昔から私たちの生活の中には、“買わずに、こしらえる”文化が根強くあったものです。三度の食事はもとより、漬け物、手編みのセーターにマフラー、子供の服、お餅、ちょっとした野菜、犬小屋まで。そんな忘れかけていた暮らしの基本が、いま、経済不況、雇用不安といった百年に一度とやらの不景気のおかげで(!?)よみがえりました。大節約時代の到来です。
好況の時代には何の疑いもなしに恩恵にあずかっていたモノやサービスを、自らの手でまかなってしまおうという、セルフメード・ビギナーたちが増えています。苦肉の策と言ってしまえばそれまでですが、いざやってみると、家計の負担を減らすという目的を超えて、けっこう新しい趣味との出会いだったり、自分の意外な才能に目覚めたりと、思わぬ副産物があったりして…。
家計の節約で真っ先に手をつけるのが、「食」になります。
コンパクトな「精米機」(4合用で3万円台:ツインバード工業)が人気です。お米屋さんの米より美味しく健康にもよく、米ぬかも使えるというのが売れ行き好調の理由とか。
自宅で“しいたけ”を栽培してしまおうという、「もりのしいたけ農園」(1,080円:森産業)も前年比44.7%増と大好評です。菌床に菌を植え込んだ栽培用のキットで、1週間ほどでシイタケがニョキニョキ!エリンギやシメジ、ナメコなどのキットもあります。
赤ちょうちん派の男性諸氏に好評なのが、家庭用のやきとり専用電熱器(2,000円前後)。このおかげで、明らかに呑み代が減った、との声も。
“食”以外では、子供の散髪代を節約するというわかりやすい理由からでしょうか、「電動バリカン」(4,000〜8,000円:テスコム)が復活して売れています。
また、靴補修用グッズの売上げも伸びています。なかでも好調なのが、すり減ったカカト部分の靴底を再生するキットです。補修剤と紙ヤスリ、プレート、ヘラがセットされていて、代表的なのが「シューズドクター」(900円前後)。お父さんたちは、必要だから仕方なくとはいえ、案外、DIY感覚で楽しんでいるのかも…。
紹介できたのはほんの一部ですが、それぞれの商品の根底に流れているのは、いかに支出を抑えるかという家計の一大テーマに応えるためのものばかり。そして、喜ばしいのか哀しいことなのか微妙ですが、各商品とも対前年比の売上げを大幅に伸ばしているという事実です。
でも、やりくりが大変と言いつつも、どこかなんか楽しそうなのが、せめてもの救いでしょうか。
※参考:日経MJ(09年2月6日付)
ツインバード工業株式会社 http://www.twinbird.jp/
森産業株式会社 http://www.drmori.co.jp/
株式会社テスコム http://www.tescom-japan.co.jp/
あなたの地元の名産品は何位でしょう?
全国各地の名産品といわれる390品目についてのブランド力調査※が実施され、実に興味深い結果が出ましたのでお届けします。
390品中、総合ランキングの1位に輝いたのは「讃岐うどん」でした。前回06年調査の4位からトップの座へ。2位には、前回と同位、“佐藤錦”に代表される「山形さくらんぼ」が選ばれました。3位は「紀州南高梅」で前回7位からの躍進でした。
以下(〈 〉内は前回順位)、【4】〈1〉夕張メロン 【5】〈3〉博多辛子明太子 【6】〈-〉白い恋人 【7】〈9〉魚沼米【8】〈6〉愛媛みかん 【8】〈8〉鳥取二十世紀梨【10】〈40〉大間まぐろ、が10位までに選ばれた名産品たちです。なかでも、30ランクも急上昇した、青森・大間のまぐろは、讃岐うどんと共に、テレビなどメディアの露出度の高さの成果といえそうです。
上位にランクされた名産品は、さくらんぼ、梅、メロン、米、みかん、梨と、果物を中心とした農産物が多いのが特徴です。特に「紀州南高梅」は、“高くても購入したい”の評価指標(※印参照)で、「博多辛子明太子」に代わって首位に踊り出ました。この指標の2位は「山形さくらんぼ」と「松阪牛」が分け合いました。
また、前回、総合ランキングで1位だった「夕張メロン」は4位に後退。産地の夕張市の財政破たんが響いたのか、残念な結果となりました。
では、実際にこれらの名産品を購入したことのある人の満足度はどうなっているのでしょう?
そのベスト10を見てみましょう。(〈〉内は総合ランキングの順位)
【1】〈183〉大分しいたけ 【2】〈322〉新潟茶豆 【3】〈113〉嬬恋高原キャベツ【4】〈203〉阿蘇たかな漬 【5】〈1〉讃岐うどん 【6】〈3〉紀州南高梅 【7】〈105〉なると金時 【8】〈53〉有田みかん【9】〈88〉博多あまおう 【10】〈305〉新潟清酒
いかがでしょう、お気付きかと思いますが、先ほどの総合ランキングのベスト10に入った名産品のうち、満足度ランキングのベスト10に入っているのは、「讃岐うどん」と「紀州南高梅」の2品目だけです。満足度の高い名産品は、総合ランキングに顔を出していない、ある意味“隠れた名産品”というか“知る人ぞ知る名産品”といえるのかもしれません。
消費者は、まず評判とかイメージで購入し、購入してから吟味する、文字どおりよーく味わってから本来の評価を下すということのようです。
※日経リサーチ「2008地域ブランド戦略サーベイ」/全国の16〜69歳の男女を対象にインターネットで実施。回答者は10,638人。1)他とは違う独自性 2)愛着度 3)プレミアム性(値段が高くても購入したい)4)推奨意向(人に薦めたい)、の4項目の評価指標について五段階評価してもらい総合指数化した。
※参考:(株)日経リサーチ「2008 地域ブランド戦略サーベイ」
http://www.nikkei-r.co.jp/area_brand/
日経MJ(2009年2月11日付)
「おなかの調子を整える○○○ヨーグルト」「歯の健康を保つ△△△ガム」「コレステロールを下げる◇◇◇ドレッシング」などなどの食品にはみんな堂々とあのマークが表示されています。手足を伸ばした人のシルエットでお馴染みの「トクホ」のマーク。正確には「特定保健用食品」の証しです。
ここ数年、私たちの「健康指向」や「ダイエット指向」の追い風もあって、特に目にする機会が増えてきたように思います。
旧厚生省によって1991年にスタートしたこの制度も、すでに18年が経ちます。特定の効能が科学的に証明された食品に対し、国から認可されれば宣伝広告やパッケージでその効能をうたうことができるという、世界で初めての画期的な制度なのです。
09年3月現在、厚労省から表示許可を受けているトクホ食品は847品目。それらの品目の用途別で最も多いのが、「おなかの調子を整える(整腸)食品」、次いで「コレステロールが高めの方の食品」「血糖値が気になり始めた方の食品」「血圧が高めの方の食品」「中性脂肪・体脂肪が気になる方の食品」「歯を丈夫で健康にする食品」「骨の健康が気になる方の食品」「ミネラルの吸収を助ける食品」、の順で続きます。
商品数も年々増加して、市場規模は10年前の約5倍に拡大しているトクホ市場ですが、メーカー側にとって認可を得るのは容易ではありません。審査は大変厳しく、数々の実証実験によって効果や安全性を検証しなくてはなりません。莫大な開発費用と多くの時間を要する、まさに高コスト商品といえます。広告のキャッチコピーに大きく「トクホ」とうたっているサントリーの「黒烏龍茶」の場合は、4年もの歳月を費やしたといいます。
しかしその一方、他社製品との差別化にはやはりトクホ表示がモノを言います。機能性商品として“効果”を明確にアピールできるトクホの信頼性は大きく、多少高価でも購入するという消費者心理もあって、販売戦略上の大きな武器となっていることは否めないようです。
※参考:朝日新聞(09年1月25日付)
http://www.e-tokuho.jp/
http://www.jhnfa.org/tokuho-f.html
週刊金曜日(09年3月10日号)