金融・お金の情報
2021.04.01更新
 

4月から価格の表示がシビアに。価格で割安感を出すのが難しくなる?
 

例えば、スーパーで牛乳を買うとき、「168円(税抜)」と「184円(税込)」とではどちらを購入するでしょう。レジで支払う額は一緒でも微妙に見え方が違って、その違いが店の販売数量や売上高に影響を及ぼします。
しかし今年4月からは、「168円(税抜)」といった、見た目の“少しでも安く見せたい販売”は認められなくなりました。商品・サービスの価格に、消費税分を含めた「総額表示」が義務付けられたからです。
【表記注:本体価格=税抜価格=税別価格、税込価格=総額表示】

本体価格が100円、消費税10%の商品を例にとると、4月からNGの表示は-----
・100円+税 ・本体価格100円+税 ・100円(税抜) ・100円(本体価格) ・「表示価格は税抜です」など、これまでよく目にしていた価格表示が該当します。
次に、4月から義務化された「総額表示」の具体例は------・110円 ・110円(税込) ・税込110円(本体価格100円) ・110円(税抜100円) ・100円(税込110円)など。
要は、どのような形にせよ、支払い総額である税込価格が明確に表記されてさえいればOKということです。

もともと、2004年の消費税法では「総額表示」が義務付けられていましたが、2013年に猶予的措置として『消費税転嫁対策特別措置法』が制定されると、2021年3月末まで、「表示価格に“税込”“税抜”が誤認されないための措置を講じていれば、総額表示をしなくてもよい」とする特例が認められていました。今回、この特例が失効するため、今年4月1日から再び本来の総額表示に戻ることになったというのが経緯です。

今まで、「本体価格+税」で割安感を打ち出してきた小売り・外食企業にとって、総額表示の義務化は、正直、逆風となります。値札の表示方法が変わったというだけで、消費者には値上げの印象を持たれ、買い控えを懸念する声も少なくありません。これまで“198円+税”と表示していた商品を“198円(税込)”と、実質値下げで対応するケースも出現しています。なお、違反した場合に処罰されることはありませんが、悪質な事業者へは社会的批判を受ける可能性は免れないでしょう。

“4月以降の価格表示”についての小売り・外食企業への調査によると、「100円(税込110円)」表示が過半数を占め、税込の総額表示だけを表示する企業は少数という結果に。どうやら、コロナ禍での先行き不透明感が広がり、消費者の節約志向も強まっているなか、企業が総額表示のみで闘うには、相当の“勇気”が求められるようです。
ちなみに、「100円ショップ」の名称は、固有名詞と見なされ、看板を「110円ショップ」に変える必要はないとのこと。



※参考:
財務省          http://www.mof.go.jp/
国税庁          https://www.nta.go.jp/
経済産業省        http://www.meti.go.jp/
日経МJ(2020年12月18日付)


店舗を借りて限定オープン。「間借りレストラン」、続々と出店。
 

飲食業の廃業率は非常に高く、開業してから1年を待たずして閉店に追い込まれるのが3割超、3年で約7割が廃業し、10年後も営業している店はわずか1割程度といわれています。そこにさらに、コロナ禍による倒産や廃業が急増。以前にも増して、開業に対して“臆病”になっている店舗オーナーの卵たちが増えているようです。
その助け舟として注目されているのが、あえてリスクの高い実店舗を持たずに飲食店を経営する様々なスタイルです。

複数の料理人で一つの厨房を共同利用する「シェアキッチン」やデリバリー用料理だけに特化させたキッチンのみの施設「クラウドキッチン」。それらのキッチンを使って料理を作る、デリバリー専門のオンラインレストラン「ゴーストレストラン」など。
そして最近、特に注目を集めているのが、既存の飲食店の空いている時間帯(定休日/営業時間外)を借りて営業する「間借りレストラン」という経営スタイルです。昼間にラーメン店として営業している店舗を夜間借りて居酒屋をやったり、夜間営業のバーを借りてランチタイムだけカレー店を開業したり。

コロナで壊滅的なダメージを負い、空き時間やスペースを有効活用して少しでも収益減を補填したい飲食店オーナーと、開業したいが高額な初期投資が壁になっている人やコロナ禍で働いていた店が閉店してしまった料理人をつなぐ、間借り飲食店のマッチングサービスも登場。
[吉野家ホールディングス]傘下の[シェアレストラン](東京)は、2018年からマッチングのプラットフォームを開設。借用期間は1カ月単位。物件契約のための初期費用や設備関連の負担もなく、開業コストを大幅に抑えることができるのが最大のメリット。
多様な空間の貸し借りを仲介するプラットフォーム[スペースマーケット](東京)では昨秋、「間借りレストラン応援プロジェクト」を立ち上げ、5組のシェフと飲食店やホテルの遊休スペースをマッチング。都内5カ所で“間借りカレー”店を2日間限定でオープンしました。

飲食業での独立を目指しているような人だけでなく、副業として週末に開店するサラリーマン、主婦、学生や、企業がマーケティングのために試験的に出店するケースなど、経営ノウハウを実地で学べ、たとえうまくいかなくても1カ月程度で契約を解除できるという、経済的にも心理的にも低リスクの経営スタイル。
飲食業界もニューノーマルな時代。もうじき、「間借りレストラン」から、話題の店が出現するかもしれません。



※参考:
シェアレストラン    https://share-restaurant.biz/
スペースマーケット   https://www.spacemarket.com/
日経МJ(2020年12月13日付)


こんなところにもコロナ特需。空気にこだわって「空気清浄機&加湿器」人気沸騰。
 

コロナ禍による在宅時間の増加とともに、空間の“空気の質”に対する関心が高まり、家庭でもできる感染予防策として「空気清浄機(以下、空清)」と「加湿器」の需要が急増しています。2020年、空清の出荷台数は前年比約43%増、金額では約2倍。加湿器も同約38%増で、出荷額は約61%増でした(日本電機工業会)。
昨年は、例年より花粉の飛散量も多くなく、インフルエンザの感染も前年比で圧倒的に少なく、そのままなら空清の出番はなかったはず。しかし、コロナの感染拡大が消費者の清潔意識を高め、市場を大きく拡大させることに。

メーカー各社は、思わぬ特需で増産を重ねて対応。売れ筋は、全体の7割を占める“加湿機能付き”タイプで、販売量は前年の2倍と急伸。
[ダイキン]は、中国への生産委託に加え、昨年12月からマレーシアにも生産ラインを新設。さらに国内での生産も始める計画。
空清の国内シェアトップの[シャープ]は、全機種に搭載の同社独自のイオン発生技術“プラズマクラスター”が強み。定番の“空清”のほか、“加湿空清”“除加湿空清”と3つのタイプをラインアップ。新たにベトナムでも生産を始めました。[パナソニック]は、次亜塩素酸を発生させて“空気を洗う”とうたった空間除菌脱臭機「ジアイーノ」の注文が殺到し、昨年4月には新規の受注を一旦停止。生産能力を強化して秋には販売再開にこぎつけました。[富士通ゼネラル]は、一時品薄となった加湿除菌脱臭機「プラズィオン」の生産を2割増に強化。

また、ウイルスは、低温・乾燥が“大好物”とされ、一定レベル以上に加湿することで不活性化が期待できるとあって、加湿ニーズも急速に高まっています。
これまで積極的ではなかった店舗や小規模オフィスなどでも加湿器の利用が増加。加湿器の販売シェアが7年連続トップの[ダイニチ]では、2021年1月の出荷額が前年比500%増。2003年の発売以来、最高を記録しました。

加湿器には、4種類の加湿方式があります。
ヒーターで水を加熱して蒸発させ、その湯気をファンで空気中に放出する「スチーム式(加熱式)」、水を浸透させたフィルターにファンで風を当てて気化させながら加湿する「気化式」、超音波の振動によって水を霧状にしてファンで空気中に放出する「超音波式」、そして今人気があるのは、スチーム式と気化式を組み合わせた「ハイブリッド式(温風気化式)」。気化式のシステムをベースにフィルターに当てる風をヒーターとファンを使って温風にしたタイプです。

多くの人が、一生の中で、昨年ほど“空気”について考えた年はなかったのではないでしょうか。内閣府の『消費動向調査』によると、空清の普及率は、2020年3月時点で約45%と、まだまだ伸びしろはあります。今後は、空清も加湿器も、エアコンと同じように“一家に1台”から“一部屋に1台”の時代が訪れそうです。



※参考:
一般社団法人 日本電機工業会  https://www.jema-net.or.jp/
ダイキン工業         https://www.daikin.co.jp/
シャープ           https://jp.sharp/
パナソニック         https://panasonic.jp/
富士通ゼネラル        https://www.fujitsu-general.com/jp/
ダイニチ工業         https://www.dainichi-net.co.jp/
内閣府            http://www.cao.go.jp/
日経МJ(2020年12月4日付/2021年1月13日付)
日刊工業新聞(2021年1月5日付)


 
 
 
 
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