景気の低迷と流行色との間にどのような関連性があるのかはよくわかりませんが、近頃、ビール系や炭酸飲料で"黒"をアピールする製品が存在感を増してきています。特に黒ビールが目を見張るほどの勢いで、今年の国内黒ビール市場が一気に前年比5〜6倍にまで拡大すると見込まれているほどです。
まず3月に[サッポロビール]から、"第三のビール"としては初の"黒"風味、「麦とホップ<黒>」が登場。昨年10月に数量限定で発売し好評だったことから、今回、通年販売として復活しました。"黒ビールと間違えるほどのうまさ"をうたい文句に、年内販売目標を発売時の150万ケース(1ケース=大ビン20本)から、1ケ月足らずで、2倍の300万ケースに上方修正するほどの大ヒットとなりました。
そして4月には、後に"黒"ブーム最大の立役者となる「アサヒスーパードライ ドライブラック」が参入。CMキャラクターにダルビッシュ投手を起用し、発売25周年を迎えた「アサヒスーパードライ」にラインナップされた強力な一品です。これまで"黒"を敬遠気味だった20〜30代男性にも受け入れられ、こちらも年間の販売目標を当初の200万ケースから、6月には300万ケースに上方修正する好調ぶりを示しています。
さらに5月、世界で初めて、ノンアルコールビールの"黒"、「サッポロ プレミアムアルコールフリー ブラック」が登場。8月には、同じく[サッポロ]から、これまでお店でしか飲めなかった黒ビール、「エビス スタウト クリーミートップ」が缶になってお目見えしました(数量限定)。
[キリンビール]の"黒"も、「キリン一番搾り スタウト」が前年比約4割増と順調に推移しています。
炭酸飲料市場も、"黒"がはじけて元気です。
[キリンビバレッジ]が4月に発売して話題になったのが「キリン メッツ コーラ」。食事の際に脂肪の吸収を抑える働きがあるとうたい、コーラ系飲料としては初の「トクホ(特定保健用食品)」に認定されました。
6月に発売されたのは「ペプシブラック」([サントリー食品インターナショナル])。糖類は既存のペプシコーラの半分で、大人のための甘くないコーラです。パッケージも黒を基調に、ペプシ史上初のモノクロの商品ロゴを採用しています。さらに同社は7月に、コーヒーと炭酸がコラボした黒の飲料、「エスプレッソーダ」を投入。"珈琲のクセに炭酸"がキャッチフレーズで、エスプレッソの深いコクとシュワッと爽やかな炭酸の刺激を両立させたユニークな飲み物です。
店頭の陳列棚を"戦場"に、陣取りゲームのようにじわじわと侵食し始めている"黒"の軍団。特に、落ち込みが続くビール業界にとっては、市場活性化への起爆剤として大きな期待が寄せられています。
※参考:
サッポロビール http://www.sapporobeer.jp/
アサヒビール http://www.asahibeer.co.jp/
キリンビール http://www.kirin.co.jp/
キリンビバレッジ http://www.beverage.co.jp/
サントリー食品インターナショナル http://www.suntory.co.jp/
日経産業新聞(2012年7月2日付)
音楽をネットで調達できる時代になって以来、オーディオの影が急激に薄くなっていったように思います。市場も衰退の一途を辿り、そこに100年に一度と言われる未曾有の景気後退が追い討ちをかけます。数年前にはオーディオ業界内部でも、もはや"デス・マーケット"と囁かれるほどだったと言います。
しかし、ここにきて盛り返しの兆しを見せ始めています。その代表的なものが、今年に入って各メーカーから新製品が相次いで投入されている、「無線対応オーディオ機器」です。なかでも主流は、米アップル社が開発した無線接続規格「AirPlay(エアプレー)」に対応するオーディオ機器です。
AirPlayとは、高機能携帯電話(スマートフォン)や多機能携帯端末(タブレット)に搭載され、写真・動画・楽曲といった各種コンテンツを無線LAN経由で家庭内のネットワークメディアに転送させるための機能です。
スマホの音源をオーディオ機器で再生するというメカニズム自体はこれまでもありましたが、それは"端子を接続する"ことが必須で、デジタルデータを一旦アナログに変換するというプロセスが避けられませんでした。当然、音質は劣ります。その点AirPlayは、スマホの音源データをそのまま送信して出力するため、音質の劣化を防ぎ、よりクリアな音を再生できるという優位点があります。
AirPlay対応の機器があれば、ワイヤレスで家の中のどこからでも高音質・大迫力のスピーカーシステムから再生できるというわけです。
[デノン]のネットワークオーディオの人気商品は、アンプ「RCD-N7」。スマホ内の音源を選んでタップするだけで、オーディオ背面にあるアンテナが受信し、音楽データの楽曲がスピーカーから出てきます。販売好調を受け、同社はさらに今年9月、AirPlayでスマホ内の楽曲を再生でる繭型のネットワーク対応スピーカー「コクーン」の発売を予定しています(2012年8月現在)。
[フィリップスエレクトロニクスジャパン]から5月に発売されたのは、樽のようなユニークなフォルムのAirPlay対応スピーカー「DS9800W」。高級スピーカーに用いられるローズウッドをハンドクラフトで彫り上げ、自然な音響特性を忠実に再現。その音質は、高額(約10万円)だけの価値はありそうです。
他にも、パナソニック、マランツ、テックウインド、パイオニア、ティアックなどから、AirPlay対応のアンプ、ミニコンポ、スピーカーなど各種発売されています。
ますますネットワーク化が進む、新世代のデジタルオーディオ機器。スマホの急激な普及を追い風に、ホームオーディオ復活の活路となるでしょうか。
※参考:
デノン http://www.denon.jp/
フィリップスエレクトロニクスジャパン http://www.philips.co.jp/
パナソニック http://panasonic.jp/
マランツ http://www.marantz.jp/
テックウインド http://www.tekwind.co.jp/
パイオニア http://pioneer.jp/
ティアック http://www.teac.co.jp/
日経産業新聞(2012年7月17日付)
近頃の「ペーパークラフト」。もはや単に"紙を素材とした模型"の域を超えています。その精巧さ、抜群のリアルさ----。例えば、1/2スケールで全長75cmの「阿修羅」像。顔の皮膚感、衣のシワなど、全体の古めかしさが見事に再現された立体造形で、遠目にはまさに"彫刻"。[オークル]から発売されている「21世紀ペーパークラフト」シリーズの一つで、販売時の商品のカタチは完成作品とは似ても似つかぬA4サイズ、数十ページの冊子です。1枚の紙からハサミやカッターで切り取り、ノリで接着して複雑なデコボコの立体へと組み立てていきます。パーツ数が多く、細かい作業の繰り返し。しかし、この難易度の高さが逆に製作意欲をかきたてて人気となっているようです。
同シリーズ仏像コレクションの第2弾として、「弥勒菩薩(みろくぼさつ)」像を発売(A4・84ページ)。頭、体、手、足、下半身、台座の6つのパーツで構成され、完成までの目安は32〜48時間。価格は共に3,000円前後で、2年前の発売から年々売上げが伸びており、将来的には西洋彫刻の商品化も企画中とか。
ペーパークラフトとプラモデルの融合した商品が昨年登場して、小学生男児を中心に人気上昇中です。[KJC]の「ペーボット」で、"ペーパー"と"ロボット"を合体させた、紙で折って作る3Dロボットです(1,000円前後)。科学的で精密な設計と折り紙の技法によって、立体的な表現を可能にしました。リアルなメタリックの質感を表現するため、ゴールドやシルバー、ホログラムなどのコーティング技術を駆使して重量感が表現されています。
また、「富士山」や「剱岳・立山」など、憧れの山をインテリアに!と、紙で作る山岳立体模型キット「やまつみ」([キューアールシー])も山好きのファンに人気です。標高20mごとに輪切りにされた山を順番に積み上げていくから「やまつみ」。根気とピンセットさえあれば、征服した時のような達成感を味わうことができるはず。価格は、4,000〜30,000円前後。
最近では、型紙をネットからダウンロードして印刷し、組み立てるというスタイルが広まっています。1時間もあればできるものから、完成まで数十日を要する高度で複雑なものまで。進化する「ペーパークラフト」は、さらに二極化へと向かいます。
※参考:
オークル http://paper-craft.info/
ハートアートコレクション http://www.heart-artcollection.co.jp/
KJC http://www.pabot.jp/
キューアールシー http://www.yamatumi.jp/
日経MJ(2012年7月25日付)