コーヒー豆の国際価格の高騰が末端の価格にまで及んでいるにもかかわらず、コーヒーを取り巻く消費動向は落ち込むどころか、堅調な伸びを示しています。その背景には、不況の産物ともいえる「巣ごもり派」の増加や、それに伴う「家(ウチ)カフェ」ブームの浸透などが挙げられます。さらに、値上げ後も予想されていたほどの売上げ減が見られなかったタバコ同様、“いくら高くなっても、好きなものは止められない”という嗜好品ならではの独特な購買傾向があるようです。
それらの要素が追い風となって、「コーヒーメーカー」の売れ行きも好調です。08年、09年とマイナス傾向でしたが、昨年には対前年比11%増と大幅に拡大。
売れ筋は、エスプレッソはもちろん、カフェラテやカプチーノといったアレンジコーヒーも楽しめる高性能・多機能で高額なものと、美味しいドリップコーヒーが手軽に楽しめたら十分と、価格を抑えたシンプルな機能の“かんたんマシン”の二極化が進んでいます。
主な参入メーカーは、パナソニック、東芝といった大手家電メーカーをはじめ、象印やタイガーなどの魔法瓶メーカー、そしてデロンギ、フィリップスなどの外国勢、さらにネスレ、メリタなどのコーヒー関連専門メーカーなどが入り乱れての大激戦区。
コロンとしたフォルムが“カワイイ!”と、デザイン面で一歩リードするのが、ネスレ日本の「ネスカフェ ドルチェ グスト ピッコロ」。豆の種類ごとの専用カプセル(別売)をセットし、高圧で1杯ずつ抽出。1万円を超える価格ながら人気です。
タイガー魔法瓶は、同社のメリットを最大限に活用。魔法瓶と同じステンレス製の保温容器の内側に鏡面加工を施した真空二重構造を採用。加熱せずに長時間保温できるので煮詰まりを防いで風味、香りを保ちます。
機能を絞ってリーズナブルな価格で人気なのは、象印マホービンの「珈琲通」シリーズ。アイスもつくれて、給水しやすく手入れも簡単なオーソドックスマシンです。
また、3,000円〜6,000円台がおおよその価格基準の中で、なんと1,000円台の超シンプルなコーヒーメーカーも出現。泉精器製作所の「イズミ コーヒーメーカー」で、価格にこだわる消費者のハートをつかんで売れています。
季節によって多少の波はあるものの、もはや通年商品となった「コーヒーメーカー」。自分のコーヒーブレイクの大切なパートナーとして、ぜひじっくり吟味してお気に入りの1台に出会いたいものです。
※参考:
ネスレ日本 http://nestle.jp/
タイガー魔法瓶 http://www.tiger.jp/
象印マホービン http://www.zojirushi.co.jp/
泉精器製作所 http://www.izumi-products.co.jp/
パナソニック http://ctlg.panasonic.jp/
東芝 http://www.toshiba.co.jp/
デロンギ http://www.delonghi.co.jp/
メリタジャパン http://www.melitta.co.jp/
日経MJ(2011年4月13日付/同4月15日付)
ケータイやパソコンの画面を見入っていてまばたきの回数が減ったり、空調などの影響で目の乾きをおぼえた時などには“人口涙液”タイプの点眼薬を。花粉症の方には、“アレルギー用”の点眼薬を。疲れ目・かすみ目には“ピント調筋機能改善成分配合”の点眼薬を…いまや、日々酷使されている私たち現代人の目のために、症状、使用シーン、年代、性別など、実にキメ細かく機能を謳った「目薬」が開発・販売されています。
この“いたれりつくせり感”は日本独特の現象で、欧米に比べて商品アイテム数が格段に多いばかりでなく、一人当たりの売上高も欧米の約3倍(ロート製薬調べ)といわれているほどの“目薬大国”。しかしそんな成熟市場ゆえに、市場の成長力は頭打ちの状態。もはや、配合成分などの機能訴求で他品との明確な差別化を打ち出すのが難しくなってきており、メーカーからは“すでに出尽くした”との声も聞かれるほど。
そこで、ちょっと視点を変え、新たな切り口として浮上してきたのが、使用する時間帯を前面に出した「朝目薬」とも言える商品コンセプトです。
今年2月に発売された、ジョンソン・エンド・ジョンソンのバイシンシリーズは、その名も「ウェイクアップキュア」。パッケージには、「朝から瞳ケア----お出かけ前にもクリアな瞳」とストレートに使用する時間帯とシーンを謳い、「充血クリア成分&ビタミン配合」という機能訴求はサブ的に入っています。従来商品と、アピール内容で主従逆転が見られます。
3月にはロート製薬の「解眼新書シリーズ」から、“朝の目の不快感に”と、生薬由来の抗炎症成分配合「ロート新緑水」を発売。
ライオンはあえて“朝用”とは銘打ってはいませんが、3月に発売された「スマイル40EX クール」は、同社最高レベルの超クールさを実現。さし心地は、いやがおうでも目が覚める強烈な清涼感が売りです。
生活環境の変化で、昔にはなかったアイケアの必要性が生まれ、そのニーズは年々高まる一方です。はたして、朝用缶コーヒーや朝カレーに続く「朝目薬」が、機能性重視のマンネリを打破して私たちの“朝”に定着することができるか。今後に注目しましょう。
※参考:
ジョンソン・エンド・ジョンソン http://www.jnj.co.jp/
ロート製薬 http://www.rohto.co.jp/
ライオン http://www.lion.co.jp/
日経産業新聞(2011年4月13日付)
3月に起きた東日本大震災による節電の影響で、今年の夏は例年にも増して室内が暑くなることは予想されていました。いくらクールビズでラフになっても、汗ばんだ肌やテカリ、ニオイなどが気になるところ。そういった需要に応えるべく、化粧品各社はこの夏に向けてオトコの化粧品を充実させています。
ポーラは5月に、12年ぶりとなる男性用化粧品の新ブランド「マージェンス」を立ち上げました。消臭機能を持った香料“ニュートラル”を世界で初めて化粧品に配合して、汗や皮脂の酸化などによるニオイを抑えます。まず、ボディシャンプー、ボディミスト、オードトワレのフレグランスライン3品を先行発売。続いて7月に、洗顔料、化粧水、日焼け止めのスキンケアライン3品が発売されます。
コーセーは昨年、「アディダス」と提携して男性用化粧品市場に本格参入。制汗剤やボディローションなど7品目16品種で展開中の「アディダス スキンプロテクション」シリーズに、今春さらに日焼け止めや洗顔料などの新製品がラインナップされました。ブランドコンセプトでもある“アスリート発想”が製品に反映され、さらさらした感触でベタつく肌を素早く爽快に整えるのが特徴。
自然派コスメとして女性に人気の「ロクシタン」は、昨年初めて「ヴェルドン」ブランドで男性向けコスメとしてシリーズ展開。洗顔料、化粧水、乳液、香水などに加え、今年6月には「ヴェルドン フレッシュ ウォーターシャワージェル」(ボディソープ)が発売されました。
他にも、資生堂やカネボウ、マンダムといった化粧品大手はもとより、花王、アラミス、ファンケル、ロレアル、ランコム、無印良品、そしてロート製薬、大塚製薬などが参入して活況を呈しています。お気付きのように、薬メーカーなど異業種の参入が多いのがこの市場の特徴で、その理由は、販売場所・価格とも“買いやすさ”に重きを置く男性ユーザーをターゲットにしているため、ドラッグストアやコンビニを主な販路とする製薬会社にとっては好都合というわけです。
一方、既存の化粧品メーカーは、デパートでの美容部員によるカウンセリング販売の実施など、高級感を打ち出したワンランク上の顧客獲得を狙います。
国内の化粧品市場全体が頭打ちのなか、「男性用化粧品」のみが拡大しています。これまで、洗顔・整髪・シェーブといったスタイリング関連が中心だったオトコのグルーミングアイテムも、いまは“お肌のケア”と“いいニオイ”がトレンド。草食系男子がけん引する、清潔感や消臭などへの意識の高まりが定着し、需要を押し上げています。
草食系男子がやがて“装飾系男子”となり、近い将来、デパートに男性用化粧品の専用カウンターが出現する日も、そう遠くはないかもしれません。(えっ! もうありますか?)
※参考:
ポーラ http://www.pola.co.jp/
コーセー http://www.kose.co.jp/
ロクシタン ジャポン http://www.loccitane.co.jp/
日経産業新聞(2011年4月22日付)