買った食べ物や飲み物を店内で食べることのできる、イートインタイプのコンビニが目立つようになりました。形式は、カウンターテーブルと椅子を備えた飲食専用コーナー付きの店舗が平均的。
これまで、コンビニのイートインといえば[ミニストップ]の独壇場でしたが、そこに他のコンビニ各社が本格参入してきたという様相です。そもそも業界5位の[ミニストップ]が、1980年の1号店からイートインを推し進めたのは、“後発”だったことを逆手にとった大手コンビニチェーンとの差別化が狙いでした。“しゃべれる、食べれる”をコンセプトに、持ち帰り商品とは一線を画した“できたて・作りたて”の店内調理を目玉にして顧客を獲得。現在、全店(約2,200店)でイートインを導入しています。
業界3位の[ファミリーマート]は、大手3社の中では最もイートイン型店舗の拡大に前向きで、2013年度から、新店舗の半分以上をイートインタイプにすると発表。店舗面積も従来店より2割程度拡大し、挽きたて&淹れたてコーヒーや店内調理の「ファミマプレミアムチキン」を販売。これらの好調な実績が、同社に、イートイン型の店舗展開を決断させたと言われています。
[サークルKサンクス]も昨年から2015年度へ向け、イートイン型店舗を現在の約6倍に当たる500店以上を出店する計画。冷蔵の陳列棚を増設して、和洋のスイーツの他、焼きイモやポップコーン、ピザなど、店内調理による多様な“できたて商品”の充実を図ります。
一方、業界トップの[セブン-イレブン]や2位の[ローソン]のイートイン化は、それぞれ総店舗数の1割にも満たない状況。特に[セブン-イレブン]は、最大手の余裕なのか、本業以外の商いには慎重なようです。
スペースの効率化を最優先するコンビニにとって、一見ムダとも映るイートインスペースの確保には“勇気”がいることです。1円の利益も生まない、遊休空間になりかねないからです。さらに、長居する客や学生たちの溜まり場的になって店のイメージダウンにつながるという懸念も。しかし、店内調理品は通常商品より利益率が高いことや、なによりイートインが来店のきっかけになってくれて、客層が広がることを考えると、店側には充分にうま味があると思われます。
イートインスタイルによる、コンビニの“カフェ化”“ファストフード化”の勢いは、今後ますます加速しそうです。
※参考:
ミニストップ http://www.ministop.co.jp/
ファミリーマート http://www.family.co.jp/
サークルKサンクス http://www.circleksunkus.jp/
セブン−イレブン・ジャパン http://www.sej.co.jp/
ローソン http://www.lawson.co.jp/
日経МJ(2013年11月10日付)
自宅から商店までが遠く、食料品や生活用品の買い物に支障がある人のことを総称して、“買い物弱者”と呼ばれています。
過疎化と少子・高齢化などによって“買い物弱者”は増える一方。農林水産省の推計によると、生鮮食品を売る店が500m以内になく、車を持たない65歳以上の人は、全国で約380万人にも及ぶと言われています。
そこで、大手スーパーやコンビニでは、地元のチェーン店を活用した「移動販売車」による出張店舗を続々と送り出しています。各社、買い物が困難な人々の暮らしを民間で支援するという役割と共に、売上げ確保を実現する新たな顧客開拓としての戦略も視野に入れながらの本格稼働といえます。
[セブン−イレブン]は、2011年5月の茨城県を皮切りに、北海道から九州まで、1道15県にわたって「セブンあんしんお届け便」35台が稼働中です。専用車両(軽トラック)は、常温・20℃・5℃・-20℃の4温度帯での販売が可能。地域の集会場や老人介護施設、福祉センターなどをはじめ、個人宅への巡回も行っています。一日の売上げは、同チェーン1店舗当たりのほぼ1割程度。
同じ[セブン&アイ・グループ]の[イトーヨーカドー]は、昨年7月から、首都圏初となる「あんしんお届け便」を、東京多摩市のニュータウンでスタート。常温・冷蔵・冷凍の3温度帯を備えた4tトラックに約500アイテムの商品を積んで、週3回、計6カ所を巡回します。価格は、運営店舗(南大沢店)の店頭価格と同じ。多摩地区では、ここ数年で3つのスーパーが閉店したこともあり、地元の要望に応える形で実現しました。[イトーヨーカドー]が展開する「移動販売」は、2011年の長野県、2013年の札幌に次いで、今回が3カ所目となります。
[ローソン]は昨春、広島県内の自治体と共同で「ローソン号」による移動販売を実施。
[ファミリーマート]でも、常温・定温・冷蔵・冷凍の4温度帯の設備の他、手洗い台や電子レンジ、電気ポットなども備えた「ファミ号」(2t/3t)を2011年からスタート。さらに、極端に人口が少ない地域や道路幅の狭い場所にも対応する軽トラックの「ミニファミ号」も活躍中です。
今回取り上げた、各社の「移動販売」に共通点が2つあります。1つは、きっかけが、東日本大震災の被災地支援の一環として立ち上げたということ。2つ目は、巡回先での高齢者の安否確認も含めた、客との会話を大切にしている点です。
「移動販売車」は、大手にとどまらず、地方の中小スーパーなど、地元ならではのキメ細かな展開を見せながら全国に広がっています。“地域貢献”と“利益確保”、この両立こそ、今後「移動販売」を長く続けていくためのカギとなりそうです。
※参考:
セブン-イレブン・ジャパン http://www.sej.co.jp/
イトーヨーカ堂 http://www.itoyokado.co.jp/
ローソン http://www.lawson.co.jp/
ファミリーマート http://www.family.co.jp/
朝日新聞(2013年8月29日付)