油はカラダに良くない、ダイエットの敵、というのはひと昔前の話。最近は、機能性食品ブームを追い風に、美容や健康のために良質の油を摂る人が増えています。なかでも注目を集めているのが、「アマニ油」「えごま油」「ココナッツオイル」の新・食用オイルトリオ。
特に、いま話題の“オメガ3系脂肪酸(α-リノレン酸)”を多く含んでいるのが「アマニ油」や「えごま油」です。この脂肪酸は、体内でDHAやEPA(青魚などに豊富に含まれる)に変わり、血液中の中性脂肪を下げ、高血圧や動脈硬化などの生活習慣病の予防、種々のアレルギー症状の緩和、美肌・アンチエイジングなどに効果的とされています。熱に弱く、加熱すると酸化しやすいため、生のままで使うのが一般的。どちらも味と香りに若干のクセがあり、そのまま飲むと生臭さを感じる人もいますが、ドレッシング感覚で料理に使用すると、ほぼわからなくなる程度です。
[日清オイリオグループ]は、アマニ油を30%配合した「健康オイル アマニプラス」を、食用油初の“機能性表示食品”として発売しました。また、[日本製粉]からは、業界初となる、ソースにアマニ油を加えた「オーマイPLUS アマニ油入り」の冷凍パスタを発売。[イオン]もPB商品として、アマニ油とえごま油を発売しました。
タレントやモデルが愛用しているという情報で火が付いたのが「ココナッツオイル」。主成分の“中鎖脂肪酸”は脂肪の燃焼を促進するため、ダイエット効果と老化防止効果、認知症の予防改善などが期待できると話題となりました。熱に強く酸化しにくいので、炒め物やお菓子作りでバター代わりに。顔や手、髪の保湿など、美容オイルとしても使えます。
[明治]は今春、トーストやパンケーキに塗る、ココナッツオイル仕立ての「ココ・ミックスソフト」を発売しました。[紀文]は、「風味とうふ」シリーズに、ココナッツオイルとチアシードを入れた「おいしさぎゅぎゅっとココナッツ」を発売するなど、食用油メーカー以外もニューオイルに商機ありと見て、続々と参入しています。
昨年始めごろから急拡大した食用オイル市場をけん引する、アマニ・えごま・ココナッツ。3種合わせた2015年売り上げは、前年度の約3倍に。外食で贅沢するより、毎日の食卓にちょっと高価でもカラダにいいものを、という消費者側の意識の変化が市場を押し上げているようです。
※参考:
日本植物油協会 http://www.oil.or.jp/
日本アマニ協会 http://www.flaxassociation.jp/
日清オイリオグループ http://www.nisshin-oillio.com/
日本製粉 http://www.nippn/co/jp/
イオン https://www.topvalu.net/
明治 http://www.meiji.co.jp/
紀文食品 http://www.kibun.co.jp/
日経МJ(2016年5月20日付)
なかなか食事にありつけないオフィス街の“昼食難民”を救おうと、ランチビジネスはこれまで多様な変遷を続けてきましたが、最近、その主戦場は“会社の中”へと移ったようです。
昼時になると、社内の共有スペースを即席の“社食”に変身させてしまうのは、[スターフェスティバル](東京)が手掛けるサービス、「シャショクル」。約4000種類の弁当メニューの中から契約した企業の担当者と相談の上、500〜600円の価格帯で毎日10数種類を日替わりで届けます。導入費や運営費は無料。現在、主要都市中心に約200社の企業に展開中。
もう一つの“昼食難民”救済サービスとして広がりを見せているのが、チルド(冷蔵)弁当を社内にストックして食べた分だけ料金を支払う“置き弁”サービスです。
管理栄養士が監修し、一食500kcal以下、塩分2.0g以下に抑えたヘルシーな弁当をオフィスに提供しているのは、京都の[スマイリー]。導入費用として3万円、月額利用料は無料。専用の冷蔵庫を設置するだけで、一食650円の弁当(和・洋・中の3種類が週替わり)が毎週火曜日に15食配送されます。提供エリアは、東京、大阪、横浜。
“置き弁”には、食品メーカーも参戦。ストック型ランチ商品を開発して“昼食難民”にアピールしているのは、[フジッコ]のチルドレンジ惣菜「ベスタデリ」シリーズ(全5種類)。グラタンやラザニア、カレーなど、400kcal以下で本格シェフの味がオフィスでいつでも食べることができます。
既存勢力のコンビニ各社もさらなるランチ対策に乗り出しています。契約した会社内に“自販機コンビニ”を設置する[ファミリーマート]の「オフィスファミマ」もその一つ。飲料以外のコンビニ商品(50種類)がラインアップされ、おにぎりやサンドイッチは毎日入れ替えられます。現在、約1700台設置、3年後には3000台が目標。
いずれのサービスも、予想を上回る手ごたえで、社食がある企業からも問い合わせや導入要請が少なくないといいます。このところのランチ市場の活況の背景には、限られた貴重なランチタイムを食事以外の自分の好きなことにも使いたいという、いわゆる“昼活ブーム”の広がりも見逃せません。社食の立ち上げ、運営には莫大なコストがかかるため減少傾向にある昨今、オフィスランチ市場の伸びしろはまだまだありそうです。
※参考:
日本フードサービス協会 http://www.jfnet.or.jp/
スターフェスティバル https://stafes.co.jp/
スマイリー http://okiben.com/
フジッコ http://www.fujicco.co.jp/
ファミリーマート http://www.family.co.jp/
日経МJ(2016年5月11日付)
「人工知能=AI(Artificial Intelligence)」とは、学習・認識・推論・判断などの人間の知能を持たせたコンピューターシステムのことです。
初めてこの言葉が登場した1956〜60年代が“第一次AIブーム”。次いで、80年代に第二次のブームを経て、現在は“第三次AIブーム”期といわれています。その特徴は、AI自らが学習能力を深めていく“深層学習”(ディープラーニング)と呼ばれる新技術を身に付けたことです。
AIを使った商品やサービスは、様々なカタチとなって私たちの日常生活に溶け込んできており、その浸透範囲と速度は年々増しています。
最も身近な例としては、人間と対話できるヒト型ロボット。ソフトバンクの「ペッパー」、ソニーの「AIBO」、ホンダの「アシモ」などが有名で、すでに銀行や家電量販店、駅、スーパーなどで“接客スタッフ”として実社会にデビューしています。
将来的にAI活用の最大市場といわれているのは運輸関連。メインの“自動運転技術”は物流の効率化はもとより、タクシー、バスといった公共交通機関への普及が見込まれています。
金融関連では、過去の株価動向データの分析から値動きを予測し、瞬時に売買のタイミングを判断するというサービスなど。
医療関連では、レントゲンや内視鏡画像で病変を的確に見つけ、治療法を助言するといった診断補助に。
クリエーティブの分野にもAIの台頭が始まっています。歌詞を入力し、曲のイメージやリズムを選ぶだけで自動的にAIが作曲。また、30万点のイラストを学習したAIが、お望みのイラストを約1秒で描き上げます。当然、小説の世界にも“AI作家”が登場。1000点以上の作品を解析して小説の自動生成を目指し、ショートショートの新人賞に作品を応募。一次審査は通ったものの受賞には至りませんでした。
2015年に約3兆7000億円だった国内のAI市場は、2020年には約23兆円に、30年には約87兆円へと急速に拡大が予想されています。一方、今年の「世界経済フォーラム」(ダボス会議)では、AIの台頭で主要15カ国の失業者数が今後5年間で510万人増えると予測。また別のデータでは、10〜20年後には日本国内労働人口の約50%がAIに代替されるとの推計もあります。つまり約半数の働き手の仕事がAIに奪われてしまうということです。これまで、人間は人間と争ってきましたが、これからはAIが競争相手ということになるのでしょうか。
※参考:
毎日新聞(2016年1月21日付//同4月6日付/同4月22日付/同4月28日付)
日経МJ(2016年2月19日付/同4月29日付)
日経産業新聞(2015年12月17日付/2016年1月28日付/同6月7日付)