キッチンやトイレ、シャワーまで備えたものになると、輸入車で1,000万円超。国産車でも600〜400万円前後はザラというキャンピングカーですが、最近、“価格が安い”“維持費が安い”“運転しやすい”と三拍子そろった、通称「軽キャンパー」と呼ばれる軽自動車ベースのキャンピングカーが注目され人気になっています。日本の道路事情にフィットした、現実的な価格・サイズのものが新車で200万円前後(車両本体価格+改造費)から手に入れることができます。
例えば[ダイハツ]の軽ワゴン「アトレー」をベースにした軽キャンパー「楽旅(らくたび)」の場合(葵機械工業製作)。長さ185cm、幅105cmの2人用ベッド(下部収納付)、食器棚、全面遮光カーテン、コンセント、防虫ネットなどを装備。[ホンダ]系の「八千代工業」は、ギャレー(キッチン)、カーテンレール&カーテン、フロント収納、スライドテーブルなどを、工具無しで簡単に取り外しできるキットを提案(年内発売予定)。
キャンピングカー購入者の約37%が団塊世代の60歳代。全世代中、トップです。2012年から本格的に始まった団塊世代の大量退職した人たちの、退職金という“臨時収入”の使いみちのトップが“旅行”と“クルマ”。キャンピングカー市場にシニアの参入が顕著になっている背景には、まさに“旅”と“クルマ”への願望、その両方を具現化したキャンピングカーという商品に収斂されているといえます。また、キャンピングカーの購入動機の約60%が、“夫婦2人で旅行するため”というのも注目すべき点です。観光地や高原の美術館、ゴルフ場、温泉めぐり、グルメなオーベルジュなど、夫婦2人、水入らずで気楽なクルマ旅を楽しむのに大型のキャンピングカーである必要はありません。道の狭い温泉街や混雑した観光地でも軽なら気軽。宿泊場所も「道の駅」や高速道路のSAやPAで。必ずしも、トイレやシャワー、キッチン機能が装備されたクルマでなくとも快適なベッド機能があれば十分です。さらにシニアユーザーのキャンピングカー旅行は、ペットの同伴率が高いことも大きな特徴になっています。
2013年、国内製作のキャンピングカー4,416台のうち、770台が「軽キャンパー」でした。その伸びは、前年比84.7%増という好実績を記録。レジャー用途に加え、生活必需品一式を積み込んで災害避難用としての存在価値も発揮する「軽キャンピングカー」。単なる一過性のブームではなく、しっかり市場に定着したといえそうです。
※参考:
一般社団法人「日本RV協会」(『キャンピングカー白書2014』)
http://www.jrva.com/
葵機械工業 http://www.aoimac.co.jp/
八千代工業 http://www.yachiyo-ind.co.jp/
朝日新聞(2014年7月10日付)
日経МJ(2014年9月19日付)
“ビール類”と呼ばれる中には、いわゆる“ビール”と“発泡酒”“第3のビール”の3種類が含まれ、それぞれ原材料や製法によって酒税額が異なります。350ml缶の場合、麦芽の割合が3分の2以上の“ビール”が77円、麦芽3分の2以下の“発泡酒”(1994年登場)が47円、そして麦芽を使用しなかったり発泡酒に蒸留酒を加えたりする“第3のビール”(2003年登場)が28円となっています(2014年10月現在)。
2014年1〜9月のビール類出荷数は、2005年以来、10年連続で過去最低を更新しましたが、そんな中、ひとり気をはいたのが“発泡酒”でした。12年ぶりに前年実績を上回ったのです。そこに至るまでの道のりは、意外なきっかけによるものでした。
健康志向の高まりを受け、各社、糖質やプリン体に配慮した“機能系ビール”に注目し、開発に着手していました。そこに登場したのが“世界初のプリン体ゼロ・糖質ゼロ”を謳った[サッポロ]の「極ZERO」でした。“第3のビール”として2013年6月に発売されるや大ヒットに。しかし2014年1月、国税庁から、製法に関して“第3のビール”ではない可能性がある、と思わぬ指摘を受けると、5月には製造を中止してしまいました。そして7月、格闘技の階級をシフトするかのように、今度は“発泡酒”として再発売に踏み切ったのです。商品名はそのままにジャンルを変えるのは前代未聞のことでした。
価格が上がる分(約20円)、売り上げの落ち込みが懸念されましたが、それに反して予想を上回る好調な売れ行きを記録。一連の“騒動”が、かえって“プリン体ゼロ”の知名度を高める結果となったようです。
それはまた他社の商魂を刺激することとなり、9月に、なんと3社同時に、プリン体・糖質、ダブルゼロの“発泡酒”を発売するという異例の事態を招きました。「淡麗プラチナダブル」(キリン)、「スーパーゼロ」(アサヒ)、「おいしいZERO」(サントリー)の新商品たちを迎え撃つ「極ZERO」----“発泡酒戦争”の火ぶたが切られました。
この事態によって息を吹き返したのが、このところ首位を奪われ独り負け状態だった王者[キリン]でした。実は[キリン]は、“発泡酒”市場で「淡麗」ブランドが16年連続で売り上げトップを走り、機能系ビールのパイオニア的存在だったのです。いわば“お家芸”のステージで、競合3社と相まみえる格好になったわけです。
尿酸値が気になる人は“プリン体”を、ダイエット中の人は“糖質”を気にしながら楽しむビール。この“発泡酒ゼロゼロ戦争”の行方はまた、“機能”と“うまさ”の戦いであるともいえます。
※参考:
サッポロビール http://www.sapporobeer.jp/
キリンビール http://www.kirin.co.jp/
アサヒビール http://www.asahibeer.co.jp/
サントリーホールディングス http://www.suntory.co.jp/
朝日新聞(2014年8月30日付)
日経МJ(2014年9月12日付)