明細書や請求書といった、これまで郵送が主流だったものの"電子化"が進んで郵便物が減少している一方、ネット通販などの普及で急増しているのが宅配便の荷物。取り扱い個数は10年前に比べ約25%も増えています。それに伴い、2003年に制定された「個人情報保護法」(施行は2005年)が、個人を特定できる情報の取り扱いに関して私たちを、より敏感にさせています。
個人情報の漏洩など、従来は企業の問題だったものが家庭や個人レベルにまで降りてきた、いま。そのリスクから身を護るための様々なパーソナルユースの「個人情報保護グッズ」が開発され、実際に売上げを伸ばしています。
[ナカバヤシ]の「クルッキル」は、消去したい情報が記載された紙を挿入してハンドルを回すだけで、3.5mm幅の紙片に裁断する手回し式のハンディーシュレッダーです。同社からは他に、机上で使える電動シュレッダー「ファインカット」やプライバシー情報を7つのパンチ穴で部分的にカット処理する「アナーケル」、5枚刃のシュレッダーハサミ「チョッキル」などが販売されています。
裁断しても文字が見えてしまう、といった声を受け、従来の4mm×40mmから2mm×11mmへと裁断寸法を細かくし、小さな文字もしっかりバラバラにできるシュレッダーが、[コクヨS&T]から昨年発売された「リリッシュ ピックス」。幅109×高さ218×奥行312mmとスリムなデザインで4色のカラーリング。インテリアとしても邪魔にならない家庭向けシュレッダーです。
ホチキスでお馴染みの[マックス]は、封筒を開封するカッターとローラー式の個人情報保護スタンプを一つにした「コロコロケシコロwithレターオープナー」を発売。段ボールのようなデコボコ面も、転がしながらムラなく消去できます。
[プラス]のヒット商品は、消したい箇所にポンッと押すだけで、顔料系の油性インクが文字を隠してしまう個人情報保護スタンプ「ケシポン」。「早撃ちケシポン」「ちょい押しケシポン」「1行ケシポン」などの同シリーズに「ローラーケシポン」が加わりました。模様の入ったローラーを転がして個人情報部分に重ねるだけ。約50m分、印字されます。印字幅は26mm、55mm、15mmの3タイプが揃っています。
ひと昔前には、さほど必要性を感じなかった「個人情報保護グッズ」。今後も個人情報漏洩のリスクが広がることが予想される以上、自らの身を自ら防衛するためのニーズは、いっそう高まりそうです。
※参考:
ナカバヤシ http://www.nakabayashi.co.jp/
コクヨS&T http://www.kokuyo.co.jp/
マックス http://wis.max-1td.co.jp/
プラス http://bungu.plus.co.jp/
日経産業新聞(2012年6月6日付)
各種の栄養素や機能性成分を手軽に補給できるとあって、朝食代わりやスポーツシーンに、またダイエット補助食品としてもすっかり定着した感のあるパウチパック入り「ゼリー飲料」。
1994年、"10秒メシ"という画期的な食形態をコンセプトに登場し、まったく新しい市場を創出したのが「ウィダーinゼリー」(森永製菓)でした。それ以降、様々な同類商品が発売され市場は成熟化。2007年からは緩やかな縮小傾向が続いています。しかし、今年に入って活性化を狙ったテコ入れが積極的に行われ、各社、味や機能性で差別化を図った新製品を相次ぎ投入しています。
糖質オフで1袋(160g)23kcalという低カロリーをアピールし、20〜40代男性のダイエット需要を取り込もうと4月に発売された[アサヒフードアンドヘルスケア]のコーヒーゼリー飲料「ダイエットブラック」。パッケージも黒が基調で、減量を想起させるヘルスメーターのイラストが象徴的です。さらに5月には、"塩分&ビタミン補給"をコンセプトにした2つのゼリー飲料が同社から発売。「塩レモンゼリー」と「塩うめゼリー」で、カラダにうれしいマルチビタミンが配合されています。これまで、ここまで明確に塩に特化したゼリー飲料がなく、熱中症対策の新しいアイテムとして注目を集めています。
中高年の男性をターゲットに、ローヤルゼリー500mgを配合したゼリー飲料「生ローヤルゼリー500ゼリー」を6月に発売したのは、[ハウスウェルネスフーズ]。食事代わりというよりも、残業などでもうひとふん張りが必要な時に飲んでほしい、とはメーカーの思い。
若者のイメージが強いゼリー飲料ですが、あえて50歳以上のシニア男女に的を絞った商品も登場しています。[カゴメ]から3月に発売された「野菜生活100 朝ジュレ」です。高齢者の野菜不足を補うために、一日に必要とされる緑黄色野菜120g分と果実200g分を150gにギュッと濃縮。固形感を残しつつも、硬すぎずツルンと飲み込むことができるように工夫されています。
手軽さ、口当たりの良さ、腹持ちの良さ---飲むだけで食べた感じが得られる「ゼリー飲料」。片手で持って吸うという、"ながら"栄養補給のスタイルは定着しました。あとは、中身の斬新さの勝負です。
※参考:
森永製菓 http://www.morinaga.co.jp/
アサヒフードアンドヘルスケア http://www.asahi-fh.com/
ハウスウェルネスフーズ http://www.house-wf.co.jp/
カゴメ http://www.kagome.co.jp/
日経産業新聞(2012年6月12日付)
ボトルに入ったミネラルウォーターとサーバー(レンタル)をセットで、契約した家庭や企業に配送する「宅配水(ボトルウォーター)」サービスが、右肩上がりで伸び続けています。2012年には、前年比22%増で1,000億円を突破する見込みで(日本宅配水協会調べ)、勢いは止まりそうもありません。
「宅配水」市場の急速な拡大要因として、"ペットボトルなどの重たい水を運ばなくてもよい""専用サーバーですぐに冷水と温水が飲み分けられる""日本の住環境に合ったスリムなサーバーが登場した"などの結果、"これまでの法人利用中心が、一般の家庭にまで浸透してきた"ことが挙げられます。さらに、昨年の東日本大震災の影響で各社とも大幅に受注が増加し、特需の様相を呈しています。
現在のところ、宅配水業界で覇権を競っているのが、「クリクラ」ブランドを展開してトップを走る[ナック]と2位の[アクアクララ](ブランド名も同じ)。
「クリクラ」の場合、サーバーのレンタル代が無料で、水代が12リットルで1,260円。年1回のメンテナンス代が5,250円(月換算約440円)かかります。
片や「アクアクララ」の場合は、サーバー代が1,050円〜1,890円、水代が12リットルで1,260円、メンテ代は無料です。
例えば、「クリクラ」を1カ月48リットル使ったとして、電気代やメンテ代を含めた料金は500ミリリットルあたり約70円と、ミネラルウォーターの約100円と比べると3割安いという試算結果が出ています。この割安感も、需要拡大の要因の一つと言えるかもしれません。
「ナック」は、業界初となる研究開発のための専門施設「クリクラ中央研究所」を東京・町田市に開設し、さらなる品質の強化を図ります。
「アクアクララ」は、サーバーにディズニーのキャラクターを入れたり、イメージキャラクターとしてタレントの谷原章介さんを起用するなど、宣伝・販促に積極的です。また、ベビー用品の[コンビ]と提携して妊産婦世帯の契約を促進。さらに、[タマホーム]や「穴吹工務店」と組んで住宅購入時に宅配水を売り込むなど、キメ細かな戦略をとっています。
上位2社が占めるシェアは、わずか3割強。"今のところ"と前述したように、勢力図はまだ色分けされていないというのが現状です。その分、この超成長市場へ入り込もうと、大手や異業種が虎視眈々と狙っています。
[サントリー食品インターナショナル]は今春、主力の「天然水」ブランドで宅配水事業に参入。[ヤマダ電機]も4月、全国60店舗で宅配水「富士山の銘水」とサーバー「フレシャス」の取り扱いをスタートしています。
宅配水なんて、贅沢、割高、信用できない、などという、ひと頃のネガティブなファクターは、企業努力と認知度のアップによって払拭されつつあります。
"ウチにウォーターサーバーがあるのがあたりまえ"の時代が、すぐそこに来ているのかもしれません。
※参考:
日本宅配水協会 http://www.jbwa.org/
ナック http://www.nacoo.com/
アクアクララ http://www.aquaclara.co.jp/
サントリー食品インターナショナル http://www.suntory.co.jp/
ヤマダ電機 http://www.yamada-denki.jp/
日経MJ(2012年6月1日付)
日経産業新聞(2012年6月14日付)