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2019.12.02更新
 

海外に学ぶ、「少子化」との闘い方。
 

日本人の出生数は、2018年に約91万8400人と、これまで最少だった前年を下回り統計史上最少を記録しました。一人の女性が生涯に産むと見込まれる子どもの数“合計特殊出生率”も1.42で3年連続の下落。人口水準の維持に必要とされる最低ラインの2.07を大きく下回っています(厚労省)。

現代日本にとって喫緊の課題、それが少子化問題です。子ども手当や子育て支援など、様々な対策がなされるも、有効な手立てとはなっておらず、ますます少子化に拍車がかかるばかり。

しかし、海外に目を向けると、対策が功を奏し、出生率が上がっている国もあります。例えば、数々の家族政策の改革を推し進め、“少子化対策の優等生”といわれるフランスでは、1994年に1.66だった出生率が、2017年には1.88まで持ち直しました。その6割が、結婚していない親からの出生でした。“ユニオンリーブル(自由縁組み)”というカップルの生き方が一般化しているフランスでは、法律婚にとらわれない“事実婚カップル”が社会的に認知されているからです。しかも、その子どもは、嫡出子(ちゃくしゅつし)・非嫡出子の区別なく、同等の権利を有することが法制化されています。つまり、子が生まれて育つことに、親の結婚のカタチは関係ないとされ、社会全体に“産んでも大丈夫”という空気ができているということです。

具体的な支援策としては-----2子以上を養育する家庭には20歳まで“家族手当”が支給されます。1人増えるごとに、また年齢とともに支給額が加算。日本の児童手当と似ていますが、1子の家庭には支給されないところがミソです。さらに、妊娠・出産から産後のリハビリにかかる費用までが全額無料のほか、乳幼児手当、片親手当、不妊治療手当などといった諸手当が手厚いだけでなく、基本的な学費はほとんどタダ同然。また、2002年から施行された“男の産休制度”(14日間)は父親の7割が取得するまでに浸透。フランスの少子化を食い止める対策は、産めば産むほど“お得”なシステムになっているのです。

一方で、これらの政策への支出が膨らみ、フランスの財政事情は厳しいといわれています。しかし、少子化解消への支出は国の将来を見据えた投資とみなされ、子育てを社会全体で支えるための意義あるコストとして支持されているとのこと。あくまでも子どもを軸に制度設計されているフランスならではで、親を軸とした日本の子育て支援策とは発想が異なるようです。

“結婚”と“子どもを持つ”ことの結びつきが強い日本の場合では、結婚しているカップルが子どもを産まないのではなく、子どもを産める適齢期の男女が結婚しなくなったことが近年の少子化の主因のようです。いずれにせよ、フランスでの事例がそのまま日本にフィットするとは思えません。海外の諸制度の受け売りではなく、日本独自の少子化への対策が求められています。


※参考:
厚生労働省          http://www.mhlw.go.jp/
内閣府            https://www.cao.go.jp/
日本経済新聞(2019年4月1日付)
朝日新聞(2019年6月8日付)
日経ビジネス電子版(2019年6月26日付)





公共交通を補う役割も。利用拡大する「シェアサイクル」。
 

タクシーに乗るほどでもないが、歩くとけっこう時間がかかる…そんな微妙な距離の移動にぴったりなのが、最近、急速に伸びている「シェアサイクル」です。国内では、全国135の都市が本格導入しており、実証実験や検討中も含むと200都市を超えます(2018年/国交省)。公共交通機関の代替手段としてや市街地の渋滞緩和などを担う役割も期待されています。

利用者は、事前に会員登録し、スマホなどを使って、街中に設置されている専用駐輪拠点(ポート/ステーション)のどこからでも自転車を借りることができます。24時間利用でき、料金は各社により異なりますが、平均すると30分100円〜150円。返却はレンタサイクルのように借りた場所まで戻る必要はなく、最寄りのポートに返すだけ。この、“乗り捨てできる自由”こそがシェアサイクルの大きな魅力です。

赤い車体がトレードマークの「ドコモ・バイクシェア」(2015年開始/運営:ドコモ・バイクシェア)は、2019年現在、都内のポート数が約650カ所、自転車数は約7400台。電動アシスト付き自転車を使用し、GPSで位置をリアルタイムで管理。料金は30分で150円。支払いは、クレジットカードかドコモケータイのみ。

ソフトバンクグループの「ハローサイクリング」(2016年開始/運営:オープンストリート)は、シェアサイクルのシステム提供を中心に全国各地で事業を展開。2017年からは[セブン-イレブン]と提携し、店舗敷地内にポートが設置されています。

そのほか、12時間、24時間など、長時間利用を想定したシェアサイクル「コギコギ・スマート!」(2015年開始/運営:コギコギ)。業界最安値(24時間300円)を打ち出した「ピッパ」(2017年開始/運営:オーシャンブルースマート)。地域参加型で個人宅や店舗の軒先などをポートスペースとして提供してもらうという新しいスタイルで展開する、メルカリの「メルチャリ」(2018年開始/運営:ソウゾウ)、などなど。

また、2017年〜18年にかけて中国大手の「モバイク」や「ofo(オッフォ)」が鳴り物入りで日本に進出してきましたが、本国での経営悪化を理由に、「ofo」はわずか半年余りで日本から撤退。「モバイク」も海外拠点を閉鎖して本国での事業に集中する方針とか。

最近は、シェアサイクル単独ではなく、相乗効果を狙った異業種との連携が目立ってきています。特に、ユーザーを店舗に誘導したいコンビニやスーパーといった小売業とのコラボがトレンドとなっています。

政府は、『自転車活用推進法』(2017年施行)の中で、シェアサイクル施設の整備を掲げて積極的に後押し。IoT化やキャッシュレス決済も追い風となっているシェアサイクルが、今後、社会インフラの新たなビジネスモデルとして定着していくのか、いま、まさに試されようとしています。


※参考:
国土交通省          https://www.mlit.go.jp/
ドコモ・バイクシェア     https://www.d-bikeshare.com/
ハローサイクリング      https://www.hellocycling.jp/
コギコギ・スマート!      http://cogicogi.jp/
ピッパ            https://pippa.co.jp/
メルチャリ          https://merchari.bike/
日本経済新聞電子版(2019年4月26日付/同6月19日付)
日本経済新聞(2019年6月3日付/同7月4日付)
日経МJ(2019年8月9日付)



避難生活でも、おいしく! 少しずつ進化しています、「非常食」。
 

近年、たて続けに起こる大規模自然災害のリスクに備える動きが、国、自治体、企業ともに高まっています。災害に見舞われるごとに、「防災食品」、いわゆる「非常食」の市場規模も拡大するという、ちょっと複雑な思いにさせられる現実。

非常食とは、備蓄を想定し、長期保存できることを条件に、ガスや火を使わず、水や湯を使って、あるいはそのまま食べられるものを指します。最近は、被災した時こそ、おいしいもの、温かいものを求める傾向にあるため、各メーカーは、非常食=味気ないというイメージを払拭すべく、地道な商品開発に取り組んでいます。共通のキーワードは、“おいしい非常食”。

加工食品メーカーの[ホリカフーズ](新潟)は、温かい食事をと、カレーや牛丼、シチューなどのメニューにひと工夫。付属の、ライスや具材が入った容器を袋に入れ、発熱剤のアルミ粉末を加えて少量の水(雨水でも可)を注ぐと、瞬時に沸騰し20分ほどでほかほかの食事が出来上がります。

食品加工・卸の[日乃本食産](兵庫県三田)は、食物アレルギー対応の温かい災害食と「日本ハラール協会」認証のハラール食を開発。

“甘いものが欲しかった”という被災者の声を受けて開発されたのが、[トーヨーフーズ](東京)の「どこでもスイーツ缶」シリーズ。チーズケーキ、ガトーショコラなど。常温保存で3〜2年。

まったく畑違いの業種からの参入もあります。ご飯やおかず、デザートまでそろった「IZAMESHI(イザメシ)」シリーズを開発したのは、建築金物を扱う老舗企業[杉田エース](東京)。こだわったのは非常食っぽくない“味”で、2016年「第一回日本災害食大賞」の“おいしさ部門”で、「名古屋コーチン入りつくねと野菜の和風煮」がグランプリを獲得するほど。

今後の非常食市場の課題は、一般家庭への普及にあります。大部分が自治体や企業向け需要で、家庭用は2割弱と推計されています。そこで、メーカーや政府は現在、非常食の保管について「ローリングストック」を推奨しています。普段から非常食を食べ、減った分を買い足して補充していくという方法です。そのためにも非常食は、ますます美食化へと舵を切ることが求められています。

一方、2013年に施行された『帰宅困難者対策条例』によって企業の備蓄の気運が高まったかにみえましたが、実践している企業はいまだ半数にも満たないといわれています。

これからも、高い精度で続発が予想される自然災害に備え、非常食市場の潜在需要は年々、拡大の一途を辿るということになりそうです。



※参考:
ホリカフーズ       http://www.foricafoods.co.jp/
日乃本食産        http://matutake.com/
トーヨーフーズ      https://www.toyofoods.co.jp/
杉田エース        https://www.sugita-ace.co.jp/
総務省          http://www.soumu.go.jp/
日本経済新聞電子版(2019年4月16日付/同4月23日付)
朝日新聞(2019年9月2日付)



 
 
 
 
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