今は昔、ではありませんが、1997年に市場規模が30兆円にも届こうかという好況を迎えた外食産業ですが、その年をピークに、その後はなだらかな曲線を描いて下がり続けます。2007年に一時、持ち直したかに見えましたが、同年後半からの原材料の価格高騰による生活品の値上げにより、消費者の生活は完全に守りに入り、再び家計簿から外食費が削られるという事態となって今日に至ります。
減り続ける客数、それには客単価を上げるしかありません。しかし、この低価格ブームの中、一品当たりの単価をアップすることが得策でないことは明らか。それどころか、単価を下げたにもかかわらず客数が戻りません。つまりは売上げが上がらないという、負のスパイラルに陥っているというのが多くの外食チェーンの現状です。
外食各社は、なんとか客離れを食い止め、もう一度振り向いてもらうためのあの手・この手に懸命です。その一つが、メインディッシュの脇役にすぎなかったサイドメニューに光を当てる販促策で、各社“ついで注文”を促して客単価を上げようという古典的ともいえる戦術に工夫を凝らし、知恵を絞ります。
ファミリーレストランの「ジョナサン」では、一品290円のサイドメニュー15品目の中から、一度に2品注文すれば500円!というサービスを行っています。実質、80円のおトクということになります。「ヤリイカの唐揚げ」「オクラとベーコンのソテー」など、既存のサイドメニューに加えて、このサービス専用のメニューも開発。つまみ需要を中心に時間帯、年代、性別を問わず好評です。
牛丼チェーンでは、もともとサイドメニューが充実していますが、例えば「吉野家」では、サイドメニューをさらにセット化して販促に力を入れています。「サラダセット」が、サラダ+みそ汁セットで120円、サラダ+とん汁セットが220円、サラダ+けんちん汁セットが190円。同様に、お新香+汁物、キムチ+汁物と、計9種類のセットがそれぞれサラダセットと同価格で販売されています。
「ロイヤルホスト」では、「88(はちはち)サラダ」(税抜88円)が、この価格でこのうまさ!と評判です。お店でカットした新鮮なキャベツの量もさることながら、ドレッシングやカリカリベーコン、パセリなどが独特の食感と味わいでバリュー感をアピールしています。
「ロッテリア」は、“新しいスナックタイム”の提案です。「2時からセット」と銘打ち、ドリンクと組み合わせた「クレープ」や「産直まるごとポテト」など5種類のサイドメニューを290円と390円で提供するというもの。
残念ながら、メインディッシュだけでは売上げの維持が難しくなってきた昨今の外食産業。サブ的存在だったサイドメニューを、“ついで注文”という待ちの姿勢ではなく、より効果的に活用する闘いはこれからも続きそうです。
※参考:ジョナサン http://www.jonathan.co.jp/
吉野家 http://www.yoshinoya.com/
ロイヤルホスト http://www.royalhost.jp/
ロッテリア http://www.lotteria.jp/
日経MJ(2009年8月19日付)
パソコンや携帯電話などのデジタル機器、空調などのオフィス環境、外に出れば花粉や紫外線と、私たちの目は、知らず知らずのうちに日々酷使されています。現代生活をおくる中で、目の疲れを感じない人はいないのではないでしょうか。
そこで、点眼薬、いわゆる「目薬」の出番です。
目薬に代表されるアイケアのニーズは年々高まっており、市場規模も08年度には700億円を超えるまでに拡大しています。また、参入メーカー(約12社)の多さに比例して、商品アイテムの数が多いのもこの市場の特徴です。一人当たりの目薬の売上高が欧米の約3倍(ロート製薬調べ)というのも、日本人の目が欧米人に比べて特別弱いというわけではなく、症状や使用ターゲットによってキメ細かな機能商品が開発されている表れといえます。
市場の傾向としては、コンタクトユーザーをメインターゲットとした“人工涙液”タイプの急成長が挙げられます。いわゆる「ドライアイ」対応の目薬です。パソコンやケータイ画面などを夢中で見ていて、まばたきの回数が減ったり、空調などの影響で目の乾きをおぼえた時に、足りなくなった涙分を補おうというものです。さした時のクール感も大切なセールスポイントです。
もう一つの傾向としては、低価格訴求の製品に対し、高機能・高付加価値の高価格帯製品の伸長に見られる、価格帯の二極化です。
さらに近年忘れてはならないのが、「アレルギー用点眼薬」、つまり花粉症対策の目薬です。市場規模もなだらかな右肩上がりのカーブを示していますが、スギ花粉の飛散量によって売上げが左右されるという、このカテゴリーならではの市場特性を持っています。
商品的に最も激戦区なのは、やはり「疲れ目」のカテゴリーです。パソコンで長時間作業していると毛様体筋(ピントを合わせる筋肉)がオーバーワークとなり、充血したり、疲れ目・かすみ目の要因になります。この筋肉に作用する「ピント調筋機能改善成分」配合の製品が、中高年を中心に売れ行きを伸ばしています。
これからも、私たちの生活は、さらに目薬のお世話になるような場面が増え、それにつれて目薬の機能はますます細分化されていくのでしょうか。
※参考:ロート製薬 http://www.rohto.co.jp/
ライオン http://www.lion.co.jp/
参天製薬 http://www.santen.co.jp/
大正製薬 http://www.taisho.co.jp/
朝日新聞(2009年8月8日付)
ご存知でしたか? こんなに多くの“大学ブランド”の食品があることを。
いま、全国の国公私立大学が独自に研究を重ねて開発し、地元メーカーと協力して産学連携で製品化されたものに、地元の人はもちろん、地域外の人や企業からも熱い視線が送られています。その数とバラエティの多さは、とてもこのスペースでは紹介しつくせないほどですが、そのほんの一部を紹介してみましょう。
・奈良女子大学(生活環境学部)→“奈良漬プロジェクト”の一環として奈良漬が入った「奈良のかすていら」「奈良漬アイスもなか」などのスイーツ類。また、たいへん珍しい奈良の八重桜の酵母を用いた清酒「奈良の八重桜」。
・宇都宮大学(農学部)→附属の農場で低ストレス飼育によって生産された良質な生乳を使った「モッツアレラチーズ・ミルクソース」や「モッツアレラのたまりづけ」。
・佐賀大学(農学部)→数の子のような食感で、何もつけずに食べても塩味のする不思議な新野菜「バラフ」を研究・開発。
・玉川大学(農学部)→同大ミツバチ科学研究センターとの連携によって、高品質の「たまがわはちみつ」が作られました。
・山形大学→プラスチックの発泡成形技術にヒントを得て開発された「米粉100%パン」。すでに「ラブライス」の名称で商品化されています。
・山梨大学→世界初、海洋酵母を使ったワイン「海洋酵母仕込み」。
・近畿大学(水産研究所)→32年の歳月をかけ、2002年に世界で初めてクロマグロの完全養殖に成功。数々の賞に輝き、すでに「近大マグロ」の商標で全国へ流通。“全身トロ”の旨さで人気を博しています。
・日本大学(国際関係学部・三島校舎)→地元、静岡県三島産の馬鈴薯を使った「みしままんじゅう」。三島市の街おこし支援として、企画の立ち上げ時点から地元企業と連携して商品化を実現したもので、地元の駅や商店、ネットショップで販売される人気商品です。さらに、売上げの一部がカンボジアの国際開発協力に使われ、すでに3基の給水塔が現地で稼動中。
・広島大学(大学院医歯薬学総合研究所)→植物の乳酸菌だけで発酵させたヨーグルト「植物の恵」。
難しい論文ではなく、美味なる食べ物で研究成果を世に問う、というコンセプトの大学ブランド食品。“学校発食品”という特殊な成り立ちを背負っており、いわゆる「市場」とはひと味違う存在ですが、発想や研究能力はプロの企業顔負けといった面も。ただ、残念なことに、これらの優れた食品の多くは販路を持っていないため、特別なイベント(紀伊國屋書店+小学館の連動企画「大学は美味しい!!」フェアなど)に出品・販売する他には一般的に流通していないのです。ぜひ、相互利益の元、企業とコラボレーションして、新しいマーケットの開拓につなげてほしいものです。
※参考:紀伊國屋書店 http://www.kinokuniya.co.jp/
日経MJ(2009年8月3日付)