Double Income No Kids=DINKS、1980年代後半に登場した“子供のいない共働き夫婦”、もう少し正確に言うなら、子供に煩わされるより夫婦2人だけで恋人のように暮らしたいと願うライフスタイルのこと。当時の背景としては、86年に男女雇用機会均等法が施行され、しかも時はバブル全盛期。DINKSは、マスコミなどで、新しい価値観を実践するオシャレな“新人類”の象徴的存在としてもてはやされました。
四半世紀以上を経た現在の「新DINKS」たちの世帯数は約363万。かつての約1.7倍に膨れ上がっており、その実態は、時代の変容につれ様変わりしています。
旧DINKSと最も大きく異なる点は“財布”が別々だということ。当時は、2人の収入を合算して1つの財布でやりくりするというのが主流でした。新DINKSは、ダブルインカムが、そのままダブルウォレット(財布)となり、生活費(家賃、光熱費、食費など)の分担だけ決めて残りはそれぞれ自分のお金として自由に使います。旅行や引っ越しといったイベントの時以外はお金の話をすることはなく、相手の収入も知らず、貯蓄も別々のケースも多いとか。行動パターンも、夫婦一緒に楽しむというのが旧DINKSの象徴だったのに対し、新DINKSは一変。夫や妻が休日に1人で友人と遊びに行ったり、異性の友達と食事や飲み会に行ったり、友人同士で旅行に行くことにも抵抗はありません。日用品も徹底してパーソナル仕様。歯磨き粉やシャンプー、ボディーソープなどからシャワーヘッドや椅子まで、それぞれお気に入りのこだわり品を用意。一家単位で同じ物を使うことが当たり前だった旧DINKSとは明らかに異なります。かといって、それほどバラバラなら、すわ“家庭内離婚”か!というと、さにあらず。むしろ逆で、誰よりも仲の良い最高のルームメート、ベストパートナーとして互いを認め合い、開放的な自由さが結びつきを強めてさえいるのです。
結婚による束縛や我慢を最小限に、2人の“おひとりさま”が一つ屋根の下に同居している形の新DINKS像。20年後には、夫婦のみの世帯が総世帯の20%以上を占めると拡大傾向が予想されています(国立社会保障・人口問題研究所)。経済的にも“おひとりさま消費”を楽しむことのできる新DINKS。ここに、新しい商機をはらんだ魅力的な市場が埋まっていそうです。
※参考:
国立社会保障・人口問題研究所 http://www.ipss.go.jp/
日経МJ(2015年10月28日付)
“超高齢化社会”を迎えた日本では、2025年には3人に1人が65歳以上の高齢者になると予測されています。
そんな状況に伴い、国は、要介護度の高い高齢者でも病院などの施設から在宅介護への切り替えを推進。介護の場が自宅へと移ったのを機に、「在宅介護食」のニーズが一段と高まっています。
[明治]の小さなカップタイプの流動食「メイバランスMiniカップ」は、たんぱく質、食物繊維、ビタミン、ミネラルなど、体に大切な栄養素を一度に摂ることができると好評。
[味の素]も、流動食の商品を各種ラインアップしている他、介護食作り応援サイトを開設。管理栄養士による、身近にある食材で楽しく無理せず作れるレシピや、男性にも素早く作れる簡単レシピを医師が紹介するなど、実用的な内容でサポート。
[ニュートリー](三重県)は、飲み込む機能が衰えた人向けの“嚥下(えんげ)食”のために、こだわりの「ご当地嚥下食ワールド」のサイトを立ち上げました。奈良の“柿の葉寿司”、山梨の“ほうとう”など全国のご当地料理25種を、見た目も味も本物そっくりの嚥下食に整えるまでをレクチャーするというもの。自宅で嚥下食作りのためのとろみ材「ソフティア」の販売やセミナーを積極的に催しています。
アサヒグループホールディングス傘下の[和光堂]は、在宅介護向けの“おやつ”を開発。昨秋から販売している「しっとりやわらか食感 和風クッキー」シリーズで、一般的なクッキーの約3倍のたんぱく質を含ませて、不足しがちな栄養素をおいしく補います。
要介護認定者数は、この10年間で1.5倍に増えています(厚生労働省「介護保険事業状況報告」)。この現実はまた、食品メーカーにとって、「在宅介護食」市場が年々拡大を約束された成長マーケットであるとの期待面も併せ持ちます。
現在の介護食市場が約1,000億円の規模であるのに対し、将来的な介護食ニーズの規模は2兆5,000億円に達すると試算されています。つまり、実際の供給量と潜在的な需要量との間に、大きなギャップが生じているということが言えます。このかい離を埋めるための様々な課題-----例えば、介護食のメニューバリエーションの増加、メーカーごとにバラバラな商品規格の整理、通販中心からスーパーやドラッグストアなどへの販売チャネルの拡大、割高感の払拭といった、介護する側・される側、双方からの切実な願いを確実にクリアしていくことが求められています。
※参考:
明治 http://www.meiji.co.jp/
味の素 http://www.ajinomoto.co.jp/
ニュートリー http://www.nutri.co.jp/
和光堂 http://www.wakodo.co.jp/
厚生労働省 http://www.mhlw.go.jp/
農林水産省 http://www.maff.go.jp/
日経МJ(2015年10月30日付/同11月27日付)
自宅に乾燥機能付きの高性能洗濯機を備えているにもかかわらず、コインランドリーを日常的に利用する人が増えています。また、コインランドリーそのものも 全国規模で増え続けています(厚労省)。最近では、スタッフを常駐させたり、女性専用店やキッズスペースを設ける店も出現。かつての、“暗い・汚い・怖い”という負の3Kイメージを払拭して、“早い・安い・きれい”という新たなイメージ付けに懸命です。
利用者層も、かつての大半を占めていた学生や単身赴任者などから、昨今は主婦や共働き世帯、シニアの利用率が高まってきています。集合住宅での夜間の洗濯機騒音問題やタワーマンションのため洗濯物の外干し禁止、花粉・ダニ対策といった諸事情の他に、主婦層をコインランドリーへ向かわせる最大の要因となったのは、節約志向の高まりです。衣替え時期に出る家族分の大量の洗濯物をクリーニング店に出すと、かなりの金額になってしまいます。例えば、羽毛布団やダウンジャケットの場合、コインランドリーはクリーニング店のおよそ半分の料金で済みます。おまけに、クリーニング店なら1〜2週間かかるのに対し、コインランドリーは洗濯から乾燥までその日のうちに仕上がります。
近ごろは、コインランドリーもIT化。スマホや携帯で店内の空き状況が確認でき、洗濯終了をメールで知らせてくれる「ITランドリー」が増加。またプリペイドカードや、利用するたびにポイントが貯まるICカードの導入など、“コイン”ランドリーなのに、もはやコイン要らずの“カード”ランドリーになりつつあるようです。
大量の洗い物が一度で済む、洗濯ついでにお買い物を、乾燥機を回している間に食事を-----家計の節約のみならず、時間と手間の節約にも貢献しているコインランドリーは、待ち時間の“ながら消費”を促進する企業にとって有能な“集客装置”になり得ます。その集客力に目を付け、スーパーやホームセンターをはじめ、飲食店、コンビニ、ガソリンスタンド、パチンコ店、カフェ、理髪店などと併設する店舗が急増しています。極め付きは、なんとライバルのはずだったクリーニング店とコラボしたコインランドリー店の出現。この、一見ジョークのようなハイブリッド現象も、洗濯業界の新しいムーブメントに違いありません。
※参考:
厚生労働省 http://www.mhlw.go.jp/