“わたし、電気オンチだから”“ウチの電気製品は全部、主人まかせなので”という女性は、近頃めっきり減ってきているようです。もはや、携帯電話やパソコンに慣れ親しんだ女性たちに、昔のような苦手意識は存在しません。その証拠に、購入客の約7割が男性で占めるといわれる家電量販店に、このところ女性客が急増しています。
店側は、そんな女性客に対応すべく、女性販売員を増強し、同性によるフレンドリーな接客と、女性ならではの目線で収益アップを図ろうとしています。
当然のごとく、もっとも顕著な売り場は、美容家電です。女性の下着売り場に男性店員がいると買いづらいのと同様、ドライヤー、美顔器、除毛器などが並ぶ売り場には圧倒的に女性の販売員の数が多いのが特徴。現場の女性販売員の声はいたるところに反映され、品ぞろえはもとより、手書きのPOPや女性誌の切り抜きを使った販促、携帯向けブログなど、女性ならではの情報発信センスが、客との距離を縮め、購買へとつなげています。
カメラ売り場も、女性(客&販売員)の進出によって大きく様変わりしました。特にデジタル一眼カメラ。これまでは、ほとんどの客が男性、それもカメラの性能・機能・撮影技術など、いわゆるカメラ上級者のこだわりに満ちたオトコくさい世界でした。ところが、ここ数年の低価格化に伴い市場全体で女性の需要が急増、“カメラ女子”と呼ばれる20〜30代のデジタル一眼を求める女性たちがオトコの牙城である家電カメラ売り場に押し寄せて来たのです。そして、女性客を意識したディスプレイが施されたカメラ売り場ではいま、これまで聞いたこともないような会話が販売員と客との間で交わされているのです。「このボディの色、ブラウン系の服に合うかしら?」。カメラを販売する売り場で、ファッションのコーディネートの話など考えも及ばなかった男性販売員には、手に負えないレベルの話題です。
「ビックカメラ」では、女性販売員による「カメラ女子部」を発足。女性目線からの販促や売り場づくりを推進しています。例えば、コーディネート例としてマネキンに首からカメラをぶら下げて展示してある他、カメラを服にあてがう女性客が多いため、姿見の導入も検討中とか。また、カメラバッグやストラップといったアクセサリー類は、現場の女性販売員の意見を採り入れて仕入れています。
今回取り上げた商品以外、例えばオーディオ、白物家電などに関しても、同性の販売員に接客してもらいたいとの女性客の声が少なくないといいます。女性販売員と女性客との間に“働く女性同志”という共通項が生まれ、男性販売員にはない親近感、連帯感となって購買へと結びつくのかもしれません。
※参考:
ビックカメラ http://www.biccamera.com/
日経MJ(2010年9月1日付)
一年を通して楽しむことのできる水族館に、シーズンオフはありません。全国に100近くあるとされる水族館ですが、どの館も、年々、よりエンターテイメント性を打ち出して個性を競い合っています。いまや、単に海の生き物たちを鑑賞するだけといった、超スタンダードで“受け身”のタイプの水族館は逆に珍しいほど。何らかのプラスアルファを加味した水族館が当たり前のようになりつつあります。
代表的な例が、イルカやアシカ、トドのダイビングショーやペンギンの散歩といった「演出ショータイプ」。また、イルカと泳ぐことができたり、エサやり体験やトレーナー体験などができる「触れ合い体験タイプ」。さらに、貝がら工作や魚拓づくりの教室を催したり、イカ墨で書き初め!などという「参加型イベントタイプ」など。
なかでも、そのユニークさで注目を集めているのが、「アクアマリンふくしま」(いわき市)内に、今年3月オープンした子供向け体験施設「アクアマリンえっぐ」です。なんとそこには、アジやメバルなどが放された釣り堀があり、1本800円で釣り竿を借り、釣った魚は1尾80円で購入できるというもの。話題を集めているのはそれだけではなく、さらに、釣った魚を自分たちでさばき、その場で唐揚げにして食べることができるのです。「えっぐ館」のテーマが「自然の大切さ」と「命の尊さ」とあるように、この体験プログラムは、魚の体の仕組みなどを学びながら“人間は動物の命をいただいて生きている”という食育プログラムにもなっています。これまでの水族館の常識をくつがえすような新発想の試みが功を奏したのか、来館者は大幅に伸び、全国からの水族館関係者の視察も増え、旭山動物園の“行動展示”が注目されたのと同様の現象が起きています。
一方、大人のスポットとして注目されたのが、神戸の「須磨海浜水族館」。巨大水槽の前にアクアバーが出現。4月から9月末までの毎週土曜夜だけの限定営業でしたが、音楽ライブを催したりと、水族館だということを忘れるようなオシャレな空間が展開されました。
他にも、まだまだ個性的な水族館が数多く存在し、とても紹介し尽くせません。
動物園の来場者数が減少傾向にあるのに対し、水族館はなだらかな右肩上がりで伸びており、高い人気を維持しています。水族館同志が互いに切磋琢磨して競い合うという“進化”のたまものと言えそうです。
※参考:
全国水族館ガイド http://www.web-aquarium.net/
日本動物園水族館協会 http://www.jazga.or.jp/
アクアマリンふくしま http://www.marine.fks.ed.jp/
須磨海浜水族館 http://www.sumasui.jp/
日経MJ(2010年9月22日付)
自宅で料理・調理して食事をすることを「内食(うちしょく)」と言いますが、これに関連して自宅で呑むお酒を「内呑み」だとすると、その筆頭は意外にも「梅酒」ではないでしょうか。ビールや焼酎、ウイスキーなどとちがって、“梅酒BAR”や梅酒専門の居酒屋というのは聞いたことがなく、自ずと自宅でたしなむということになるからです。
口あたりがよく、軽い酔いで、どちらかというと女性を中心に支持されているせいか、最近では健康や美容を意識した梅酒が続々と出回っています。
月桂冠は、“キレイを応援する機能性リキュール”と銘打った「キレイ梅酒」を発売。香料・着色料・酸味料無添加の梅酒をベースに、美に対して敏感な女性の琴線に触れる素材、コラーゲンを、1本当たり100ミリリットル中1,000ミリグラムを配合。“キレイを応援する”を開発テーマに、女性社員を中心に飲んでキレイになるお酒の商品化に成功しました。
最大手のチョーヤ梅酒からは、いまビール系やコーヒー系飲料のトレンドとなっている“カロリーオフ”をうたった「うめほのり」を発売。同社の濃厚タイプの梅酒比55%オフを実現したもので、砂糖の使用量を減らし、アルコール分も5%と、他の商品の半分以下に設定してあります。
キリンビールは、「かろやか梅酒」をリニューアル。味わいはそのままに、カロリー60%オフ、糖質85%オフと、旧タイプよりオフ率を引き上げました。サントリーも、同社の既存品よりカロリー20%オフの「梅酒にしませんか」を発売中です。
梅酒の出荷数量は6年連続のプラス。今年も好調で、市場の勢いに衰えは見えません。爆発的なブームが期待できるといった類の商品ではないものの、手頃な価格のため景気によって大きく左右されるということもないのが梅酒の強み。元来持っている“健康に良さそうなお酒”というイメージは、今後もますます支持されていくことでしょう。
※参考:
月桂冠 http://www.gekkeikan.co.jp/
チョーヤ梅酒 http://www.choya.co.jp/
キリンビール http://www.kirin.co.jp/
サントリー http://www.suntory.co.jp/
日本洋酒酒造組合 http://www.yoshu.or.jp/
日経産業新聞(2010年9月14日付)