デジタルテレビにパソコン(PC)、ケータイ、スマホと、私たちは日々、デジタル機器のディスプレイを見つめながら生活しています。
その液晶画面には、バックライトとしてLED(発光ダイオード)が使用されていることが多いため、青い光(ブルーライト)を強く発生させています。可視光線の中でも波長が短くエネルギーの強いこの青色光は、目の奥で散乱しやすいため、長時間、凝視しているとチラつきや眩しさの要因となります。
この、目に有害なブルーライトを効率的にカットしてくれるレンズを使った「PC用メガネ」の注目度がアップしています。需要が増えるにつれ、各メーカーではレンズの開発やサービスの向上など活発な動きをみせています。
「PC用メガネ」というカテゴリーを打ち出して口火を切ったのは、[JINS](ジェイアイエヌ)でした。昨年9月、"ブルーライトから目を守るメガネ"というコンセプトを掲げて登場した「JINS PC」。ブルーライトを約50%カットし、独自の光マネジメント技術で画面のチラつきを抑え、通常のカラーレンズよりも文字や画像を見やすくするというもの。当初は、"度なし"のみで3,990円という低価格がウリでしたが、ユーザーからの要望に応え、今年5月から"度付き"レンズが装着できる「JINS PCカスタム」を開始しました。また、同じく5月には、子供向けに開発されたブルーライトカットメガネ「JINS PC for kids」を発売(度なし/3,990円)。メガネでは初めて、日本PTA全国協議会の推薦商品に認定されています。
[眼鏡市場]からもほぼ同時期の昨年10月、PC用レンズ「デジタルガードレンズ」が発売されました。レンズ表面に施された"デジタルガードコート"がブルーライトをカット。他社のレンズが特殊なカラー加工によって青色光をカットするタイプが多い中で、このレンズは"無色"を実現。目立ち過ぎず、シーンを選べず使えると好評です。超薄型や遠近両用にも対応しています。
また、今年3月には、[Zoff(ゾフ)](インターメスティック)から、「Zoff PC」が登場しました。クリアタイプのレンズで約37%、カラータイプで約50%、青色光を低減します。
知らず知らずのうちに目への負担が大きくなり、それが首・肩・腰への疲れ・痛みとなって、イライラや不眠症などを引き起こす「VDT症候群(パソコン病)」や「テクノストレス」につながることも。従業員の目の疲労を和らげようと、社員用として「PC用メガネ」を導入している企業もあるほどです。今後の需要も、拡大こそあれ縮むということは考えにくい、見通しの明るい「PC用メガネ」市場です。
※参考:
ジェイアイエヌ http://www.jins-jp.com/
眼鏡市場 http://www.meganeichiba.jp/
インターメスティック http://www.zoff.co.jp/
日経MJ(2012年5月23日付)
好きなものを好きなだけ食べたいなら、気になるお店を気のすむまで見て回りたいなら、お湯につかりながら時間を気にせずガールズトークを楽しみたいなら……彼氏や旦那とではなく、気のおけない女同士の旅がいい!と、いま「女子旅」人気が急上昇中。2011年度の海外向け「女子旅」商品は、前年比で4割も伸びています(JTB調べ)。
近頃の「女子旅」の特徴は、これまで旅行業界があまり積極的ではなかった35〜49歳のOLやミセスを主なターゲットにしているところ。いわゆる、"オトナ女子"を狙ったパッケージ商品で、"かわいい・おいしい・癒し・自分磨き"の4つのキーワードがヒットのポイント。
[日本旅行]は、昨年ヒットした海外旅行商品「週末トラベラー」をさらに発展させた「大人女子が行く!
アジア★トラベラー」を今春、発売しました(4〜10月出発)。昨年に続き、女性チームによる企画で、女性に最も人気の高いアジアに焦点を当て、週末以外でも参加できるように設定。例えば、「エステで体も心もリフレッシュ! キレイ三昧ソウル3日」(50,900円〜)、「ツヤ肌・ボディを手に入れる! 艶姫ソウル3日」(55,900円)など、美肌・癒し・パワースポット巡りなど、女性目線ならではの企画を用意。さらに、パリ・フィレンツェ・ローマの3都市を自分好みにアレンジできる「ガールズスタイル ヨーロッパ」(6〜10月出発)や全コース1名参加でも楽しめるように設定された「ワンアップ アジアな旅」(7〜10月出発)など。一方、国内旅行でも女性チームによる「女子力UP 旅美女(タビージョ)」を販売。"タビージョで「美」と「楽」と「癒し」を手に入れる"と、攻めのコピーで集客を図ります。
最大手の[JTB]は、働く女性たちをターゲットにした海外ツアー、「旅LOVE」を昨年から販売しています。参加者には"女子の素(もと)"と呼ばれるポイントが与えられ、その範囲内で組み合わせて自分好みの旅が作れるところがユニーク。スパ、マッサージ、専用車&ガイドチャーターなどなど、旅先でのイベントを自ら"編集"できる手作り感の楽しさがウケています。
オトコたちの腰の重さを尻目に、アクティブで好奇心旺盛な女性たちは、旅のステージでも元気です。縮小傾向にある旅行市場は、当分の間、「女子旅」が目玉商品となってけん引していきそうです。
※参考:
日本旅行 http://www.nta.co.jp/
JTB http://www.jtb.co.jp/
日経産業新聞(2012年5月1付)
テレビや新聞、雑誌などを媒体としたマス広告が広告の王道と言われた時代は、今は昔。不況の波をモロに被った広告業界は、ポストマスメディアに向けた新たな戦術をさまざまな角度から試み始めています。その一つが、ここ数年来じわじわと拡がりつつある、トイレを活用した広告展開です。
トイレットペーパーに商品名や店名などを印刷したり、鏡面にシート広告を貼り付けたりといったトイレ空間を活用したものは、これまでにもありました。最近のトイレプロモーションがこれまでのものと大きく異なるところは、"デジタルサイネージ(電子看板広告)"を活用している点です。
羽田空港内の65カ所の女性トイレ、計355の個室にデジタルサイネージが登場したのは、2008年末のことでした。国内初で、便座に座ったときにちょうど視界に入る高さの床下95cmに7インチのディスプレイが設置されています。これまで、健康や美容関連商品の他に、韓国観光局のPR、警視庁の振り込め詐欺防止、JALのコマーシャルなど、15秒間隔で入れ替えながら3分間流されます。
居酒屋チェーン「養老乃瀧」池袋店の男子トイレ、小便器の上にはセンサー付きの12インチの液晶画面が設置されています。セガが5年の開発期間を経て実現したトイレ用テレビゲーム「トイレッツ」で、センサーで計測された尿の量や勢いによってモニター上でゲームができる仕組みです。もちろん単なる"お遊び"ではなく、ゲームの前後にはしっかりとおすすめメニューが表示され、ゲームと広告メディアの両立を果たしています。画面に表示されたメニューのオーダー数が、2倍以上にのぼったという実績も証明されています。
一方、デジタルサイネージではありませんが、今春開業した東京「渋谷ヒカリエ」のトイレは、ショールーム感覚の活用が話題となっています。手洗いスペースの中心に、高級バッグなどをガラスケースに陳列。即効で売上げに結びついているとのこと。
ニッチ媒体の極みともいえる「トイレプロモーション」。そこへ広告を出稿することに、まだまだネガティブなイメージを持っている企業が多いのも現実です。しかし、百貨店、大学、オフィスビル、ホテル、ショッピングモール……まず清潔であること。そして利用者が多いこと。この2点を満たすだけで、この媒体の可能性は限りなくふくらむと思われます。
※参考:
デジタルサイネージ最前線 http://www.itmedia.co.jp/
日経MJ(2012年5月23日付)