金融・お金の情報
2021.05.06更新
 

“物語”に参加して社会貢献。「応援消費」に、出費惜しまず。
 

コロナ禍を受けて窮地に陥った飲食業界や観光業界、さらにはそこに食材を供給していた農・漁業生産者などが被った多大な経済的損失を、消費者がお金を使って支援しようという「応援消費」の気運が一段と高まっています。
“買って”“食べて”“参加して”と、応援の形は様々ですが、最も身近なものが、外食・テイクアウト・デリバリーといった、支援の気持ちからの飲食。また、生産者へは、直販サイトで食材・加工品の購入などが一般的です。

応援消費の代表格に、「クラウドファンディング(以下、CF)」があります。「crowd=群衆」と「funding=資金調達」を組み合わせた造語で、インターネットを介して自分の活動や夢を発信し、その思いに共感して応援したいと思ってくれる不特定多数の人から少額ずつ資金を募ることを指します。
CFの形態は、大きく3つに分けられます。
起案されたプロジェクトに支援者がお金を寄付する「寄付型CF」。被災地支援など、社会貢献性の強いプロジェクトが中心で、金銭や物品のリターンは発生しません。
起案されたプロジェクトにお金で支援(購入)し、そのリターンとして商品やサービスを得る「購入型CF」。
そして3つ目は、特定の事業に対して個人投資家から出資を募る「投資型CF」。金銭的リターンと合わせて、関連の商品やサービスなどを得ることができます。
これらのタイプに加え、最近生まれたのが「ふるさと納税型CF」。自治体が解決したい課題をプロジェクト化し、それに共感した人から“ふるさと納税”で寄付を募る仕組みで、寄付金の控除を受けられるのが特徴です。

米国生まれのCF。2011年の震災直後に日本初のCFサービス[READYFOR(レディーフォー)](寄付型)が誕生。続いて同年6月には、購入型の[CAMPFIRE(キャンプファイヤー)]が開設、2年後にはIT企業[サイバーエージェント]の子会社が運営する[Makuake(マクアケ)](購入型)が参入しました。
制作支援プロジェクトへのCFから、あの大ヒット映画『カメラを止めるな!』が生まれ、昨秋、新劇場を開いた「劇団四季」のCFには目標をはるかに上回る2億円超が寄せられ、医療従事者にマスクを届けるプロジェクトは、開始から一日足らずで1億円に到達するなど、起案者の“物語”に共感したものにはお金を惜しまないという「応援消費」。このうねりは、決して一過性のものではなく、コロナ後の“ストーリー消費”へとつながっていくことが予想されます。



※参考:
READYFOR           https://readyfor.jp/
CAMPFIRE            https://camp-fire.jp/
Makuake             https://www.makuake.com/
リクルートライフスタイル     https://www.recruit-lifestyle.co.jp/
日経MJ(2020年12月13日付/2021年1月18日付/同2月1日付)


お店の方からやって来る。今や、地域インフラの役割も担う「移動販売」。
 

ネット通販の普及が加速するなか、店舗を構えて客を待っているだけでは厳しくなる一方の小売業。加えて、コロナ禍による外出自粛や、密になりやすい買い物は回避の傾向。それにつれ、売り場の風景は様変わりし、販売形態も変化。店の方から客の元に出向く「移動販売」という形態の需要が一段と高まっています。

[メガネスーパー]では、メガネと補聴器の出張訪問サービスを実施。移動式店舗車両に、レンズを削る加工機を搭載し、検査・販売のほか、調整・洗浄・修理など店舗と同じレベルのサービスを提供します。格安メガネチェーンとの競争激化を背景に、こちらから消費者に近づくことが生き残りのカギとみた同社は、新規出店を抑える代わりに移動販売車の増強に踏み切りました。
[無印良品]でも昨春から、軽トラでの移動販売を開始。山形県酒田市の山間部を中心に、週3回、食品(約60品目)や生活用品(約110品目)、衣料品(約30品目)を積んで巡回。また、昨年8月には、新潟県上越市で地元のバス会社と連携し、使用していない観光バスを改装して移動販売「MUJI to GO」を実施しました。

スーパー各社も移動販売を重要な販路の一つと捉え、積極的に取り組もうとしています。ただ、スーパーの多くは、移動販売のノウハウを持ち合わせていません。独自でノウハウを構築するにはコストも手間もかかります。そこで、確実に高まることが予想される需要に応えたいスーパーは、移動販売専門の事業者と手を組みます。その提携先として、現在、大手から地方のスーパーまで引く手あまたなのが、移動スーパー最大手[とくし丸](徳島/親会社はオイシックス)です。
とくし丸は、本格的な冷蔵設備を搭載した専用の軽トラに、地元の契約スーパーから仕入れた肉、野菜、果物、パンやお菓子、寿司に惣菜など400品目ほどの食材を積んで定期的に利用者の自宅までやって来ます。
とくし丸とタッグを組み、現在16台(2020年12月時点)を運用している[イトーヨーカドー]は、来年度までに全国100店舗に移動スーパー車両を配備する計画です。ヨーカドーの従業員が運転して巡回、自治体と協力して単身高齢者の見守り機能も担います。

近隣にお店のない過疎地など、日常の買い物に不自由を感じている人、いわゆる“買い物弱者”は、全国で700万人と推計(経産省)されていますが、これはなにも過疎地域に限った話ではありません。高齢の単身世帯が急増している都市部でも起こり得る共通の問題です。
現物を、見て・触って買い物ができる「移動販売」は、ネットでの買い物の弱点を補う販売手段としてニーズが再浮上しています。
団塊の世代が大挙して高齢化へと突き進む向こう十数年、間違いなく需要は膨らみ、買い物弱者のマーケットは軽視できない規模になることでしょう。“待つ販売”から“出向く販売”へ----「移動販売」という流通形態は、小売業の未来の姿なのかもしれません。



※参考:
メガネスーパー        https://www.meganesuper.co.jp/
無印良品           https://www.muji.com/jp/
とくし丸           https://www.tokushimaru.jp/
イトーヨーカドー       http://www.itoyokado.co.jp/
経済産業省          http://www.meti.go.jp/
日経MJ(2020年12月2日付/同12月18日付/同12月25日付/2021年1月1日付/同1月11日付/同1月27日付)


感染リスク低減にも貢献。コロナ後のモデルとして注目される、「無人店舗」。
 

慢性的な人手不足に陥っている飲食・小売業界では、店舗の省人化は喫緊の課題の一つ。コロナ禍以降は感染リスク低減という視点も加わって、これまで以上に省人化テクノロジ―の開発と実証実験が活発化しています。その一つの形として、AIを使った「無人店舗」が相次いで登場しはじめています。
無人店舗とは、AIやキャッシュレス決済の技術を生かし、レジスタッフを置かない店舗を指します。米国や中国が先行しており、日本は出遅れ気味。

昨年3月、東京「JR高輪ゲートウェイ駅」構内に、完全無人化のAI決済店舗1号店「TOUCH TO GO」が開店して話題となりました。
[すかいらーく]グループの「ガスト」「ジョナサン」「バーミヤン」では、試験的にセルフレジ(清算業務を客自身が行う)の導入を開始。ファミレス業界では初となる試みとなりました。
[ローソン]は昨年2月、川崎でレジレス店舗を実験的にオープンしました。店内天井には多くのカメラとセンサーが設置。客は事前にスマホアプリをダウンロードし、クレジットカード情報を登録した後、アプリ上のQRコードで入店(手のひら静脈認証ゲートも併設)。欲しい商品を手に取り、そのまま店を出るだけで自動的に決済が完了するシステムです。
省人化の波は当然スーパーにも及び、[トライアル]の一部店舗では、カートとレジが合体した“レジカート”で会計の完全セルフ化を実現しています。

一方、究極の無人店舗である「自動販売機」も、非対面での購入ニーズが高まるコロナ禍を背景に、さらなる進化を遂げています。
コカ・コーラ傘下の[FVジャパン]は昨秋、ドリンクの自販機でマスクの併売を始めました。ひんやり冷たい状態で提供され、1枚800円(税込)。[アサヒ飲料]では昨夏から、“玄米ブラン”や“1本満足バー”などの食品と飲料の併売自販機を展開。
ベビー用紙おむつ(240円)が購入できる飲料併売自販機も登場しました。企画は[セコム医療システム]、飲料は[ダイドードリンコ]、紙おむつの供給は[大王製紙]と、3社のコラボで実現しました。
話題となっている「PCR検査キット」の自販機も出現。唾液を採取し、専門の病院に送付するだけ。結果は検体受領後、24時間以内に判明し、メールで通知されます。料金は4500円(税込)。
ほかにも、コメ、盆栽、掛け軸、コンタクトレンズ、真珠、冷凍カキフライ、ふるさと納税、などなど。コロナ禍を商機と捉える自販機の攻勢は、とどまるところを知らないようです。

万引きなどの防犯関連や、酒・たばこといった要・成人認証商品の取り扱いなど、多くの課題が山積しているにせよ、人手不足&人件費高騰が解消されない限り、コロナ収束後も、世の中の流れは確実に「無人店舗」へと向かっていくと思われます。



※参考:
すかいらーくグループ       https://www.skylark.co.jp/
ローソン            http://www.lawson.co.jp/
トライアルカンパニー       https://www.trial-net.co.jp/
FVジャパン           https://www.fvj.co.jp/
アサヒ飲料           http://www.asahiinryo.co.jp/
セコム医療システム        https://medical.secom.co.jp/
ダイドードリンコ         https://www.dydo.co.jp/
大王製紙            https://www.daio-paper.co.jp/
たけのこ耳鼻咽喉科       https://www.takenoko-ent.jp/
日経MJ(2020年11月6日付/2021年1月20日付)
冷食日報(2021年1月25日付)


 
 
 
 
キーストーンコンサルティング株式会社 〒802-0001 福岡県北九州市小倉北区浅野1-2-39 4F TEL 093-551-6325 FAX 093-551-6326保険相談・教育費積立相談・経営コンサルティング対応エリアは全国です 東京、大阪、名古屋、をはじめ 北海道、青森県、岩手県、宮城県、秋田県、山形県、福島県、茨城県、栃木県、群馬県、埼玉県、千葉県神奈川県、新潟県、富山県、石川県、福井県、長野県、山梨県、岐阜県、静岡県、愛知県、三重県 滋賀県、京都府、兵庫県、奈良県、和歌山県、鳥取県、島根県、岡山県、広島県、山口県、徳島県 香川県、愛媛県、高知県、福岡県、佐賀県、長崎県、熊本県、大分県、宮崎県、鹿児島県、沖縄県