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2020.11.02更新
 

コロナがもたらした業務の効率化。「脱ハンコ」の動き、広まる。
 

コロナウイルス感染防止のため、在宅勤務を導入したにもかかわらず、“押印”のためだけにわざわざ出社を余儀なくされるといった非効率さが問題となりました。

即、“脱ハンコ”の気運に反応したネットインフラ大手の[GMO]は、「決めました。GMOはハンコを廃止します」と宣言。その後、[サントリー]や[LINE][サイバーエージェント][メルカリ]などに波及。昨年から徐々に電子契約を導入していた[ヤフー]も、一気に導入速度を速める方針に転換。

9月、政府は「クラウドを介した契約書の電子署名について法的効力を認める」と公表。さらに同月、河野行革担当相は『デジタル改革閣僚会議』において、「ハンコを、すぐになくしたい」と述べ、平井デジタル改革相も賛同。ある意味、お上から“お墨付き”が与えられたことで、企業の“脱ハンコ”への理解が進むと同時に、インターネットを通じて押印したり契約を結んだりできる電子印鑑システムの普及に弾みが付き、関連サービスの提供も活発化。
[シャチハタ]は今年3月、パソコンで作成した電子ファイルに、事前登録した電子印鑑(日付・部署名入り)を押印でき、PDF化してネット上で回覧できる「パソコン決済クラウド」を開始。[弁護士ドットコム]は、ウェブ完結型クラウド契約サービス「クラウドサイン」を提供。[セイコーソリューションズ]も電子契約を支援するサービスの提供を始めました。
ただし、いずれも取引先の了承を得られることが条件となり、強要するわけにもいかないため、普及上のネックの一つとなっています。

印紙税や郵送費が不要となるコストの削減に加え、書類の印刷・製本・送付・保管といった諸作業が不要に。また、データのバックアップも容易になるなど、“ハンコレス”のメリットは少なくありません。ただ、現実に導入しているのは大手企業、それもIT関連が中心。日本企業の99.7%を占める中小企業にとっては、“テレワーク→脱ハンコ”がそれほど現実味を帯びていないといえます。従業員数50人未満のテレワーク導入率は約14%(東京商工会議所)。例えば、社員20人以下の会社なら、承認や決済でハンコをもらう相手が隣の席に座っているということも。“あったらあったで便利かもしれないけど、なければないで業務に差し障りはない”というのが大多数の声であり、この現実が脱ハンコの最大の障壁となりそうです。

「これまで3日かかっていた見積書の取得が30分に短縮できた」「印紙代を年間数千万円削減することができる」-----一度使うと便利で、もう元には戻れないと語るハンコ要らずの電子契約。しかし、官民挙げての“脱ハンコ”の流れに水を差すわけではありませんが、この盛り上がりが、今のところ日本企業のわずか0.3%の話である現実を忘れてはいけません。


※参考:
GMOインターネットグループ    https://www.gmo.jp/
シャチハタ            https://www.shachihata.co.jp/
弁護士ドットコム         https://corporate.bengo4.com/
セイコーソリューションズ     https://www.seiko-sol.co.jp/
日経ビジネス電子版(2020年4月20日付)
朝日新聞(2020年4月24日付)



海外で「おにぎり」人気。コメ輸出に新たな販路。
 

日本国内で“コメ離れ”が進んでいます。1人当たりの年間消費量は、1962年をピークに右肩下がりで、2016年にはピーク時の半分以下にまで落ち込んでいます。一方、海外での需要は高まっており、輸出は好調に推移。2019年には過去最高を更新しています(農水省)。この波に乗り、海外でのコメ市場開拓と、さらなる需要の拡大を目論んで送り込まれた先兵が「おにぎり」でした。

2013年に「和食」がユネスコの無形文化遺産に登録されて以来、“ONIGIRI”は今や“SUSHI”に次ぐ日本のソウルフードであり、オシャレなファストフードとして欧米を中心に市民権を獲得しつつあります。

その専門店が世界各地に出現しています。主な出店例としては、2014年にシンガポールで「SAMURICE(サムライス)」(運営:アグリホールディングス)がオープン。2015年には「おむすび権米衛」(運営:イワイ)が米ニュージャージー州に進出(その後、ニューヨークにも出店)。2016年にはベトナム・ホーチミンで「東京むすび」(運営:アンジメックス・キトク)がオープン。2017年、フランスにも「おむすび権米衛」がオープン。“郷に入っても郷に従わず”が同店のポリシーで、メニューは一切ローカライズ(現地化)せず、日本で売られている商品そのままのジャパンオリジナルを提供。平均価格は1個300円程度。天むす、和風ツナ、うなぎなど、こってり系が人気で、一日に1000個以上を売り上げます。もう一つの特徴は、日本で契約農家から仕入れた玄米をそのままの状態で輸出し、現地で精米する方式を採っている点。“おむすびビジネスを通じて日本の農業に貢献したい”という経営理念の下、農家からは市場価格の2倍近い価格での買い付けを実践しています。

北海道の[JAひがしかわ]のコメ輸出戦略の“武器”は、「ひがしかわボール」。混ぜごはんを丸く握り、その上にチーズやベーコン、卵などを載せた創作おにぎりです。 新たな販路を開拓するには、あえてコメを主食としない地域の需要を掘り起こさない限り実現しないと、コメ輸出量の割合が1%(2019年/農水省)の“未開の市場”、ロシアに目を付けました。しかし、コメを炊く習慣のないロシアにコメだけを輸出しても消費にはつながらないため、“販促用”として送られたのが「ひがしかわボール」(1個150円程度)でした。今年2月にモスクワで開かれたレセプションでは、すし以上の人気を博したとのこと。

政府は、おいしい日本産米を使った正しい日本食文化の普及を目指して『コメ海外市場拡大戦略プロジェクト』を発足。輸出拡大に取り組む米産地への資金支援強化に踏み出しています。

国内の家庭用コメ市場が衰退していくなかで、いかに海外に活路を見いだしていくか----その大きなミッションが、小さな「おにぎり」にかかっているのです。


※参考:
農林水産省              http://www.maff.go.jp/
アグリホールディングス        https://agri-hd.com/
イワイ                http://www.omusubi-gonbei.com/
アンジメックス・キトク(木徳神糧)  https://www.kitoku-shinryo.co.jp/
JAひがしかわ             http://www.ja-higashikawa.or.jp/
日経MJ(2020年7月27 日付)



盛り返しに期待しましょう。なかなか広まらない「マイナンバーカード」。
 

コロナ対策として、全国民に一律10万円を給付する「特別定額給付金」を巡り、にわかに注目を集めることとなった「マイナンバーカード」(以下、マイナカード)。しかし、いざフタを開けてみると、肝心のオンライン申請を受け付ける市区町村側でシステムの対応準備ができておらず、トラブルが続発。今回の給付申請で、一気にマイナカードをアピールし、普及拡大の好機と捉えていた政府でしたが、それどころか、マイナンバー制度が、日本ではほとんど機能していないことが、コロナによってあぶり出される形となってしまいました。

2016年1月から、ICチップ付き国民IDカード「マイナカード」の交付が開始されて4年半が経過しましたが、国民の日常生活におけるメリットが実感できないため、“どうしても取得したい”という気運が高まらないのが現状。いまだ19.4%(2020年9月/総務省)というカード普及率の低さが物語っています。
デジタル・ガバメント(電子政府)構想を掲げる政府は、2023年3月までに、ほぼすべての国民がマイナカードを保有することを目標とし、2021年3月からの健康保険証との一体化、近い将来には運転免許証との一体化を目指します。さらに、今年9月からは、普及策の目玉として「マイナポイント制度」が実施されています。

すでに、1990年代に電子政府構想をスタートさせた“IT立国”のエストニアでは、国民の98%にIDカードが行き渡っており、投票、納税、医療、教育など官民合わせたほぼすべてのサービス・手続きが、24時間365日、オンラインで利用できるようになっています。人口130万人余りの小国だからシステムを構築しやすい、という声もありますが、日本が学ぶべき点が多々あることは事実。

海外のIDカード先進国に共通するのは、万全のシステムセキュリティー対策と、それを管理する国への国民の信頼です。

“何のメリットもないのに、なぜ個人情報が洩れるリスクを負わなければならないのか”“義務化されていないから持たない。さっさと強制的に入らせるようにすればよい”“政府の中途半端な取り組みが申請意欲をそいでいる”など、国民からシビアな声が寄せられている、いま。マイナンバー制度が社会に浸透していくためには、ユーザーである国民の立場に立った制度設計が求められています。

実は、エストニアでも導入から4年間は普及が進まなかったといいます。さて日本は、まだ4年半? それとも、もう4年半?


※参考:
総務省           http://www.soumu.go.jp/
内閣府           https://www.cao.go.jp/
朝日新聞(2020年6月22日付/同6月24日付)
日経MJ(2020年7月8日付)




 
 
 
 
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