かつては2兆5,000億円という巨大市場だった出版市場(書籍・雑誌合計)も、2009年に2兆円を割り込むと、2012年には約1兆7,240億円にまで縮小。そんな“紙”世界の凋落を横目に、めきめきと頭角を現してきたのが“電子書籍”です。その中でも、出版社や編集者を通さない、いわゆる“中抜き”で自分の書いたものを“電子書籍”で出版・販売する「個人出版(セルフ・パブリッシング)」が俄かに脚光を浴びています。
「個人出版」サービスの代表格は、[アマゾン]が2012年から手掛けている「キンドル・ダイレクト・パブリッシング(KDP)」。キンドル用電子書籍サイト「キンドルストア」で自費出版ならぬ、“自己”出版するためのサービスです。出版までの手続きは、まず「KDP」にアカウント登録した後、出版したい原稿のテキストデータをキンドルのファイルフォーマットに変換。そのファイルを「KDP」にアップロードして[アマゾン]の審査に通過すれば、48時間以内にネット最大のブックマーケットに“陳列”され、世界中に販売されるということになります。手続きに要する時間は、約5分。費用は一切かかりません。ボリュームや価格の設定(百円単位が一般的)も自由です。売れると、[アマゾン]から著者に印税が支払われます。通常は、販売価格の35%。特別の条件を満たせば最大70%という高さで、紙媒体の印税率が一般的に10%であるのと比べると破格の見返りといえます。
一方、新人漫画家の“電子書籍”デビューを後押ししているのは、[セプテーニ・ホールディングス]の子会社[コミックスマート]。「Route M(ルートエム)」という、新人漫画家支援プログラムを設け、5段階に分けたステージに応じて、1カ月50万円〜10万円の支援金が支給される他、漫画制作に必要な画材を無料で使用できる“制作スタジオ”の利用や専属アシスタントによる制作補助(上級ステージ限定)、編集担当者によるアドバイスなどのサポートシステムを用意。作品は、同社の連載型新作漫画配信サービスアプリ「GANMA(ガンマ)」上に配信されます。毎週木曜日に更新され、閲覧はすべて無料。
紙の本の形態から解き放たれた“電子書籍”による「個人出版」熱。作家志望者に、チャンスと可能性を示してくれたことは間違いなさそうで、意外にも、若い人より団塊世代の人たちが飛びつきそうなツールなのかもしれません。
※参考:
キンドル
https://kdp.amazon.co.jp/
セプテーニ・ホールディングス
http://www.septeni-holdings.co.jp/
朝日新聞(2013年11月20日付)
日経産業新聞(2014年1月17日付)
少子化による“お菓子市場”の頭打ちが続くなか、「チョコレート菓子」に限っては消費量が拡大傾向にあるようです。その背景として、普段はあまり「チョコ菓子」を口にしないとされていた男性やシニア層の需要が急伸していることが挙げられます。メーカー側も、これまでの10〜30歳代の子供や若い女性が中心だったターゲットを40〜50歳代に引き上げ、“大人向け”をうたったリッチな「チョコ菓子」を相次いで投入しています。
商品の傾向としては、新たなブランドを立ち上げるのではなく、定番としてすでにお馴染みの「チョコ菓子」を大人向けにアレンジしたものが主流で、いわゆるロングセラー商品の大人化ともいうべき現象が見られます。
[ロッテ]は昨秋、「大人の雪見だいふく」シリーズとして、「濃い抹茶」と「生チョコレート」(共に399円)を同時発売。また今年2月には、「トッポ」シリーズから、「焦がしキャラメルとチョコレートのケーキ仕立て」と「紅ほっぺ苺のパンケーキ仕立て」(共に198円前後)、2種類の“大人のトッポ”が春季限定で発売されました。通常のトッポよりも太くて長いサクサク食感のプレッツェルに、上質なチョコレートをたっぷりと入れたデザート感覚の大人の味。
[明治]のロングセラー商品にも昨秋、大人バージョンが登場しました。「大人のきのこの山」と「大人のたけのこの里」です(共に210円)。チョコ部分には、厳選したドミニカ産とエクアドル産のカカオ豆を配合し、甘さを抑えたカカオ本来のうま味を高めました。この上質感がシニア層にウケ、昨年、同社のベストセラー商品となりました。
[不二家]からもロングセラーブランドの「ルック」に昨秋、「大人のルック 濃い苺」が、そして今年2月には「大人のルック 濃い抹茶」(共に210円)が発売されました。
[グリコ]は、[セブン-イレブン]と共同開発した「ポッキー<グランショコラ>」(298円)を、2月に全国の[セブン-イレブン]で限定発売。濃厚なチョコのおいしさを楽しむ、ちょっと贅沢な“ご褒美ポッキー”です。
贅沢感のアピールをコンセプトに、各社とも、大人狙いの「チョコレート菓子」の闘いはいっそう激しさを増していきそうです。 ※価格はすべて「税込み」です。
※参考:
ロッテ http://www.lotte.co.jp/
明治 http://www.meiji.co.jp/
不二家 http://www.fujiya-peko.co.jp/
江崎グリコ http://www.glico.co.jp/
日経産業新聞(2014年1月17日付)
コンビニ、スーパー、ファミレス、ファストフードなど様々な業態で、通常品よりちょっと高めに価格設定された“ちょい高”商品が好調です。
[セブン-イレブン]では、味・製法・価格にこだわってワンランク上のおいしさを目指した高級PB(プライベートブランド)「贅沢な味わい セブンゴールド」シリーズを昨春、立ち上げました。その中の一つ、「金の食パン」が爆発的なヒットを記録。最上級のカナダ産小麦粉に北海道産生クリーム、カナダ産はちみつ、赤穂の天塩などを加え、手こねでもっちりした弾力ある食感に焼き上げた逸品です。1斤250円と、大手メーカー品より90円ほど割高にもかかわらず、まさに飛ぶように売れ続け、2週間で1億円を売り上げました。それを見た大手メーカーが対抗商品を発売。従来はPB商品が大手メーカーのNB(ナショナルブランド)商品を後追いするのが常ですが、「金の食パン」ではその逆の現象となり、“流通の常識を変えた”とまで言われて話題になりました。同シリーズには、全17品目がラインアップ。今後3年で300品目に増やす計画です。
[ファミリーマート]の高級PBシリーズは、「ファミマプレミアム」。弁当類や惣菜が中心で、「牛肉の煮込みソースパスタ」「生パスタずわい蟹と海老クリームソース」「イベリコ豚のお好み焼」(各530円)、「おむすび魚沼産コシヒカリあわび海苔佃煮」(258円)など。
[イオン]のPB「トップバリュ」は、高品質・高価格帯ブランドとして「セレクト」シリーズを展開中。
ファミレスでも、“ちょい高”傾向が見られます。
[ロイヤルホスト]では、高級牛肉を使った「熟成アンガスリブロースステーキ」が大ヒット。2,000円超と、ファミレスとしてはかなり高めだったにもかかわらず、看板メニューのハンバーグを上回る売り上げを達成しました。
[デニーズ]も、独自開発した“オリービーポーク”を使い、従来メニューよりやや高めの価格で展開。
低価格を競ってきた牛丼大手も、“ちょい高”商品を相次ぎ投入しています。[吉野家]の「牛カルビ丼」「ねぎ塩ロース豚丼」は、通常の牛丼より200円高い480円。[松屋]では500円の「唐揚げ丼」を。それぞれ、通常の丼メニューでは過去最高の価格設定となります。
高級化志向が高まってきたとはいえ、まだまだ低価格の“お値打ち品”需要は健在です。しかし、アベノミクス効果もあってか、品質が良ければ少々高くても、という消費者のマインドは確実にふくらんできています。一人の消費者の中に、普段の節約と、「たまリッチ」(たまにはリッチに)感覚が同居する、二極化が進んでいる表れといえそうです。
※参考:
セブン&アイ・ホールディングス
http://www.sej.co.jp/
ファミリーマート
http://www.family.co.jp/
イオン
http://www.topvalu.net/
ロイヤルホスト
http://www.royalhost.jp/
デニーズ
http://www.dennys.jp/
吉野家ホールディングス
http://www.yoshinoya-holdings.com/
松屋フーズ
http://www.matsuyafoods.co.jp/
朝日新聞(2013年7月13日付)
日経МJ(2014年1月13日付)