「就活」「婚活」ときて、いまブームなのが、朝の時間を有効に使っていろいろな活動をする「朝活」。
でも、早起きしてジョギングや勉強会などを行っている人は以前からおり、考え方自体は別段新しいものではありません。ただ、「朝活」という言葉が新たに生まれ、時流に乗って波及したということです。
それにしても、“朝活族”の皆さん、出勤前や登校前、休日の朝などのちょっとした時間に、実に様々な活動をしているものだと驚かされます。その根底に流れているのは、精神的・肉体的な“じぶん磨き”ということになるのでしょうか。例えば……スポーツジムでスイミング、ダイエット体操、サイクリング、ヨガといったアクティブな「朝活」と、「丸の内朝大学」(東京)や「天神朝キャンパス」(福岡)のような市民講座や朝スクールへの参加、異業種交流朝食会、自己啓発セミナー、早朝営業の英会話スクール、読書会など、ビジネスマンを中心としたスキルアップを目指したものが挙げられます。
一方、商品やサービスの送り手側が、このムーヴメントを見逃すはずはありません。隠れた大市場ともいわれる朝の時間帯に照準を絞り、新たな付加価値を付けた商品を続々と送り出しています。
朝専用の缶コーヒーとして大ヒットした「ワンダ モーニングショット」(アサヒ飲料)をはじめ、「朝用チョコレート」「朝用栄養ドリンク」「朝用スパイス」「朝用健康茶」「朝用茶漬け」。また、朝食として手軽に糖分補給ができる「朝用スイーツ」や「朝用梅干し」まで。その他、靴の全国チェーン「ABCマート」が1時間限定の「早朝割引セール」を行ったり、朝からラーメンを食べる「朝ラー」がブームになって行列ができたり…。
婚活まで“朝”です。忙しいビジネスマンのために、出勤前、朝6時から9時までの間に行われる“朝婚活”。ランニングやピクニック、ゴミ拾いなどをしながらパートナーを見つける合コンが早朝から繰り広げられています。
環境省は2010年、生活を夜型から朝型に変えることが夜の消費電力を抑え、CO2削減につながると、「朝チャレ!(朝型生活にチャレンジ)のススメ」を提案しました。
アフター5に行っていたような活動を、そのままビフォー8に持ってくる「朝活」。長時間労働で夜型になりがちな生活リズムの中で、個人が自由に調整できるのは朝の時間だけ。そのことに気づきはじめた多くの人が、積極的に「朝活」を実践しようとしています。はたして、日本の“朝”は、そしてそれを取り巻く “朝活市場”は、今後どのような姿を見せていくことでしょう。
※参考:
アサヒ飲料 http://www.asahiinryo.co.jp/
朝チャレ!事務局 http://www.challenge25.go.jp/
スポーツニッポン(2010年12月29日付)
朝日新聞(2010年11月6日付)
日常的にお酒を飲む習慣のある若者はどんどん減少し、片や甘いもの好きを堂々とカミングアウトする“スイーツ男子”に象徴されるように、男女ともにスイーツ人気は高まる一方。低迷するアルコール市場に直面するお酒メーカーにとってはかなり深刻な事態になりつつあります。そこで、なんとか草食系男子や若い女性にも振り向いてもらおうと知恵を絞った結果が、「スイーツ風味の低アルコールドリンク」という、まったく新しいカテゴリーの商品でした。これまでのものは、レモンやグレープフルーツといった果汁で風味付けしたものが主流でしたので、このスイーツ風味は、言うなれば“第三の味”といえます。
スイーツなのにお酒、お酒なのにスイーツ。まさにスイーツとお酒のハイブリッド。そんな微妙なアルコール飲料が、このところ相次いで登場しています。
昨年11月にカルピスの“バータイムシリーズ”から「ハニーアップル&カルピス」が発売。世界No.1バーテンダーのプロデュースによって生まれたオリジナルで、リンゴ酒にハチミツとカルピスを加え、甘くまろやかに仕上げたドリンクです。アルコール分は4%。
同じくカルピスからは、韓国の伝統酒とのコラボで「カルピスとマッコリのお酒」(アルコール分3%)が発売されています。
今年1月には、サントリーの“牛乳で割っておいしいお酒 ミルミクスシリーズ”から「ショコラベリー」(アルコール分14%)が発売されました。カカオの香ばしさとベリーの甘酸っぱさがやさしい味わいです。このシリーズは、牛乳と混ぜるだけでスイーツのようなデザート感覚が楽しめるリキュールとして人気で、他に「ショコラバナーヌ」「チャイ」「ビターキャラメル」「抹茶」などのフレーバーが揃っています。
同じく1月、サッポロビールと北海道のチョコレートメーカー「ロイズコンフェクト」と協力して「ショコラ ブルワリー(スイート)」という発泡酒を発売。チョコの味と香りがするお酒で、ビールの苦味が苦手な女性にも楽しめます(アルコール分5%)。
1月19日には、キリンビールの“夜Cafeシリーズ”から、ブランデーの「紅茶のお酒」とウイスキーの「カフェラテのお酒」を、関東1都6県のコンビニ限定で発売(共にアルコール分4%)。
若者のアルコール離れといっても、“酔う”こと自体を嫌っているわけではないはずです。実際、「自宅でゆっくりと飲みたい」「少しの量でほろ酔えるお酒がいい」という声が多いといいます。「スイーツ風アルコール飲料」が、そんな飲みスタイルのニーズに応えることができるか? そして、新しい需要を喚起してアルコール市場の救世主になりえるか? まずは、1杯、味わってみませんか。
※参考:
カルピス http://www.calpis-sour.jp/
サントリー http://www.suntory.co.jp/
サッポロビール http://www.sapporobeer.jp/
キリンビール http://www.kirin.co.jp/
日経産業新聞(2010年12月6日付)
パソコンや携帯電話、スマートフォンといった様々な情報機器の画面を日常的に長時間、注視することによって感じる目の奥の疲れ(眼精疲労)は、程度の差こそあれ、誰もが感じているにちがいありません。
目を休ませると回復するような一時的な目の疲れ(眼疲労)とはちがい、目が痛んだり、かすんだり、充血、視力の低下、さらに頭痛、肩こり、胃痛などが慢性的に伴って全身に症状が及ぶのが「眼精疲労」の特徴です。
対策としては、点眼薬(目薬)が一般的ですが、最近は“眼精疲労は飲んで治す”と、各メーカーは内服薬での症状緩和をアピールしています。
塩野義製薬は「ポポンピュメリ錠VB」(14錠980円)という内服薬を発売。ビタミンB1を主成分として糖質の代謝を促進させることで眼精疲労を和らげようとするものです。同社はまた、「ポポンピュメリ目薬」を同時発売し、内と外、両面からのダブルケアを提案しています。
2000年に発売され、眼精疲労のための飲み薬としてのパイオニアが、興和「キューピーコーワi」。2009年には、疲れた神経や筋肉に有効な成分を配給し、より効果の増強を図って「新キューピーコーワi」が発売。昨年には、同商品の「トライアルサイズ」(27錠1,200円)も投入されました。
アイケアの最大手、ロート製薬は、昨年11月、「モアストレッチ錠」(14錠924円)を発売。この種の医薬品では初めて、目の奥の血流を良くする効果があるとされる成分を配合しました。
眼精疲労を和らげるために内服薬を使おう、と思う人はわずか9%(2010年ロート製薬調べ)とか。消費者の間では、まだまだ“飲んで治す”という意識が低く、認知されていないのが現状です。しかしその分、伸びしろがたっぷりあるともいえます。
点眼薬市場が横ばいを続ける中、“目に効く飲み薬”が新たな需要を取り込んで、アイケア市場で効果を発揮することができるでしょうか、今後に注目です。
※参考:
塩野義製薬 http://www.shionogi.co.jp/
興和 http://www.kowa.co.jp/
ロート製薬 http://www.rohto.co.jp/
日経産業新聞(2010年12月3日付)