昨年、一気に火が付きました。
ヨガパンツ、レギンス、タンクトップ、パーカー、ジョガーパンツなどが主なアイテムで、一番の魅力は、動きやすさと身体を締めつけない楽チンな着心地。
ブランドとしては、メジャーなスポーツメーカーをはじめ、一般のアパレルメーカーや下着メーカーまでも参戦。日本でも、[JUN]が[ナイキ]と組んでアスレジャー専門店「ナージー」を、昨年、渋谷に出店。
[ユニクロ]は今年から、レギンスやヨガパンツなどのアスレジャー関連商品を「ユニクロスポーツ」として展開。[しまむら]は、アスレジャーのPB「クロッシースポーツ」を今年から本格展開しています。
実際にスポーツをしたり観戦したりする人はもちろん、スポーツをやらない“ファッション・アスリート”の人たちまで巻き込んで、“衣・食・住・美”のあらゆる生活シーンで需要を刺激するのがアスレジャーの特徴です。そこには、新たなビジネスチャンスが埋まっています。
例えば、高たんぱく低脂質のランチメニューを提供するパワーカフェ。自宅の和室をリフォームしてトレーニングルームに、というオーダーに応える中古住宅メーカー。ランニングイベントの女性参加者へ向け、汗をかいても崩れにくいメーク講座を協賛する大手化粧品メーカー。ここ5年間で1.7倍に伸びたプロテイン飲料市場、等々。
米国では、かつてのカジュアルウエアの王様、ジーンズの落ち込みが激しく、“レギンスは新たなデニムだ”との声が聞かれるほど。2020年には、米国のアスレジャー市場が1,000億ドル(10兆円)に膨らむと予測されています。日本でも、東京五輪へ向けたスポーツ熱の高まりを背景に、“ファッション・アスリート”たちを主役とした消費の裾野はまだまだ広がりそうです。
※参考:
JUN http://www.jun.co.jp/
ユニクロ http://www.uniqlo.com/
しまむら http://www.shimamura.gr.jp/
日本生産性本部『レジャー白書2016』 http://www.jpc-net.jp/
日経MJ(2016年8月17日付/同8月19日付/同9月16日付)