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2015.04.01更新
 

ライセンス契約の打ち切り。屋台骨を失ったとき、企業は?
 

昨春、英国の高級ブランド[バーバリー社]と[三陽商会]のライセンス契約が、今年6月で打ち切られるというショッキングなニュースがアパレル業界をかけ巡りました。1970年に契約を結んで45年間。[三陽]にとっては、売上高の半分以上を占める大黒柱ブランドでした。

海外ブランドの「ライセンスビジネス」とは、海外の有名ブランドを日本の企業が契約して借り受け、商品を開発・販売する仕組みを指します。

借りる側にとっては、本家ブランド側のチェックが入るとはいえ、ライセンス使用料(売上高の10%程度のロイヤルティ)を払うだけで自社企画の商品に有名ブランドの名を冠して高値で販売できる“おいしい契約”として重宝されてきた一面もあります。貸すブランド側にもメリットはあります。最大の利点は“流通”です。海外のメーカーにとって、日本で一から自前の流通網を築くには時間と労力を要します。ライセンス契約を結ぶことで、着実に販路が確保でき、大幅な投資コストの削減につながります。

しかし、[バーバリー]の例に限らずブランド側は、日本で一定のブランド力が確立されたと見るや、ライセンス供与のメリットは薄れ、10%程度のライセンス料収入では旨みがないと判断して見切りをつけ、自前で日本でのビジネスを本格化しようと考えるようになります。90年代に入ると日本のアパレルとのライセンス契約を解消し、独自に直接日本での運営に舵を切る海外ブランドが増えてきます。

最たる例は、1998年に[アディダス](独)が、28年続いた[デサント]との契約を一方的に打ち切った“アディダスショック”。その影響で[デサント]は3期連続赤字を強いられましたが、その後、アジアに市場転換して見事業績を回復させました。

2004年にはスーツケースの[サムソナイト](米)が[エース]と、2005年に[アニエスベー](仏)が[サザビーリーグ]と、2007年に[ポロ・ラルフローレン](米)が[オンワード樫山]と、それぞれ契約解消に至っています。新しい事例では、今年3月、[ゴディバ](ベルギー)が、43年続いた[片岡物産]との契約を終えました。

商社が海外ブランドを買収するなど、対抗する動きも目立っている昨今。もはや、海外ブランド頼みの成長モデルが通用しない時代になっているのかもしれません。ライセンス契約をめぐる一連の騒動は、日本のブランドビジネスが抱える構造問題をあらためて浮き彫りにしたようです。

※参考:
三陽商会      http://www.sanyo-shokai.co.jp/
朝日新聞(2014年6月10日付/同2015年1月12日付)
日経МJ(2015年1月23日付)


満足できなければ返金します。強気の販促、「満足保証」、続々登場。
 
お買い上げの品に満足いただけなければ、購入金額をお返しします-----こういった「満足保証」と呼ばれるサービスが、最近広がりを見せています。元来は、ネットショップなど通販業界を中心に導入されていた販促手法でしたが、ここにきて一般の店やメーカーにも及んできました。

昨春、[西友]が導入した「生鮮食品100%返金保証」が話題を集めました。肉や魚介類、野菜・果物など、2,000品目以上を対象に、全国374店舗で実施。鮮度や品質はもちろん、見た目が悪い、おいしくなかったなどといった主観的な不満でも、レシートをサービスカウンターへ持参すれば返金に応じてくれるというもの。食べてしまった後でもOKという、まさに無条件の返金サービスです。

そこまでやって大丈夫? 悪用されないだろうか?と、不安視する声もありましたが、親会社である[ウォルマート](米)は、本国をはじめ、カナダや英国などで同様の取り組みを実施してすでに検証済み。返金要求の件数も予想を下回り、売り上げアップにつながっているとのこと。

[ソニー]は、スマホ用ヘッドホンを対象に“音に満足できなければ、代金はお返しします”と「音質保証キャンペーン」を実施(2011年7〜8月)。[P&G]は、ジレットのカミソリ「マッハシン3シリーズ」で「満足保証返金キャンペーン」を実施(2014年8月〜2015年6月)。[グリコ]は、チョコレート菓子「ビッテ」を対象に、コーヒーに合わないと感じたら返金するキャンペーンを実施(2014年9〜10月)。変わったところでは、プロ野球の[横浜DeNAベイスターズ]が2013年に「全額返金!?アツいぜ!チケット」という、負けたらチケット代を返金する企画を実施。また、外食産業では珍しい試みといわれた[ロッテリア]は、ハンバーガーで「おいしいと感じなかったら返金キャンペーン」を実施(2009年と2014年)。返金率は約0.2%と、想定よりかなり低い結果が出ています。

「満足保証」の手法は、マーケティングでは“リスク・リバーサル”と呼ばれています。企業がこの手法を導入する理由は、顧客の購入に対するハードルを低くすることにあります。この商品は本当に満足のいくものか?
金額に見合った価値があるのか?といった消費者のためらいや躊躇を、購入してからでも返金(または返品)されますよと、心の壁を取り払ってあげるのが“リスク・リバーサル”の役割。買い手のリスクを、売り手が引き受けることです。

これまでの“割引”や“サンプリング”といった古典的な販促手法が、もはや消費者には飽きられてきており、新規顧客取り込みの次なる“一手”といえます。

※参考:
西友      http://www.seiyu.co.jp/
ソニー     http://www.sony.jp/
P&G      http://jp.pg.com/
グリコ      http://www.glico.co.jp/
ロッテリア   http://www.lotteria.jp/
朝日新聞(2014年11月19日付)


米国が、「和食ブランド」研鑚の地として選ばれる理由。
 

2年前に「和食」がユネスコの無形文化遺産に登録が決定。海外攻略を計画する日本の食業界にとっては力強い追い風となったにちがいありません。農林水産省も世界の料理界へ向け、日本食材の活用推進(made FROM Japan)、日本の食文化の海外展開推進(made BY Japan)、日本の農林水産物や食品の輸出促進(made IN Japan)の、いわゆる“FBI戦略”を掲げ、官民挙げて日本食拡大の動きを加速させています。その成果か、2006年に約2万4,000店だった海外の和食レストランも、2013年には約5万5,000店と倍増。

日本の外食企業や食品メーカーが進出先として最も重視する国は、意外なことに、地理的に近く10億人もの巨大マーケットを抱える中国でも、6億人規模のASEAN(東南アジア諸国連合)エリアでもありません。それは、多種多様な民族が複雑に絡み合って新たな食文化を生み出している国家、米国でした。人口約3億人の米国市場での成功こそが、世界70億人市場へ挑む足掛かりと捉えます。米国で揉まれ、ブランド力を磨いて、はじめて世界の舞台に通用するパスポートを手に入れることができると考えます。日本の食業界にとって米国は、意味のある“特別な場所”なのです。

2002年から緑茶飲料の米国販売を始めた[伊藤園]も、米国を“踏み台”に世界市場を目指すブランドの一つです。肥満が社会問題化している米国では、大都市を中心に年々ヘルシーな日本茶への興味が高まっています。特に、無糖の「Oi Ocha(おーいお茶)」が人気で、シリコンバレーのIT企業(グーグルやエバーノート、フェイスブックなど)では、社員の定番ドリンクになっているほど。

2012年、ニューヨーカーに「TEISHOKU(定食)」文化の定着を目指してマンハッタンに乗り込んだのは[大戸屋]。ジャズが流れる70席ほどの和風モダンな店内。ランチの定食は、基本的に内容も味付けも日本のメニューと同じ。例えば、「熟成豚ロースのおろしとんかつ」に、ご飯・味噌汁・おしんこ・茶碗蒸しがセットで20ドル前後。

2009年に和菓子で米国市場に進出した[井村屋]。昨年、米国人にも受け入れられるようにと開発した「ココナツもちクリーム」(6個で5ドル)がスーパーなどで好評。現地法人[井村屋USA]の今期売上高は、前年比3割増の見通しです。

古くは、1957年から米国で「ソイソース」を浸透させた先駆者[キッコーマン]。今や、世界100カ国以上でビジネスを展開するまでに育ち、大きく羽ばたきました。

きっと今も米国のどこかで、“世界ブランド”への階段を駆け上がろうと、数々の日本食企業が、日夜、奮闘しているはずです。

※参考:
農林水産省  http://www.maff.go.jp/
伊藤園     http://www.itoen.co.jp/
大戸屋     http://www.ootoya.com/
井村屋     http://www.imuraya.co.jp/
日経МJ(2015年1月23日付)


 
 
 
 
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