今でこそ北海道から沖縄まで33カ所(2009年7月現在)と増え続け、総売上げも2008年度で5,000億円超の市場規模を誇るまでになったアウトレットモールですが、16年前、日本に初めて登場した頃の姿は、現在の隆盛とはほど遠いものでした。
「Outlet」、直訳すると「出口」「はけ口」という意味ですが、70年代末に「Factory Outlet」=工場直売店としてアメリカで生まれたのが発端です。キズ、汚れなどで規格外となった自社製品をメーカー直営で安価で販売するという店舗でした。これが発展し、数店舗が集まって出店するモール形式となったのが「アウトレットモール」です。80年代のことでした。
さて、1993年、埼玉県に初上陸したアウトレットモールですが、当初5年間ほどは、はっきり言って惨たんたるものでした。第一に「アウトレット」という業態そのものの認知度が低く、かつ商品に対しても“安かろう悪かろう”的なネガティブなイメージが強く、当然客足も伸びませんでした。
出店する側も、在庫処分専門の直営店を持つことで、百貨店など正規店舗の適正価格が崩れることを懸念して消極的でした。しかし、百貨店の売上げ不振、ネット通販の伸長、加えて消費者のシビアな節約志向などの時代の流れに、出店するメーカー側も「正規店舗から遠く離れた郊外でなら…」と、渋々にせよ背に腹は代えられぬ状態になってきました。
やがて、出店する側が商品構成の見直しをはじめ、アウトレット専門の事業部を設けたり、アウトレット向けの業態を新たに開発したりと、本腰を入れ始めるにつれ、認知度も高まっていきました。
1998年頃には、関東中心だったのが関西、北海道へと拡がり、2000年にはその波が九州にも上陸。この年に8つものアウトレットモールが開業した後は一旦成長速度が鈍りましたが、再び2007年から08年にかけて動きが活発になり、現在のアウトレットモール市場の拡大に拍車がかかりました。
ファッション・雑貨などの「キャリー品」(前シーズンの売れ残り品)や「廃番品」(製造中止した品)、「今期物」(正規店舗での展開が終了したシーズン品)、「B級品」(製造過程で生じたキズ、色ムラのある品)、サンプル品といった、いわゆる“ワケあり在庫品”を販売することで、メーカーにとっては直営店のイメージダウンにつながることなく効率的な在庫処分が、消費者にとっては正規の商品とさほど差のない一流ブランド品が30〜50%OFFの格安で手に入ると、双方にメリットがあります。
単なる“消費スポット”から、よりテーマパーク的な“アミューズメントスポット”へ。高速道路料金の値下げなどを追い風にますます盛り上がりを見せているアウトレットモールですが、同一商圏内での競合も増えており、そろそろ飽和状態に近い、という声も聞こえます。
ソフト、ハード両面に“眼”が肥えたアウトレット慣れしたアウトレッターたちの欲求をどのように満たしていくのか。それが今後の大きな課題といえます。
※参考:朝日新聞(2009年6月20日付)
全国アウトレット情報 http://www.outlet-j.mobi/about_outlet.html
ファッションシティ http://fashioncity.jp/shops/outlet
知人の娘さんの結婚式に出席した際、新婦の高校時代の友人という女性のスピーチが素晴らしく、久し振りに感動してしまった・・・実は、この女性が新婦とはまったく関係のない代役スタッフだとしたら!?
いま、結婚式などに招待客の代役を派遣するビジネスが注目されています。
代理出席を頼む側の理由はさまざまです。
「両家の出席者の数を揃えたい」「出席予定者の会社が倒産し、急きょ欠席になったので」「新郎や新婦が派遣社員のため同僚役や上司役をお願いしたい」などなど。
また、依頼は結婚式に関することに限りません。
「代わりにお焼香を」「告別式で記帳してきてほしい」といった葬儀関連から、「私の代わりにセミナーに出席してほしい」「合コンの人数合わせで参加してほしい」「授業参観に父兄の代役で」「体裁を保つため秘書として同行してほしい」といったものや「友人の前で恋人として振る舞ってほしい」「お見合いを断るため両親に恋人として紹介したい」「取引先との食事会に妻の代役として参加してほしい」といった“彼氏(夫)・彼女(妻)”の代役。果ては、「卒論を代筆してほしい」「代わりにお墓参りをしてきて」「指定時間に指定した内容の電話をかけてアリバイ作りに協力してほしい」といったものまで多種多様。
このビジネスを2001年に立ち上げ、パイオニア的存在である「オフィス エージェント」(東京・大阪)によると、昨年の依頼件数は本格的に代役派遣を始めた2006年の2.5倍増だといいます。
日本全国、365日、24時間対応。派遣料金は、結婚式関連の場合、スタッフ一人につき(以下同様)、交通費別で2万円。うち1万円がスタッフのギャラとなります。その他、スピーチをすると1万円、余興や受付が5千円。また、お通夜・告別式の参列は1万5千円、恋人代行が3万円、お墓参りが1万円、アリバイ協力は案件にもよりますが1万円、卒論の作成は1文字10円となっています。
ちなみに、同様の代役派遣会社「アクティング エージェント サービス」(東京)の場合、披露宴用のスピーチ作成には、元TV関係の脚本家や演出家の専門スタッフの手によってドラマチックな内容に仕上げてくれるとのこと。また、卒論の代筆(1文字8円)に関しては、東大、慶大、東大大学院などの卒業者を揃えているといいます。
現在、首都圏で10社ほどに増えてきたという代役派遣ビジネス。近頃では、上司を式に呼びたくないという人が増えているといいます。また、何年も連絡を取り合っていないのに、人数集めのために招待状送りつけてくるよりマシ、という声もあります。
このビジネスの繁栄の陰には、希薄な人間関係、低迷する経済状況が少なからず影響していることは否めません。そのうち、新郎・新婦の代役、なんてことにならなければいいのですが…。
※参考:オフィス エージェント http://www.office-agents.com/
アクティング エージェント サービス http://acting-agent-service.com/
朝日新聞(2009年6月5日付)
ついこの間まで、喫茶店に一歩足を踏み入れるとタバコの煙がもうもう、というのが常識でした。まるで、コーヒーとタバコがセットのように。
しかし、今やそんな光景は“昔ばなし”、遠い昭和の風物詩。
タバコの身体への害が叫ばれはじめ、受動喫煙の煙害から身を守るために「嫌煙運動」が広がり、それは次第に“タバコ憎けりゃ”式に喫煙者の知性や人間性にまでその風当たりが及ぶに至りました。なにしろ、TVドラマやCMの喫煙シーンに非難の声が寄せられるほどの“反社会的行為”に見なされるまでになってしまったのです。きちんとマナーを守って愉しんでいた愛煙家たちにとっては、たまったものではありません。
やがて、カフェでは続々と分煙、あるいは完全禁煙体制が徹底され、増え続ける“おタバコをお吸いになられないお客様”のための席が徐々に増席されていきました。喫煙したければ、比較的タバコOKの席を設けているファストフード店で、どこか居心地の悪さを感じつつも、そそくさと一服をすませることになります。
そんな、国(厚労省)からもその害について肺ガンへの近道だと言われ、法律(健康増進法)でも喫煙を容認しない方針が打ち出されるといった時代の風潮に、あえて逆らうように登場したのが、いま話題の「喫煙カフェ」です。社会的良し悪しは別にして、とりあえずスモーカー諸氏にとっては朗報にちがいありません。
店名は「カフェトバコ」(経営=東和フードサービス)で、昨年10月に有楽町に1号店を、今年4月には新橋に2号店をオープンしました。入口には「お子様連れの方や20歳未満の方は御遠慮いただければ幸いです」と貼り出されています。コーヒー1杯250円。平日の昼時などは、サラリーマンを中心にほぼ満席のにぎわいとか。
1階から3階まで、44席すべてが喫煙席。煙が店内に充満しないよう、各フロアの天井には2台ずつの空気清浄機を設置して“空気”には細心の注意が払われています。
それにしても、「タバコを吸わない人お断り!」とは、分煙も嫌煙も超えた見事なまでの逆転の発想です。店側は「禁煙とは逆の道に商機があると考えた」と言い、今後5年で10店舗程度の展開を目指しています。
世の中の禁煙を求める流れが強まれば強まるほど、このビジネスへのニーズが高まっていくというアンチの図式です。今はまだ動き始めたばかりの、東京ローカルのムーヴメントですが、はたして全国にどこまで「喫煙カフェ」の“煙”がたなびいていくのか、愛煙家も嫌煙家も一緒に注目していく価値はありそうです。
※参考:日経MJ(2009年6月1日付)
東和フードサービス http://www.towafood-net.co.jp/