2013年の清涼飲料市場全体を見ると、微増でほぼ横ばい状態。ペットボトル入りホット飲料や缶コーヒーも同様に、ほぼ横ばいです。しかし“停滞気味”とはいえ、市場環境が悪化しているわけではありません。飲料大手各社は、個性的商品を続々と市場に送り出しており、むしろ市場は活発さを増しているといえます。
[ダイドードリンコ]は、20種類の焙煎豆をブレンドし、さらにダブルドリップ製法で深みとコクを引き出した缶コーヒー「ダイドーブレンド 飲みごたえ微糖」を発売。
[サントリー食品インターナショナル]は、コーヒーの実を、シャンパン製造の際に使う酵母で発酵させたコーヒー豆(グランアロマ)を使用した“発酵コーヒー”「ボス グランアロマ―-香るボス―-」を発売。12年がかりで確立したというこの発酵製法により、コーヒー豆本来の香りを際立たせることに成功しました。
[アサヒ飲料]は、主力の「ワンダ」ブランドに、アルギニンなどのエナジー成分を配合した「パワーブレンドコーヒー」をエントリー。また同社では、ロングセラーブランド「三ツ矢サイダー」に、食後の血糖値の上昇を抑える、初のトクホ商品「三ツ矢サイダー プラス」を投入しました。
商品化まで約7年を費やし、トクホで初めて、脂肪の分解というメカニズムに着目して注目されているのは、[サントリー食品インターナショナル]の「伊右衛門 特茶」。
しかしなんといっても、今年の飲料市場の最大の目玉は、“ホット炭酸”の出現です。この、未開の市場へ先陣を切って乗り込んだのは、[日本コカ・コーラ]でした。世界初のホット炭酸飲料「カナダドライホットジンジャーエール」を10月に発売。炭酸ガスの量やフレーバーの配合バランスなど、試行錯誤を繰り返し、約4年がかりで開発された戦略的商品で、コンビニ、量販店、自販機を中心に販売されます。
その発表の2日後、今度は[キリンビバレッジ]から、ホット炭酸「キリンの泡 ホット芳醇アップル&ホップ」を11月に発売するとの発表がありました。こちらは女性にターゲットを絞った商品で、販路はコンビニ限定。シャンパンのような優しい泡の炭酸感を持続させる技術や独自の“なめらか泡製法”を開発して、ホットでもキメ細やかでなめらかな泡を実現するまで、3年を費やしました。
冬場、極端に落ち込む炭酸飲料市場。これまでにないジャンルの“ホット炭酸”が、新たな顧客をつかみ、需要拡大につながる起爆剤となるのか、それとも単なる物珍しさだけの“一発屋”で終わってしまうのか---2商品の出揃う、11月以降の動向が注目されます。
※参考:
ダイドードリンコ http://www.dydo.co.jp/
サントリー食品インターナショナル http://www.suntory.co.jp/
アサヒ飲料 http://www.asahiinryo.co.jp/
日本コカ・コーラ http://www.cocacola.co.jp/
キリンビバレッジ http://www.beverage.co.jp/
日経MJ(2013年9月23日付)
急成長している「食品配達サービス」ですが、これまでは大手スーパーが手がけるネットスーパーや、生協などの生鮮宅配サービスが中心でした。しかし最近では、百貨店も相次いでこのステージに参入。その背景には、65歳以上の人口が3,000万人を超え、総人口の25%、つまり4人に1人が高齢者となったという現実があります。百貨店各社は、この巨大マーケットの需要を取り込もうと、シニア層に特化した「食品配達サービス」に本腰を入れて取り組み始めました。
客層の6割近くが55歳以上という[松坂屋上野店]では、2013年10月から、14時までに購入商品の配達を頼むと、その日の16時〜18時の間に自宅に届けてくれるサービスを開始。届け先が半径2km以内で(2017年までに拡大予定)、購入額が3,000円以上、購入商品の3辺合計が150cm以内であることが条件です。配達料は、ポイントカードなどの利用者は315円、その他は420円。
[東急百貨店本店](渋谷)では、食品売場での購入商品を、当日、自宅まで届けてくれるサービス、「即配くん」を実施しています。配達エリアは、渋谷・目黒・世田谷・港の4区。料金は、3個まで525円。
[日本橋タカシマヤ]でも、食品フロアで13時までに購入した品物を、その日の18時までに配達してくれる「食料品ご自宅お届け夕方宅配便」を実施。配達料は、通常630円、クール品683円。
[西武渋谷店]の「本日お届けサービス」は、通常配達料3個まで525円。正午までに頼むと16時までに配達され、14時までに頼むと18時までに、16時までなら20時までと、一日3便のうれしいサービス。さらに9月からは、「おべんとう宅配サービス」の配達終了時刻を14時から19時半に大幅延長。1,050円以上のお弁当を、1個からでも無料で届けてくれます。徒歩15分圏内が対象エリアで、近隣に住む高齢者の夕食需要に対応すべく実現しました。
3タイプの配達便を設けているのが[ダイシン百貨店](東京)。3,000円以上お買い上げ客には「通常配達便」、2,000円以上なら「即日配達便」。さらに、購入額にかかわらず、“70歳以上・妊娠中・身体の不自由な方”を対象に、ペットボトル1本から自宅まで届けてくれる、「しあわせ配達便」を実施。3タイプとも無料で、当日中に配達されます。さらに、65歳以上の在宅高齢者を対象に、500円で日替り弁当を届けてくれる「ダイシン出前弁当」も実施。夕方に、安否確認も兼ねて配達されます。
他にも、名称は様々ですが、ほとんどの百貨店が“当日お届け便”的な配達サービスを展開しています。高級感、品質の良さ、信用、そして品揃えの豊富さ---ネットスーパーや既存の生鮮宅配とは一線を画す、百貨店ならではの「食品配達サービス」。便利さはもとより、少々高くても確かな品質が、舌の肥えたシニア層には大きな魅力となっているようです。
※参考:
松坂屋上野店 http://www.matsuzakaya.co.jp/
東急百貨店本店 http://www.tokyu-dept.co.jp/
日本橋タカシマヤ http://www.takashimaya.co.jp/
西武渋谷店 https://www2.seibu.jp/
ダイシン百貨店 http://www.daishin-jp.com/
日経MJ(2013年9月6日付)